原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2007年11月1日



第9回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止に係る具体的方策の実施について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、「原子力保全改革検証委員会」を設けております。
 前回の第8回検証委員会では「再発防止対策が発電所に浸透し、継続的改善が自律的に進められていることを確認した。しかしながら、トラブルやコンプライアンスに関わる不適切な事象により、これまで再発防止対策の取り組みによって回復しつつあった社会からの信頼を、再び損なうこととなった。検証委員会は、関西電力の再発防止対策の継続的改善とその水平展開を通じた安全文化の再構築状況について、引続き検証していくこととする。」との評価をいただきました。
 今回の第9回検証委員会では、平成19年度の6つの重点課題のうち、「経営トップによる安全最優先の徹底」、「膝詰め対話、協力会社対話など現場との対話活動」、「法令遵守に係る現場第一線への支援策の充実」の実施状況と、平成20年度の本格実施に向けた安全文化評価の試行状況について検証いたしました。その結果についてお知らせいたします。

1.日 時 平成19年10月23日(火) 13時30分~16時40分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 大森 政輔 (弁護士)
副委員長  【社 外】 
慶次 (大阪大学名誉教授)
委員  【社 外】 黒田 (日本ヒューマンファクター研究所 所長)
   【社 外】 
由紀子 (都市生活研究所 所長)
   【社 外】 政野 澄子 (福井県女性エネの会 会長)
   【社 外】  宮村 鐵夫 (中央大学教授)
   【社 外】 向殿 政男 (明治大学教授)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   井狩 雅文  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶
  【大森委員長挨拶骨子】
    半年ぶりの委員会になるが、この間、美浜発電所3号機は、運転再開後最初の定検を予定通り終え、順調に運転を続けていると聞いている。しかしながら、原子力発電所全体では、トラブルや労災件数は必ずしも減少していない。引続き、気を緩めることなく、安全・安定運転に全力で取組んでいただきたい。
    本年7月には新潟県中越沖地震が起こり、東京電力の柏崎刈羽発電所が大きな被害を受け、首都圏での電力需給が逼迫するなど、原子力発電所の耐震安全性に対する社会の不安が高まっている。本日、新潟県中越沖地震を踏まえた関西電力の対応について報告される予定だが、今後とも地域の皆さまの安全につながる取り組みに全力を尽くしていただきたい。
    今年度、検証委員会では、安全文化再構築の観点から、6つの重点課題の実施状況、安全文化評価の試行状況、再発防止対策の日常業務の中での定着状況に対して検証することとした。
    本日は、3つの重点課題の実施状況と、安全文化評価の試行状況について検証する。特に、安全文化評価の試みは、これまで関西電力が尽力してきた再発防止対策を風化させないための重要な取り組みであり、本格運用に向けてより良いものとするため、各委員それぞれご専門の立場から忌憚のないご意見を開示いただきたい。
       
5.議事概要
    5-1.第8回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第8回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、報告・審議し、了承。
    5-2.再発防止対策の実施状況の検証について
    (1) 「経営トップによる安全最優先の徹底」「膝詰め対話、協力会社対話など現場との対話活動」の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、「経営トップによる安全最優先の徹底」「膝詰め対話、協力会社対話など現場との対話活動」の取り組み状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
安全最優先が、中長期経営計画、平成19年度経営計画に明記されており、経営層から、役員キャラバンや幹部会議等、繰り返しメッセージが出されている。また、予算面等でも安全最優先の考え方が浸透し、実行されている。
社員と経営層との膝詰め対話で出た意見については、他部門にも関係する課題に対して、社内諸制度ワーキンググループにより全社的な支援がなされるなど、確実に対応されている。
協力会社との対話で出た意見要望に対しても、着実に対応されているとともに、それらの情報の共有の仕組みが整備されている。なお、協力会社へのアンケートのなかで、協力会社から関西電力への「モノのいい易さ」に関する問題点が提起されており、その改善活動に取組んでいる。
以上により、トップの安全最優先の姿勢が明確であり、現場第一線にその価値観が浸透していることを確認した。また、協力会社とのコミュニケーションについても自律的な改善活動が開始されており、このような取り組みを継続していくことが期待される。
   
