原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第32回 原子力安全検証委員会

 第32回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況」「原子力の安全文化醸成活動の実施状況」および「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組状況」等について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

1.日時 2026年6月1日(月)13時30分~16時50分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野うえの   友慈ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 原子力発電環境整備機構理事長)
 
(委 員) 社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 島嵜 しまさき   正行 まさゆき (元福井放送株式会社
 常務取締役放送本部長)
 
  社外 菅原 すがわら   慎悦 しんえつ (関西大学教授)  
  社外 永田 ながた   やすし (元早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 玉田 たまだ   浩一郎 こういちろう
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○現在、中東情勢の緊迫化などを背景にエネルギー安定供給の重要性が改めて認識されており、電源構成の多様性を確保し、我が国のエネルギー供給基盤を安定的に維持していくことの重要性は、以前にも増して高まっているものと考える。
    このような中、原子力発電が、エネルギー供給基盤の一翼を担っていくためには、何よりも安全性の確保が大前提となることは申し上げるまでもない。
  • ○ところで、関西電力における2025年度の原子力発電所の設備利用率は、平均して84.1%に達していたが、2026年度は70.5%を見込まれている。
    これは、2026年度に実施される各原子力発電所の定期検査において、高浜発電所3号機及び4号機における蒸気発生器取替工事等を始め、安全性を向上させるための各種工事や検査を実施される予定のためと承知している。
    このことは、関西電力において、「安全を何よりも優先する」という理念の下、たゆまず安全性向上のための取組を実践されていることを示すものであり、心より敬意を表したい。
  • ○もとより、原子力発電所の安全性向上のための取組みには、終わりはない。
    関西電力では、これまで、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に再発防止対策に取り組まれ、さらに、安全文化醸成活動を推進されるとともに、福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組を積み重ねておられる。
    当委員会は、こうした関西電力の取組について、独立的な立場から検証し、必要な助言を行うことを通じて、原子力発電の安全の確保をより確かなものとすることを目的としている。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また、社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るようお願いする。
5.審議概要
5-1.美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況
美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.原子力の安全文化醸成活動の実施状況
原子力の安全文化醸成活動の実施状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-3.原子力発電の自主的・継続的な安全への取組状況
原子力発電の自主的・継続的な安全への取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[再発防止の取組み]
  • ○内発的に取り組む姿勢を養う研修や、特別管理職向け研修、班長クラスへの研修の拡大、OB社員の講話の映像化などの取組みを継続していることは有意義である。美浜発電所3号機事故を風化させない取組みを継続し、同様の事故だけでなく幅広い事故防止にもつながる意識づけとしてほしい。
    (上野委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故の再発防止対策や教訓の定着は、直接的な対策のみに閉じるのではなく、原子力安全をさらに大きな視点で捉え、一般化して広く展開する段階にあると考える。安全文化醸成、自主的・継続的な安全への取組み、人財育成など各業務に、こうした対策が組み込まれ実践されつつあるのが現在の状況であると感じる。美浜発電所3号機事故の誓いや教訓から導かれる学びや、こうした各取組みを、さらに広く展開し、各業務に定着させ、安全確保につなげてほしい。
