原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2010年12月7日



第15回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 第14回の委員会では、運転中プラントへの立入制限に関する対策を主と した美浜発電所3号機事故再発防止対策、また平成21年度安全文化評価結果および重点施策の実施状況を中心に検証していただきました。運転中プラントへの立入り制限に関する対策については、「広く協力会社も含めて意見を聞くなどして、具体的な運用方法を定め、現在試運用を実施中であり、引き続き安全最優先の取組みとなっているか、確認していく。」また、平成21年度の安全文化評価結果および重点施策の実施状況については、「協力会社が安全文化評価へ参加している取組みを各発電所へ展開するなど仕組みの充実を図り、課題抽出につなげている。安全文化評価の仕組みが品質マネジメントシステムと相俟って、美浜3号機事故再発防止対策の風化防止に寄与していくことが期待される」旨の評価をいただきました。
 今回の第15回検証委員会では、前回に続き、運転中プラントへの立入制 限に関する対策を主とした美浜発電所3号機事故再発防止対策、また、平成22年度安全文化中間評価結果および重点施策の実施状況について、検証が行われました。その結果をお知らせいたします。


1.日 時 平成22年11月12日(金) 13時30分~17時05分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 佐藤 信昭 (弁護士)
副委員長  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
委員  【社 外】 小松原 明哲 (早稲田大学教授)
   【社 外】  田中 健次 (電気通信大学教授)
   【社 外】 槇村 久子 (京都女子大学教授)
   【社 外】  増田 仁視 (福井経済同友会代表幹事)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   井狩 雅文  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶等
    4-1.佐藤委員長挨拶骨子
     
美浜発電所3号機事故再発防止対策の中で、残された課題である運転中タービン建屋等における立入制限と運転中保全活動の試運用の状況について、前回に引き続き検証を行いたい。
安全文化醸成活動については、8月の大飯発電所2号機の協力会社作業員の労働災害も踏まえた、平成22年度の上期を対象としたプラント安全、労働安全、社会の信頼についての中間評価結果と重点施策の実施状況を確認したい。
9月には、美浜発電所1,2号機のタービン建屋で、立入制限と運転中保全活動の実施状況について直接確認し、協力会社の方々とも安全文化について意見交換をしたので、今後の検証に活かしていきたい。
美浜発電所1号機がまもなく運転40年を迎え、高浜発電所でプルサーマルへの取組みが進められている。このようなときこそ、従来にも増して、原子力事業、原子力発電所の運営を安全最優先で進め、安全文化を醸成していくことが肝要である。
以上を踏まえ、各委員のご専門の立場から、あるいは総合的な見地から忌憚のないご意見をいただき、活発な議論をしてもらいたい。
     
5.議事概要
    5-1.第14回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第14回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力保全改革委員会事務局から報告し、審議・了承。
    5-2.美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について
        美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について、原子力保全改革委員会事務局、原子力事業本部および経営監査室から報告し、審議。
 
