原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第31回 原子力安全検証委員会

 第31回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

1.日時 2025年11月27日(木)13時30分~16時50分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野うえの   友慈ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 原子力発電環境整備機構理事長)
 
(委 員) 社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 島嵜 しまさき   正行 まさゆき (元福井放送株式会社
 常務取締役放送本部長)
 
  社外 菅原 すがわら   慎悦 しんえつ (関西大学准教授)  
  社外 永田 ながた   やすし (早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 玉田 たまだ   浩一郎 こういちろう
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○本年6月に閣議決定された「エネルギー白書2025」には、原子力基本法第2条の4の「原子力事業者の責務」を引用しつつ、「原子力事業者には、新規制基準への適合に留まらず、常に安全性の高みを目指した取組を継続していくことが求められている。」旨記載されている。
  • ○関西電力では、かねて「規制の枠組みにとどまらない安全性向上の取組み等」を全社をあげて推進されており、現在も、安全文化醸成活動の継続、安全を支える人財の確保・育成、「適切な安全の姿」実現に向けた仕組みの改善、これらにつきより効果的な取組みをするための社会・外部機関との連携など、日常的に自主的・継続的な安全への取組みをされていると承知している。
  • ○そのうち人財育成に関し申し上げる。
    先日、原子力研修センターを見学させていただいた。事故・トラブルの再発を防止するため、美浜発電所3号機事故を始めとする過去の事例を教訓とした研修を実施されていると聞き、それらに関する展示も見せていただいた。また、関西電力では、美浜発電所3号機事故の教訓を風化させることなく次世代に継承するため、研修の見直し等もされていると承知している。
  • ○事故・トラブルを防止するためには、過去の事例を教訓にすることは重要で、その際、よく言われるように、その事故等を「自分事」として捉えることが必要と思われる。この「自分事」というのは、自分がその事故等が発生した原因の担当者や上司であった場合どうすべきであったか、あるいは、その事故等の現場にいた場合どう対応すべきであったかなどということを考えるのみならず、仮にその事故等により、自分自身や近しい方が被害や影響を受ける立場であった場合のことも含めて考える必要があるように思われる。そして、そのような意識は、過去の事例を教訓とする際だけではなく、今自分が担当している業務の中で事故等が発生するリスクがないか検討する際や様々な訓練の機会においても、常に念頭に置かれる必要があると思う。
  • 〇本日の委員会では、美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況、原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況などにつき、ご説明を受け、審議する予定にしている。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また、社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るようお願いする。
5.審議概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況
原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[再発防止の取組み]
  • ○美浜発電所3号機事故ライブラリ刷新により、当時、事故対応にあたった社員の顔写真とともに事故時の証言があること、動画で見ることができることは自分事化に有効な取組みである。また、情報を受けた社員が考え、さらに語ることが大事であるため、再発防止研修にディスカッションを取り入れたことは良い取組みである。そのディスカッションの様子をアーカイブとして他部署の社員が必要に応じて閲覧できるようにするなど工夫を重ねていただきたい。
    (島嵜委員)
  • ○階層別研修は、新入社員、中堅社員、役職者では何が異なるのか資料から読み取りにくいため、違いを示していただけると良い。
    (永田委員)
  • ○再発防止研修に関して、事故対応にあたった社員が減ってきていることに対し、組織として記憶を継承していくために、もう少し広い視点で捉え、研修を受けた社員が内容を再構成して、その社員を中心にさらに継承していけるようにすることも良い。
    (菅原委員)
  • ○美浜発電所3号機事故ライブラリの刷新や、再発防止研修の見直しは大変良い。再発防止研修においてディスカッションを行うことや、「なぜこういうことになったのか」という背景要因や安全文化との関わりを社員が理解することが大事である。
    (山口副委員長)
  • ○資料に「重大な事故の教訓を次代へ確実に伝え続けることが当社の使命」と記載されているが、「伝え続けること」が目的ではなく、「伝え続けることによってまだ起きていない事故を防ぐ」ことが目的。「忘れてはいけない事実」は、「事故を起こしてしまったこと」。言葉にする際よく検討していただきたい。
    (大場委員)
  • ○「まだ起きていない事故を防ぐ」という観点では、「なぜ気づけなかったか」「なぜ対策できなかったか」などという背景要因を伝え、今の時代におけるリスクに気づき、意識や行動に活かすところまで到達していただくよう、取り組んでいただきたい。
    (大場委員)
  • ○美浜発電所3号機事故ライブラリの刷新や再発防止研修の見直しについては、よく考えて工夫されている。伝承する事実を工夫することによって、さらに事の重大性を認識してもらうことができるかもしれない。安全の誓いの日の取組みなど組織としての様々な取組みは、会社が再発防止に本気で取り組んでいることを社員に実感させ、社員も研修等に真摯に取り組んでくれるようになると思うので継続していただきたい。