    (山口副委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故の再発防止対策は、同様の事故を防ぐための仕組みの定着に加え、似たような事象を防ぐ観点から、その教訓を原子力安全の様々な取組みにどのように広げているかを確認することも併せて重要である。事故やトラブルは、全く同じプロセスでは起きないため、事故の記憶の継承や研修についても、教訓の幅や学び方の幅をどのように工夫しているかを意識してほしい。
    (菅原委員)
  • ○美浜発電所3号機事故への対応では、「再発防止対策」だけでなく「未然防止」という視点を持ち、今後どのような事故が起こり得るのかを考えることが望ましい。再発防止対策だけでは同様の事故を防ぐという理解に矮小化される懸念があり、幅を広げる工夫が必要である。
    (永田委員)
[法令手続き不備]
  • ○個別原因や共通要因への対症療法も有効ではあるが、関係する法令数は非常に多いので、まず、日頃の業務がどのような根拠に基づくものか、その根拠の趣旨・目的は何かを確認する姿勢を養うことが必要である。そのための対策として、今回示された「内発的に取り組む姿勢を養うディスカッション」を新入社員・新任役職者研修に取り入れることは適切と考える。
    (上野委員長)
  • ○法令不備事象について、関西電力の他部門や他電力との発生件数・内容を比較し、比較結果により、管理方法の違いを確認する方法もある。良好点を展開し、課題の原因を探る視点が必要であり、可能であればデータを集め、部門間での管理状況や発生傾向を比較することが望ましい。
    (永田委員)
  • ○省エネ法に基づく手続不備については、発電所側だけの問題として捉えるのではなく、本店の関係部署が法令改正を把握し水平展開すべき課題として整理する必要がある。法令改正時には、現場と本店の意識に乖離が生じないよう、本店側の業務として確実かつ適切に進めてほしい。
    (大場委員)
  • ○安全文化は人とルールの両面で成り立つため、協力会社を含む内部から不備への指摘があったことは、安全文化上も組織内で自らを律する機能が適切に働いているものと受け止める。
    (島嵜委員)
  • ○2025年度の4件の法令不備事象は、ルーチン業務の点検漏れ、人事異動時の報告漏れ、仮設工事の届出漏れ、法令改正時の対応漏れという異なる特徴がある。単にチェックリスト化するだけでなく、各々の特徴を踏まえ、なぜその対策で再発しないかを分析し、件数低減につなげてほしい。残された課題として法令不備事象のみが上がってくる状況は、安全確保活動の成熟度が相当程度上がってきている証拠であるとも考えられる。一方で、こうした法令不備事象が大きな問題につながらないよう、引き続き丁寧に対応してほしい。
    (山口副委員長)
【安全文化醸成活動】
  • ○安全文化10特性を説明できる人の割合が多くないのが気になる。安全文化アンケートは具体的な設問なので回答できるとしても、10特性の意味を理解していなければ、回答の正確性にも影響する可能性があるので、10特性の理解を進めてほしい。
    (上野委員長)
  • ○安全文化評価では、各発電所現場の評価が事業本部等と比べて低い項目があるのが気になるが、各発電所で問題点を整理し対応されているので、その取組みを継続してほしい。なお、言うまでもないが、安全文化評価は、いい点数を取るためが目的ではなく、問題点を見つけるためのものであることを再認識してほしい。
    (上野委員長)
  • ○発電所ごとに職場の雰囲気や考え方には違いがあり、発電所ごとの特徴や強みを安全文化醸成活動に活かす視点が重要である。発電所ごとの文化的な違いや成功体験を踏まえ、それぞれのオリジナリティを活用してほしい。
    (島嵜委員)
  • ○安全文化醸成活動では、情報共有や過去経験の共有、ディスカッションを通じて考え、行動変容につなげ、その変化を確認するプロセスが重要である。監査を含めて、良好事例が見える形になったことを評価しており、この一連の手法を継続してほしい。
    (島嵜委員)
  • ○「みんなの変革広場」やeラーニングについて、受講者の感想や受け止めが他の人にも届く仕組みを検討してはどうか。情報を共有した人が他者の声を知ることで、受講後の学びが広がり、自分の考えを深めたり、異なる意見を踏まえて修正したりする効果が期待できる。
    (島嵜委員)
  • ○資料からは日々のタスクに追われ、問題提起や改善活動に十分な余裕がないようにも見える。現場がルールや標準に問題を感じている場合、本来は現場を巻き込んで修正していくことが望ましいが、そうした活動自体が業務負担増につながる懸念もある。
    (菅原委員)
  • ○問題提起のしにくさ、繁忙感、ルールの多さ、工程優先などの課題が示されている一方で、監査結果では安全文化醸成活動が良好であると評価されているように思う。心理的安全性や問題提起しやすい環境が実際に確保されているかについて、監査でもより踏み込んで確認してほしい。
    (山口副委員長)
  • ○エンドユーザー開発ツールの利用状況について、大飯発電所だけでなく全発電所で同じタイミングで導入されたのであれば、今後は作業プロセスの改善につながることを期待したい。来年度の評価では、その効果が各発電所の作業プロセスなどに見える形で表れることを期待している。
    (大場委員)