<意見>  
安全最優先が経営計画で明確化され、膝詰め対話等でコミュニケーションが図られているが、安全最優先を現場で実現していくにあたって、迷うことがないように、趣旨をよく詰めて伝えることが大切である。(宮副委員長)
安全第一とか安全最優先という言葉の元は、USスチール社のモットーで、安全第一の次には品質第二、生産第三という言葉を並べてその組織の哲学をはっきりさせていたのだが、日本の企業は、その中の安全第一だけをもらってきたものである。安全最優先を現場に浸透させるには、現場が判断に迷わないように、優先順位を明確にして伝えていく事が大切である。(黒田委員)
膝詰め対話の実施後のアンケートで、全体として90%以上が肯定的な評価をしているが、今後はこの数値が低下しないように維持していくことが重要である。(宮副委員長)
膝詰め対話で、将来に対する明るさをうまく現場に返すというようなコミュニケーションをすると、こういうやり方もあるのではないでしょうかという意見が現場の方から出しやすい。そのような5年先とか10年先の姿を示していく工夫をすることも大事だと思う。(宮村委員)
発電所では安全も安定供給も一つの行動によって実現していかねばならないので、関係者は細部についても的確に見れる虫の眼と俯瞰的な見方ができる鳥の眼を両方持つことが望まれる。現場での対話活動も活用して、そのような人材育成について留意してほしい。(宮村委員)
これまでの協力会社との対話活動に対する取り組みについて高く評価する。協力会社の方は対等なパートナーであると認識されているが、さらにもう一歩前に進めるためには、発注者という強者意識を払拭し、発想を転換して、関電でできないことをやっていただいている方であるという認識を持つことを社員に伝え、協力会社の方に感謝の気持ちを持つことが重要である。(篠委員)
立場の違う人々による組織であっても活性化されている場合がある。形態は異なるが、他の業種において派遣社員だけど正社員を上回るような力を発揮されているメーカ等の例もあるので、その方々のモラールアップや戦力化などについて研究すれば参考になるのではないか。(篠委員)
協力会社の方が、ものを言いやすくするためには、作業する方の立場に立つという認識をもって、コミュニケーションしてほしい。(篠委員)
美浜3号機事故以来、関西電力はコミュニケーションに努力していると感じる。例えば、あいさつ運動ということで、発電所への見学者に対しても「おはようございます」といった挨拶を積極的に行なう等、良い取り組みを行なっている。(政野委員)
協力会社へのアンケートの中で、関西電力に対する「ものを言いやすい雰囲気」について否定的な意見が多かったが、協力会社とスポーツ大会や懇親会等を行なうことで、ものを言いやすい雰囲気作りが出来ると思うので、そのような活動にも継続して取り組んでほしい。(政野委員)
昔問題でなかったことが、最近社会的に問題となるケースが多い。協力会社との協業において、ソーシャル・センシティビティを高めていくことが大切である。協力会社へのアンケート結果においても、そのような背景にまで踏み込めば、対策との関係が明らかになり、実際に行動につなげる社員の受け止め方の差が少なくできるのではないか。(宮村委員)
協力会社との関係については、安全のためのコミュニケーションの仕組みや協力会社との役割分担の話と仕事以外での協力会社の方との人間関係の話とを分けて考えないといけない問題だと思う。(向殿委員)
   
<大森委員長からの提案>
安全最優先の徹底と現場との対話活動に関する本日の議論は非常に大切な議論であり、時間をとって、もう一度、議論しあってみることを考えたらどうか。
    (2) 「法令遵守に係る現場第一線への支援策の充実」の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、「法令遵守に係る現場第一線への支援策の充実」の取り組み状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
法令ネットワークキーマンの選任・教育、法令改正情報の確実な入手等、法令相談窓口に係る仕組みの整備が着実に進んでいる。また、審査の役割分担表の作成、法令等適合性チェックシートの見直しなど、法令手続きに関する各種支援ツールについても整備され、現場第一線の法令遵守を支援するための仕組みが構築されつつあることを確認した。
今後、原子力事業本部は10月に開始した試運用を通じて、現場第一線の要望を反映し、本格運用に向け支援策を改善していく必要がある。
検証委員会としては、これらの試運用結果を、本格運用に反映させていることを確認するため、下期についても試運用状況のモニタリングを続けるものとする。
   