<審議結果>
再発防止対策の中でルール化を検討してきた「運転中タービン建屋等への立入り制限と運転中保全活動に関する施策」については、運転中に必要な保全活動とその作業内容ごとの安全対策を定め、本年4月から試運用を開始した。
7月の中間評価においては、試運用で得られた改善意見や前回検証委員会で出された意見への対応が適切に進められていた。検証委員会としても、9月に美浜発電所の1,2号機タービン建屋の視察を行い、施策の実施状況を確認した。
今後、本施策については、本日の委員会で出された立入り制限の必要性の周知についての意見等や中間評価以降の試運用に係る現場の改善意見を活かして社内標準化を行い、本格運用につなげていただきたい。
再発防止対策全体の定着状況については、次回の検証委員会で確認することとしたい。
<意見等>
[運転中タービン建屋等への立入り制限と運転中保全活動]
なぜ、立入制限をすることになったのか、その必要性について、継続的に伝えていくようお願いしたい。手間のかかることはなし崩し的にされなくなる可能性もあるので、それを防止するためにも、立入制限をするに至った経緯、理由、精神について、社員および協力会社の方たちに何らかの形で継続的に伝える努力をしてほしい(小松原委員)。
オープンハッチエリアの運用に関して、本格運用にあたっては作業員に混乱等が生じることなく、意味をよく理解した運用となるよう進めてほしい(小松原委員)。
運転中のユニット側を立ち入り制限することによって定検作業をしている方に制限をかけている感じがしたが、協力会社との議論を経たうえでの制限であることがわかった(小松原委員、井狩委員)。
立入り制限対策は、再発防止対策の29項目のうちの1項目であることを、例えば社内標準に記載しておき、社内標準を見直すときには、その旨がわかるようにしておいてはどうか(小松原委員)。
運転中タ-ビン建屋等への立入制限対策について、清掃員に対して日々のミーティングで、清掃場所近傍の立入不可範囲を周知するとしているが、清掃員が記憶に頼った照合の必要がないように、可能な範囲で現場に立入不可範囲等の情報を掲示するなどの工夫をされるとよいのではないか(田中委員)。
片ユニットが停止中に、停止中ユニットの作業のために立入が認められるエリアでは、リスク低減のため、長時間に亘り人が滞在することを避けるなど、使用法に注意を払って活用することが肝心である(田中委員)。
試運用マニュアル案の別表1の「安全、品質上、必要な作業である理由」が、なぜ運転中に実施する必要があるのか、その理由がもう少し明確になるように、例えば、法令で点検間隔、頻度が決められているから等、キーワードを入れるとわかりやすい(田中委員)。
運転中タ-ビン建屋等への立入制限対策を社内標準化するにあたっては、それぞれの用語について、読む人によって解釈が異ならないように留意してほしい(槇村委員)。
タービン建屋等の立入制限エリア・アクセス通路図などの図面を作成される場合には、それぞれがより分かりやすくなるように色分けなどに留意されてはどうか(槇村委員)。
停止中の1号機の定検関係作業を、許可された2号機側の範囲でする場合は、運転中の2号機関係の準備作業をやっているというような誤解を受けないように進めていただきたい(増田委員)。
9月の美浜発電所視察時に、立入制限区域の具体的な区画の状況についてよく理解することができた。やはり、現場を実際に見てみることが大切であることを再認識した(増田委員)。
試運用マニュアル本文には実施者や責任者が概ね明確に記載されているが、耐熱服の着用要否判断者についても明確にしておくことが望ましい(齊藤委員)。
[その他]
9月の美浜発電所視察では、関電と協力会社との良い関係が感じられた。あのように検証委員と協力会社との直接対話の場を設けられるというのは、関電と協力会社との関係が良好でないとなかなかできるものではないと思う(小松原委員)。
直接、現場のことを知っている技術系社員が美浜発電所3号機事故以降、継続して地元の方々とコミュニケーションをとられているのはよいことだと思う(槇村委員)。
    5-3.安全文化醸成活動状況および監査結果について
   安全文化中間評価の結果および重点施策の実施結果、それらに関連する、その他報告事項の1つ「大飯発電所2号機で発生した主復水タンク内における作業員の負傷」について原子力事業本部から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
     
