原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2006年8月3日



第5回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止に係る具体的方策の実施について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、「原子力保全改革検証委員会」を設けております。

 前回の第4回検証委員会では、「再発防止対策は継続的改善が自律的に進む程度の段階に至っている」との評価をいただきました。これを受け、第5回検証委員会では、労働安全衛生マネジメントシステムが本格実施に入ることから特に重点的に検証することとした「労働安全活動」と、行動計画の現場第一線での自律的な実現に焦点を当てた「定検工事における再発防止対策の実施状況」について検証いたしました。検証委員会の開催に先立ち、6月には社外委員により高浜発電所において現地の実施状況を確認し、この結果も踏まえて検証を行いました。その結果についてお知らせいたします。

1.日 時 平成18年7月24日(月) 14時00分~16時50分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 大森 政輔 (弁護士)
副委員長  【社 外】  慶次 (大阪大学名誉教授)
委員  【社 外】 黒田 (日本ヒューマンファクター研究所 所長)
   【社 外】  由紀子 (都市生活研究所 所長)
   【社 外】 政野 澄子 (福井県女性エネの会 会長)
   【社 外】  宮村 鐵夫 (中央大学教授)
   【社 外】 向殿 政男 (明治大学教授)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   篠丸 康夫  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶
  【大森委員長挨拶骨子】
    関西電力が、全社一丸となって取り組んだ再発防止対策の実施が、地元福井県及び美浜町から評価を受け、去る5月26日には、美浜3号機の運転再開に対する了承を得るに至った。
    関係者の尽力を多とするが、これに気を緩めることなく安全文化の再構築への努力を続けることが、真の地元の信頼回復につながることを忘れてはならない。
    本年度は、重点検証テーマを絞り、より緻密な検証を行うとともに、各発電所の定期検査工事における再発防止対策の実施状況を、順次、検証していくこととしている。
    既に、高浜発電所において、労働安全活動、安全最優先の定検工程策定などについて発電所から直接説明を聴くとともに、設備面での安全への取組みの確認を行った。本日は、この実地検証の結果も踏まえ、委員から忌憚のないご意見をいただきたい。
       
5.議事概要
    5-1.第4回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第4回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、報告・審議し、了承。
 
<意見>  
企業の社会的責任(CSR)や企業倫理の問題では、組織(あるいはトップマネジメント)の責任ばかり取り上げられるが、組織は個人の集合体であり、事故防止のためには、個々人が自分の責任範囲を自覚し、意識を高めていくこと(レスポンシブル ケア)も大切である。(宮副委員長)
原子力はこれまで事故は起きないという前提で進めてきた。しかし、JCO等の事故を受けて、この考え方が変化し、まともな議論ができるようになってきた。今が正常な姿であるので対応を間違わないように大人としての対応が望まれる。(黒田委員)
    5-2.前回検証委員会以降の動向について
   原子力保全改革委員会事務局から、前回検証委員会以降の動向について報告。
    5-3.再発防止対策の実施状況の検証について
    (1) 労働安全活動の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、労働安全活動の取り組み状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
関西電力は、平成16年12月以降、労働災害の危険性を低減し、作業者の安全確保に資するため、労働安全衛生マネジメントシステムを、美浜、高浜、大飯各発電所に導入してきた。高浜発電所では平成17年7月から試運用を開始し、その後、各定期検査ごとに運用結果を評価し、本格運用に向けた改善につなげている。
その中で、リスクアセスメントについては、協力会社と連携して、順次、実施対象工事を拡大し、作業における安全の作り込みにつなげている。協力会社の設備改善提案などの情報についても、活用に工夫を加え、確実に反映を行なっている。
以上のことから、労働安全衛生マネジメントシステムが発電所に浸透し、その運用状況は自律的なPDCAを廻す段階にあると言える。
また、労働安全連絡会の開催等、原子力事業本部の各発電所に対する補完活動も着実に実施されている。
今後とも、労働安全衛生マネジメントシステムを推進していくにあたり、さらにPDCAを廻しながら、原子力発電所に適応した独自の労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、もって原子力発電所の安全を確保することを期待する。
   