<意見>  
法令相談窓口の明確化等に関する取り組みを社内標準化していく際に、業務プロセスとの結びつきを明確化して、担当者にわかりやすいものとすることが大切である。また、そうしておけば取り組みの風化防止の一助となる。 (宮村委員)
    (3) 安全文化評価の試行状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、安全文化評価の試行状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
関西電力は、美浜3号機事故以来、これまで再発防止対策の継続的改善を進めることにより、安全文化の再構築に取り組んできた。平成19年度は、安全文化の評価の仕組みを構築し、その評価について試行している。
上期末の段階では、美浜3号機事故の反省と国内外の知見を踏まえ、プラント安全、労働安全、社会安全(コンプライアンス)を対象に、安全文化の3本柱(トップのコミットメント、コミュニケーション、学習する組織)を抽出して、評価の方法を具体化し、評価の試行を実施していることを確認した。
この取り組みは、下期にさらに充実されていく予定であるが、評価を通じて問題点を明らかにし、改善につなげる活動が継続されていることが重要である。
検証委員会は、平成19年度の試行結果を総合的に見た上で、安全文化評価の仕組みが有効に機能し、関西電力の安全文化が定着していくかについて検証していく。
   
<意見>  
安全文化評価の試行については、大変すばらしい取り組みをされているように思う。安全文化は、大変長い時間スケールで測っていかなくてはならないので、そのあたり今後どのようにアプローチしていくのかということが大切である。(黒田委員)
安全文化の評価の試行状況について、現在の取り組みは、医療で言えば診断学をやろうとしている段階で、今後治療までが自然にできるようになれば、安全文化が浸透した状態になったといえる。治療につなげていくためにデータを地道に積み上げていってほしい。(黒田委員)
安全文化を評価する際、自己点検・評価では甘い評価となる可能性があるため、外部に冷静に判定してもらうことが必要である。 (宮副委員長、向殿委員)
安全文化の評価の活動にあたっては、原子力安全システム研究所とも連携を取って、良き先例となるよう取り組んでほしい。(宮副委員長、黒田委員)
プラント安全の結果にも着目され、トラブルが分析されて傾向把握がなされている。このような分析を行う際には、手法を確立し、継続していくことが大切である。例えば、4M分析(Man、Machine、Media、Management)という方法もあるので、参考にしていただければよい。(宮村委員)
安全文化については、結果(アウトカム)に着目するよりも、組織・人の意識、行動を示すウオッチ指標に着目して評価し、必要な対策をとっていくものであると思う。そのためには、できれば、ウオッチ指標のデータを何段階かで定量評価して、関西電力の安全文化レベルやその経年変化を見られるようにしておくことも1つの考え方であると思う。(向殿委員)
安全文化を浸透させるには、協力会社の方にも関電の活動をよく理解してもらい、共有していく必要がある。(向殿委員)
安全文化は、達成したと思った瞬間から崩れていくもので、非常に長い努力を続けていかなければ保てないものである。そのため、これから長期間、地味な努力を続けていくことが大切なので、引き続き頑張ってほしい。 (黒田委員)
       
    5-3.前回検証委員会以降の動向等について
   原子力事業本部から、原子力発電所の地震対策について報告。
     
    5-4.平成19年度下期の検証テーマと検証の視点について
       経営監査室から、平成19年度下期の検証テーマと検証の視点について提案・審議。
      <審議結果>
平成19年度下期の検証テーマと検証の視点については、次のとおりとすることで了承。
       
     
検証テーマ
視  点
重点課題の実施状況
 
 
調達管理の充実強化
協力会社の力量を把握し、技術力の維持に努めているか。
 
不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底
根本原因分析に向けた体制を整え、事故再発防止を図っているか。
 
地域との共生
地域の視点に立った取り組みになっているか。
日常業務における再発防止対策の実施状況
再発防止対策が日常業務の中で定着し、風化防止が図られているか。
安全文化評価の試行状況
安全文化評価の仕組みが構築され、機能しているか。

<配付資料>
・ 第8回原子力保全改革検証委員会でいただいた意見への対応状況
・ 経営トップによる安全最優先の徹底と現場第一線との膝詰め対話
・ 協力会社との対話活動の改善
・ 法令遵守に係る現場第一線の支援
・ 安全文化評価の試行状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施計画(H18年度実績と平成19年度計画)
・ 原子力発電所の地震対策

向殿委員、宮村委員、政野委員、篠崎委員、黒田委員(左から) 大森委員長、宮崎副委員長(右から)
向殿委員、宮村委員、政野委員、
委員、黒田委員(左から)
大森委員長、宮副委員長(左から)
第9回原子力保全改革検証委員会
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用語解説

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