<審議結果>
関西電力の原子力安全文化評価においては、昨年度に続き、平成22年度上期の安全の結果についての中間評価が行われていた。本年8月に発生した大飯発電所タンク内墜落災害を踏まえ、他発電所との比較分析を行うなどの対応が取られているが、本日出された意見等をその施策の充実につなげるとともに、確実な水平展開をすることが望まれる。
また、個別の重点施策では、「協力会社作業員の安全意識の更なる向上と徹底」などにおいて、問題の所在を把握し、対策を検討・実施するなど、着実な取組みが進められている。検証委員会としても、9月の美浜発電所視察時に協力会社の方々と懇談を実施し、関西電力との意思疎通の状況等について確認した。
平成22年度下期には、発電所も含めた原子力事業本部全体の年度評価を行い、重点施策につなげていく仕組みが有効に機能しているか確認していく。
<意見等>
[安全文化全体]
原子力の安全文化について、今後とも社内他部門や他企業との情報交換、情報共有、調査結果の比較等を進めていくことが大事である(佐藤委員長)。
トラブル件数や労災件数を他電力や世界的な水準と比較することは、取り組んでいる人のモチベーションを上げる上で良いことだと思うので、そのようなことを検討されてはどうか(東副委員長)。
美浜発電所における責めない文化への取組みは、コミュニケーションだけでなく、安全にもプラスになっていると思う(東副委員長)。
安全文化を会社内部の個人と組織といった範囲で捉える場合と、一般の人々が原子力の安全文化をどのように認識しているかといった範囲で捉える場合とでは評価も異なってくると思う(槇村委員)。
定検の作業員でも2次下請以下は、常駐ではなく仕事がある時にだけに発電所に来るので、安全文化をどのように浸透させるのかが課題である(増田委員)。
[トラブル・労働災害]
大飯発電所で発生した協力会社社員の墜落災害について3発電所の比較分析を実施しているが、電力会社は本来高所作業の多い業種であり、そうした作業における安全確保のノウハウを持っているはずなので、送電部門など、他の技術部門との比較も検討されてはどうか(東副委員長)。
大飯2号機主復水タンク内での協力会社員の負傷の対策の中に、教育によってコミュニケーションの知識を付与するというものがあるが、知識だけではなく、訓練をし、実際の行動につなげなくてはならない。コミュニケーション、現場の管理、作業責任者の役割を含めた作業責任者に対する訓練プログラムの策定と実施が求められていると思う(小松原委員)。
大飯2号機主復水タンク内での協力会社員の負傷に関しては、多くの教訓を得て、原子力発電所全体で、水平展開(共有)すべき大事な事案であると思う。例えば、高所作業時の安全対策がなされていなかったことやタンク内単独作業をしたこと、作業責任者の労働安全管理に対する役割認識やコミュニケーションといった面が十分ではなかったこと、作業責任者が作業範囲を誤認していたため担当ではない作業を指示したこと、などが指摘できる(小松原委員)。
大飯発電所の労災で、なぜ未然に防止できなかったのか、なぜ大飯だけ多いのか、分析し課題を見つけるのは、今後の未然防止になるので良いことである(田中委員)。
[教育・訓練]
作業員に自らがやるべきことを、きちんと認識させることはもとより、自分が指示されていない作業をした場合の危険性を自ずから判断できる人材を育成することで全体がレベルアップできると思う(田中委員)。
若手社員教育に関しては、新入社員の基礎学力や気質などを踏まえることが重要である。なお、その世代が、文部科学省の定めるどの学習指導要領に基づく教育が受けてきたものかを考慮すれば、より効果的な教育プログラムの策定が可能ではないかと思う(小松原委員)。
「教育の充実」で、研修の回数をフォローしているが、適度な回数で必要なことを教えているということが継続されていることが大切である(田中委員)。
[その他]
原子力安全システム研究所が、まさに原子力安全研究の拠点となり、海外にまで活動を広げるなどして福井が世界の原子力の中心になっていくことに寄与してほしい(増田委員)。
    5-4.その他報告事項について
       その他報告事項として、原子力事業本部から、「中国電力(株)島根原子力発電所1,2号機の保守管理の不備等の報告に関する当社の確認結果」、「美浜発電所1号機の今後の運転方針」、「MOX燃料調達に関する進捗状況」、「(株)首藤バルブ製作所にて製造された弁に関する確認」について報告。
     
<意見等>
原子力発電所における供用期間中検査計画の管理状況に関する調査結果については、変更管理を確実に実施することが大事である(田中委員)。
    5-5.平成22年度下期の検証テーマと検証の視点について
       平成22年度下期の検証テーマと検証の視点について経営監査室から提案し、審議。
     
<審議結果>
平成22年度下期(第16回検証委員会)の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
     
検証テーマ 視  点
美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況
再発防止対策が確実に定着しているか。
運転中立ち入り制限に関する施策が適切に実施されているか。
安全文化の醸成状況
平成22年度に充実した安全文化評価の仕組みが有効に機能しているか。
平成22年度の重点施策は、実効的に取り組まれ、効果を上げているか。
協力会社と一体となった安全文化醸成への取組みが効果的に実施されているか。

<配付資料>
・ 議事次第 [PDF 10.6KB]
・ 第14回原子力保全改革検証委員会でいただいた意見への対応状況について [PDF 138KB]
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策 実施状況について [PDF 896KB]
・ 安全文化評価の実施状況 [PDF 237KB]
・ 重点施策の実施状況 [PDF 347KB]
・ 中国電力(株)島根原子力発電所1、2号機の保守管理の不備等の報告に関する当社の確認結果について [PDF 81.4KB]
・ 美浜発電所1号機の今後の運転方針について [PDF 90.6KB]
・ MOX燃料調達に関する進捗状況について [PDF 164KB]
・ 大飯発電所2号機で発生した主復水タンク内における作業員の負傷について [PDF 160KB]
・ (株)首藤バルブ製作所にて製作された弁に関する確認について [PDF 138KB]

増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から) 佐藤委員長、東副委員長(左から)
増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から)
佐藤委員長、東副委員長(左から)
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