<意見>  
労働安全衛生マネジメントシステムは完成すると非常に良い結果が得られると思う。標準的な仕組みを単純にあてはめるのでなく、原子力発電所に適した労働安全衛生マネジメントシステムとするよう工夫していって欲しい。(大森委員長)
労働安全マネジメントシステムについては、リスクアセスメントを始め個々の要素は運用されているが、ヒューマンファクターの分析、フィードバックなどシステム全体として、今後、効果的に運用していく必要がある。特に、ヒューマンファクターに関連するトラブル(労働災害含む)については、その背景要因まで踏み込んで分析することが重要であり、専門家組織について原子力安全システム研究所(INSS)との連携も含めて検討することが今後の課題である。(宮副委員長、黒田委員)
労働安全衛生マネジメントシステムの推進にあたり、原子力事業本部は業務の背景、根拠を確実に押さえ、発電所では、わかりやすさ、シンプルさを基本としたルールで業務を実施するということが大切である。 (宮村委員 )
労働安全衛生マネジメントシステムは、スキルレベルの向上を図りながら、あるいはPDCAを回しながら取り組むことが重要。アンケートの設問項目である「理解度」に関して「自分でできる」レベルとか、一番上では「人に教えられる」レベルとかあるので、設問も工夫して進めてほしい。 (宮村委員)
運転中プラントへの立入制限に係る検討にあたっては、協力会社のトップだけでなく、作業員の方々の意見も聞いて進める必要がある。(篠委員)
プラント設備のリスク評価として、危険性および有害性に対して、影響レベル、安全設計レベル、点検レベルで評価しているが、厳密にはその事故の大きさと発生頻度の組み合わせにより、リスクを評価し、リスクの大きいものから安全対策をとることに留意して評価する必要がある。 (向殿委員)
リスクアセスメントの対象となる作業の単位を明確にして、アセスメントの結果を残すようにしていけば、かなりのものがその組み合わせで対応できるようになるだろう。あとは工事内容に変化があった場合に、変化点のみに着目すればよいことになる。将来的にはこのようなことも考えて、改善を進めていって欲しい。(宮村委員)
リスクアセスメント実施により抽出された改善策の内容をみると、注意喚起などの人への対策が主として実施されているが、順番としては、まず本質安全設計をし、その次に安全装置をつけてリスクを低減し、それでも除去できないリスクに対して、人に対する対策を打つべきである。いくら注意をしても人間は間違いを犯すものであることを認識する必要がある。(向殿委員)
改善提案の内容をみると、手すりやタラップなどの追加設置が行われているが、作業安全のために設備を多く設置したために、かえって不安全になることも考えられる(例:近道行動)ので、そのバランスを良く考える必要がある。(向殿委員)
ハット・ヒヤリ事例については匿名で収集しているが、良い提案に対しては報奨し、インセンティブを与える必要がある。匿名では報奨できないので、記名式で“気がかり”として提案者の体験に基づかない事例として収集することも必要であり、気がかり事例を積極的に収集することが重要である。(向殿委員)
    (2) 定検工事における再発防止対策の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、定検工事における再発防止対策の取り組み状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
高浜2号機第23回定期検査において、安全最優先を基本とし、協力会社の意見・要望を反映した工程が策定され、また、労働安全、職場環境の改善の観点から積極的に資金が投入されているなど、再発防止対策が確実に実施されていることを確認した。
また、これらの取組みの中で、定検工程に係る情報を早期に伝えることで協力会社側での作業日程の工夫の余地を広げるなど、協力会社と一体となって再発防止対策の自律的な改善が図られていた。
以上のことから、再発防止対策が現場第一線まで浸透し、継続的改善が自律的に進む程度の段階にあることを高浜発電所において確認した。
今後、これらの取組が他の発電所においても継続的に実施されることが重要であるため、引き続き、定期検査工事における再発防止対策の取組状況について検証していくこととする。
   