  • ○2WAY・マネジメントは安全文化醸成に有効な取組みであるが、大飯発電所と比べて他発電所では理解の深さに差がある点が気になる。今後は大飯発電所の良好事例を可視化し、具体的な実践例として他発電所に展開することで、各職場での理解と実践を促してほしい。
    (上野委員長)
  • ○2WAY・マネジメントについては、大飯発電所では認知度が高いことから、実践状況や心理的安全性、作業プロセス、問題提起できる環境との関係をさらに分析してほしい。
    (大場委員)
  • ○相関関係を示す図表については、何をもって相関があると判断するのかを丁寧に扱ってほしい。数値が相対的に高い場合でも、相関が十分高いとは限らないため、見る側に誤解が生じないよう、図表の見せ方や説明に注意が必要である。
    (大場委員)
  • ○資料の棒グラフや円グラフは改善されているが、サンプルサイズが小さい場合、パーセンテージだけでは判断しにくいため、サンプルサイズを明記してほしい。分析にあたっては、望ましい状態を明確にしたうえで、グループごとのばらつき、極端な値、望ましい状態から外れている箇所を見ることが重要である。過年度と比較し、どのように改善されたかを示すと分かりやすい。
    (永田委員)
  • ○権威勾配については、低ければよいと単純に捉えるのではなく、心理的安全性との関係をどう解釈するかを考える必要がある。組織として仕事を進めるうえで必要な関係性との折り合いも含めて、望ましい状態を検討することが重要である。
    (菅原委員)
  • ○参考コメントだが、関西送配電では、指揮命令系統を確実にすることと、権威勾配とは異なる概念として扱っている。危険作業や災害復旧では指揮命令系統の明確化が不可欠である一方、兆候や違和感に対して、気づく・言える・行動することを権威勾配が邪魔をしてはならない。
    (白銀委員)
【原子力発電の自主的・継続的な安全への取組状況】
[DX・生成AIの活用]
  • ○DXやAI等を活用して内発的な意欲を高め、行動変容につなげるには、本人が関心を持った瞬間に最も大事なことを自然に伝える工夫が重要である。メディアや広告でも、関心を引いた時点で要点を自然に織り込む手法があり、今後の取組みや仕掛けを考える材料になる。
    (島嵜委員)
  • ○DXについては、単一ユニットに限らず、全プラントのデータを活用したパフォーマンス向上という観点で拡張して考えてほしい。韓国では各プラントのデータを集中的に集め、メンテナンスや設備管理に活用している。故障データ等を共有しビッグデータとして扱えば効率化と性能向上につながる。
    (山口副委員長)
  • ○DXやナレッジマネジメントは、人員減少への防衛策にとどまらず、安全上の積極的な意味を持ち得る取組みである。設計が現在なぜその形になっているのかを責任ある組織が保持し伝えるデザインオーソリティの考え方にもつながり、組織変化の中でも重要な取組みである。
    (菅原委員)
  • ○DXを業務効率化だけでなく、安全と人財をも柱として進められていることは評価したい。将来のあるべき姿から逆算して段階的に取り組む方法や、エンドユーザー開発で現場の意識を高める方法も有効と思われる。
    (上野委員長)
[人財育成]
  • ○美浜発電所3号機高圧タービン蒸気漏れは重く受け止めるべき事案であり、今後の人財育成計画にどのように反映していくのか、社内での議論や検討状況を説明してほしい。原因究明を待つだけでなく、現時点で活用できる知見を速やかに人財育成や教育に反映し、未然防止の観点からリスクを見つけ、軽減する力を育ててほしい。
    (大場委員)
  • ○人財育成計画の外部レビューについて、特にナレッジマネジメントについては、国際機関等の評価を得て進めているなら、関西電力固有に閉じない取組みとして評価できる。ナレッジマネジメントや技術継承は電力業界全体で共通する課題であり、国の人材育成協議会等にも横展開してほしい。
    (山口副委員長)
  • ○DXの教育では、生成AIやエンドユーザー開発ツール等の活用促進に取り組む一方で、サイバーセキュリティ教育も両輪で徹底する必要がある。クラウドや脆弱性を突く攻撃への対応は全社・国レベルの課題であるが、セキュリティの重要性について関係者一人ひとりに教育してもらいたい。
    (永田委員)
  • ○ナレッジマネジメントには、知識が変容・更新され得るという動的な側面も組み込んでほしい。知識の陳腐化や再評価、若手の疑問が単なる知識不足ではなく、既存の知識や業務の前提を問いかける姿勢につながる可能性も踏まえると、現場の知識をより深みのある形で扱える。
    (菅原委員)
  • ○ナレッジマネジメントでは、ベテランにとって当たり前になっている重要な知識を掘り起こすことが重要である。若手には残すべき知識かどうかの判断が難しいため、OJTの場面でも管理職の支援が大事である。
    (上野委員長)
[パフォーマンス指標]
  • ○PIについては、多数の指標を継続的に把握していることを確認した。これだけ多くの指標を確認するのは大変だが、現状では評価結果の大部分がしきい値内にあり、パフォーマンスの劣化は見られていない。今後もPIを活用して発電所のパフォーマンス向上に取り組んでほしい。
    (上野委員長)
[蒸気発生器の取替]
  • ○蒸気発生器の取替については、運転開始の段階で想定していなかった大規模工事であることを改めて認識し、初心に立ち返って慎重に取り組むことが重要である。
    (島嵜委員)
[美浜発電所3号機高圧タービンからの蒸気漏れ]