    (上野委員長)
  • ○KPIが設定できるものについて設定し、目標値を決めて達成状況などの推移を確認するようにしていただきたい。
    (永田委員)
  • ○消防ホース、消火器の点検漏れについては、社内で見つけて是正したことについては評価できるが、点検漏れという点で美浜発電所3号機事故を想起させる事象である。組織文化については、個々人がより一層、内発的に危機意識を持って取り組めるよう、そのための環境整備をさらに進める必要がある。
    (島嵜委員)
[DX・生成AIの活用]
  • ○人為的な誤りの可能性を低減するため、生成AIを含むデジタル技術を活用する柔軟な発想も良い。DXの推進に人財育成が大事であるという考え方について同感である。
    (島嵜委員)
  • ○第30回の原子力安全検証委員会にて示された安全性向上に向けた取組みにおける「安全文化・人財・仕組み」の要素とDXのアップデートにおいて検討されている「安全・人財・効率」の柱について、関係性が分かりにくいため、もう一工夫あっても良いかと思う。
    (永田委員)
  • ○DXを進めるうえで、効率性と言うとタイムリーに仕事を進めることを指すことが多いが、法令やルールが複雑化しているなか、生成AIの活用により気づきを与えることで、慎重な判断を促し、安全性をより一層高めていくことを強調されても良い。
    (菅原委員)
  • ○DXについて着実に取り組まれていて良い。効率化を図ることで品質を上げリソースを適切に配分する複合的な効果がある一方、リスク管理や導入したソフトウェアに関するセキュリティ管理の問題もあるので、品質確保にも力を入れて取り組んでいただきたい。スモールスタートでグッドプラクティスを展開し進化させることで良い。
    (山口副委員長)
  • ○DXについては、効率を目指すと割り切って良いと思う。業務効率化が進むとリソースを適切に配分することができ、安全性の向上や人材の確保に貢献できると考えるので、目指す方向性を明確にすると良い。
    (大場委員)
  • ○DXが進むと人と人とのコミュニケーションの機会が減ることや考える機会が少なくなることを心配する。DXはその目的を明確にし、関係者間で共有して取り組んでいただくと良い。
    (島嵜委員)
  • ○法令や条例が頻繁に改正されることを、例えば、規制当局や法務省などもう少し上流で捉えていただけると望ましい。産業界から「使いやすい法令の体系や仕組み」の整備を求めていくことも、ぜひ考えて発信していただきたい。
    (山口副委員長)
  • ○法令手続きを生成AIでチェックするのは結構なことだが、まず自ら、自分が行っている業務の根拠を考え確認する姿勢を養うことが必要と思われる。
    (上野委員長)
  • ○DXについては、技術の進展も早く、取組みの着地点も時代とともに変化するので、DXを活用した時代の先端をゆく原子力発電の安全性向上への取組みを期待する。またDXの取組みは長きに及ぶと思うので、その間、いろいろな声にアンテナを高くして取り組まれると良い。
    (島嵜委員)
  • ○原子力は核物質防護対策も重要。モバイルツールで発電所設備を撮影した画像や映像を活用するのは、非常に難しい取組みであるが、積極的かつ適切に進めていただきたい。
    (大場委員)
【原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況】
[マネジメントオブザベーション]
  • ○ベンチマークについて、他電力と関西電力では従業員数等に違いがあるので、他電力の手法を参考にする際、他のやり方等についても、人数がいるからこそ重みを置き過ぎているものがないか等、もう一歩踏み込んだ検討をされるとリソースの再配分にもつながると考える。
    (大場委員)
  • ○パレート図は、経営者が優先順位を決めるために重点思考するための道具なので、工夫されると良い。
    (永田委員)
[広報活動の充実]
  • ○自主的安全性向上の取組みに関する情報発信は、年度での区切りやまとめに拘らず、日常的に発信していくことが重要であると思う。
    (山口副委員長)
  • ○広報室と原子力事業本部と経営企画室が連携して検討していることは良い取組みである。本店広報が「載せたい」情報と現場の発電所が「載せてほしい」情報の違いがあれば確認して連携されたい。年1回の取り纏めはあって良いと思うが、生成AIを活用するなど効率的に取り組まれると良い。より多くの方に読んでほしいと思うならば、ポイントを付与する仕組みを取り入れることなども考えられる。
    (大場委員)
  • ○人「財」という表記は、一般の方から見ると誤字に見えるように感じるので、検討されると良い。
    (大場委員)
  • ○ホームページに掲載されている情報は、理解しやすい内容になっていると思われる。ただ、掲載されている情報にたどりつくのに手間がかかり、なかなか見てもらえないのではないか。例えば、プレスリリースの際や、当委員会の審議結果公表の際に、リンクを入れてみることも検討してはいかがか。
    (上野委員長)
  • ○今まで以上に情報発信を細かくタイムリーに実施していくことは良い取組みである。取組みの進展に伴い「前に掲載された情報と異なる」と指摘されそうなときがあるかもしれないが、状況の変化に対応して情報発信していただけると良い。
    (菅原委員)
[その他]
  • ○協力会社から提案の声をいただきそれを活かす点で、良好な取組みを確認できたことに安心した。
    (島嵜委員)
  • ○改善要望書の検討期限について、守れるルールにしていくという考え方よりは途中経過を伝える運用をすると良いのではないか。
    (大場委員)
  • ○検討結果の回答が遅れている場合、どのような事情で遅れているかを返答するなど提案者の納得を得られることが大事で、回答がいたずらに遅延するなどすれば、今後、必要な提案がなされなくなるおそれがあると思われる。
    (上野委員長)
  • ○労災については、内発的な気持ちから安全を保つことの重要性をしっかり意識していただきたい。
    (島嵜委員)
  • ○負傷者を出した会社は、日常的に改善要望提出に積極的であったか。MOの説明で「兆候」を掴むという話があったが、日常的な意識の問題を兆候と捉えることもできるのではないか。取り組まれている個々の取組みを単独のものと考えず、つなげる視点でみることも重要だと思う。
    (大場委員)

以 上

用語解説

事業概要