<意見>  
安全のための対策を長続きさせていくためには、人間ができないようなことを安全だからといって掲げて走ろうとしてもできないということを念頭に置きながら、関電としての安全というものの考え方をしっかり持つことが大切である。その考え方を持った上で、再発防止対策の推進を行なうとともに、監査の視点として、無理なく仕事ができているかということも確認していただきたい。(黒田委員)
色々やるのは良いが、心配なのは現場に繁忙感が満ちると重要なところが抜ける可能性があるということである。今後、高経年化の問題等に対する取り組みも必要になり、業務の増加が予想されることから、現在の業務について、出来るものはルーチン化し、繁忙感を減らしていくという前提で考えておかないといけない。(宮副委員長)
仕事が増えることに対しては、製造業において、必要なものを残し、不要なものをやめるといった業務の改善を行う場合、ECRS (eliminate,combine,reduce,simplify)という手法がある。再発防止対策を推進していくうえで、これも参考に、次のステップでは整理・整頓も行い、現場実態に有用な改善につなげてほしい。(宮村委員)
下請け業者の人と関電社員は立場が違うということを意識して、相手が物を言いやすくするために努力することが大切である。コミュニケーションというのは努力し続けないと出来ないことである。(宮副委員長)
高浜発電所では、従来から「花いっぱい運動」などの協力会社とのコミュニケーションが図られており、安全投資を削減するといった経営の問題が発生しても、協力会社とのコミュニケーションが継続されると思うが、やはり、大切なのは経営方針として路線を変えないことである。(篠委員)
上の者からは下の者が見えにくいが、下からは上の者の行動がよく見える。上の者は、下の者とのこういった立場の違いを認識し、下からの視線を感じながら常に反省して行動しなくてはいけない。このことを感じながら日常の業務を進めれば、すばらしい安全文化が築けると思う。安全を確保するシステムも大事であるが、そのベースに人間関係、信頼関係があるということが、そのシステムをうまく活用していく上で肝要である。(篠委員)
裕度のある定検工程への取組みに関して、定検毎に実際に対策を実施した段階を追って、同じ協力会社の意見がどのように変わっていくか評価してみるのも一つの方法ではないか。(篠委員)
着目している設備だけでなく、それ以外の設備も含めた全体を見ることが重要である。リスクチェックの項目に「周辺システムへの影響」を入れているのは良い。このような取り組みをさらに進化・深化させていって欲しい。(宮村委員)
水平展開というのは、非常に多様で情報量も多い。水平展開について良好に行われている事例を見つけ、そのことを共有していけるような監査の視点も考えてほしい。(宮村委員)
       
    5-4.トラブルの発生と対策について
   原子力事業本部から、トラブル対策の実施状況等について報告。
     
<意見>  
運転再開を控えて、もう一度気を引き締めて、ちょっとしたトラブルでも起こらないように、慎重に準備を進めていただきたい。(大森委員長)
再発防止対策の取組みについては、テレビコマーシャル等で、協力会社とのミーティング風景等が取り上げられている。関西電力が大きく変わろうとしていることが福井県民に十分伝わるように、具体的に取り組み内容を説明する等、さらにアピールの仕方を工夫してはどうか。(政野委員)
設計検証に関し、対象をどのように選定し、どのようにして観点の抜けがないようにしているかについての考え方とプロセスを明確にして実施することが重要である。(宮村委員)
メーカのトラブルの対策としてエクスパートやスペシャリストの方々が新しく入ってくることより、今までの業務のやり方がどのように変化し、その変化がよりよい結果を生み出すのか。そういうことについても、継続的自律的改善にどう結びつくのかという点から、関西電力としてもフォローしていってほしい。(宮村委員)
     
    5-5.平成18年度第2四半期の検証テーマと検証の視点について
       経営監査室から平成18年度第2四半期の検証テーマ、検証の視点について提案・審議。
      <審議結果>
平成18年度第2四半期の検証テーマ、検証の視点については、次のとおりとすることで了承。
       
     
検証テーマ 視  点
保守管理の継続的改善 発電所において、保守管理の継続的改善が図られているか。
定検工事における再発防止対策の実施状況 行動計画の個別対策が現場第一線で自律的に実現されているか。

<配付資料>
・ 第4回原子力保全改革検証委員会における委員意見への対応状況
・ 労働安全活動の実施状況
・ 定検工事における再発防止対策の実施状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策実施状況について
・ 大飯発電所3,4号機 廃棄物処理建屋での火災について
・ 美浜発電所3号機事故 再発防止対策の実施状況(平成18年4月~6月実績と今後の予定)

向殿委員、宮村委員、政野委員、篠崎委員、黒田委員(左から) 大森委員長、宮崎副委員長(左から)
向殿委員、宮村委員、政野委員、
委員、黒田委員(左から)
大森委員長、宮副委員長(左から)
第5回原子力保全改革検証委員会
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用語解説

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