美浜発電所3号機の蒸気漏れ事象については、5月8日および5月12日の報道発表資料に基づいて説明している。現在、原因調査中であるが、委員からいただいた主な意見は、下記のとおり。

  • ○高経年化プラント特有の運転課題や教訓が示唆されている可能性があり、重く受け止める必要がある。リモートセンシングや中央制御室のデジタル化などにより、運転環境の変化に対応できた点は評価できると考える。
    (島嵜委員)
  • ○22年前の事故を想起させる面があり、目視点検では減肉進行の把握ができなかったとすれば、その教訓を踏まえた対応が必要である。タイムベースの保守であれコンディションベースの保守であれ、高経年化プラントであることを踏まえ、安全側に対応する用心深さをもってほしい。高経年化プラントの運転では先行する立場にあるという点は、県民も注視しているところだと思う。
    (島嵜委員)
  • ○当該キャップ構造は、美浜発電所3号機のみに設置されたものと認識している。高経年化プラントの運転で蓄積された知見が今回の確認に活かされ得たのかも含め、検証することが望ましい。
    (島嵜委員)
  • ○保修や安全確認のスパイラルアップにあたっては、最新技術を積極的に活用することが重要である。DXやAIを含めた周辺技術の進展も踏まえ、利用可能な技術を幅広く取り入れることで地元の安心につなげてほしい。
    (島嵜委員)
  • ○美浜発電所3号機の事象については、当該キャップ構造を採用したときの経緯や技術的妥当性について、国内外の運転経験も含めて調査することが重要である。
    (山口副委員長)
  • ○今後の再発防止に向けては、兆候事象を事前に把握する観点が重要である。そのためには他者の運転経験が大切な情報であると考える。今回のキャップ構造採用の特殊性がどのように評価されていたのか、また国際的な運転経験や知見がどのように活用されていたのかを含めて調査することが望ましい。
    (山口副委員長)
  • ○今回の事象は22年前の事故との共通点を感じさせる一方で、定められた点検を実施していても把握できなかったのではないかという、より踏み込んだ課題を提起していると考える。決められた事項を確実に実施するだけでなく、その前提となる考え方や検査方法の妥当性も問い続けることが必要である。
    (菅原委員)
  • ○委員会としても、ルールどおりに業務が行われているかを確認するだけでなく、そのルールや確立された業務の進め方自体が妥当かどうかについて問いかける役割を果たすことが重要ではないかと考える。
    (菅原委員)
  • ○今回の事象から得られる教訓については、今後の研修や教育の中に取り込んでほしい。また、事象の内容に鑑み、丁寧な広報も検討してほしい。
    (上野委員長)

以 上

用語解説

事業概要