原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第21回 原子力安全検証委員会

 第21回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2020年度上期の進捗状況については、2020年11月25日にお知らせ済み。

1.日 時 2020年12月2日(水)13時30分~15時50分
2.場 所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
関西電力株式会社 東京支社(千代田区内幸町)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 一弘 わたなべ かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 彰 やまぐち あきら (東京大学教授)  
(委 員) 【社 外】 荒木 孝治 あらき たかはる (関西大学教授)  
  【社 外】 小澤 守 おざわ まもる (関西大学名誉教授)  
  【社 外】  田中 嘉久 たなか よしひさ (元福井県中小企業団体中央会専務理事)  
  【社 外】 松本 真由美 まつもと まゆみ (東京大学客員准教授)  
  関西電力送配電
株式会社
取締役社長
土井 義宏 どい よしひろ
  取締役
代表執行役
副社長
彌園 豊一 みその とよかず
(幹 事) 経営監査室長 多田 充宏 ただ みつひろ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • 〇新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各国でその猛威に衰えが見えず、わが国では一時期小康状態にあったが、11月に入り「第三波」とも言われる感染者数の増加が各地で起こり、関西電力の原子力発電所に勤務する従業員にも感染者が発生した。医療関係者の献身的なご努力や国民のマスク着用の徹底等により、感染爆発・医療崩壊は何とか阻止されてきたが、11月末に至り、都市圏を中心に感染が拡大し、一部都市圏において、政府の「GO TO キャンペーン」の停止や外出自粛が再度要請されるなど、決して油断できない状況が継続していることは、皆様ご承知のとおりである。
  • 〇そして、このような状況下においても、電力、ガス、流通など社会インフラ事業に携わる方々は、国民生活の基盤を支えるという強い使命感を持って、昼夜業務に取り組んでいただいている。こうした皆様に対しては、この場を借りて、衷心から感謝の意を表したいと思う。
  • 〇改めて申すまでもなく、当委員会の設置目的は、美浜発電所3号機2次系配管破断事故を契機として
    • ・社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策を検証すること
    • ・原子力安全文化醸成活動、そして福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについて助言を行いこれら継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすること
    にある。
  • 〇既に各委員はご承知のとおり、昨年度は誠に残念なことながら、高浜発電所において原子力部門では美浜3号機事故以来となる死亡災害が発生するなど、数件の重症災害が発生した。今年度についても、再発防止に懸命に努められているものの、労働災害の撲滅には至っていない。
  • 〇現在関西電力では、美浜および高浜発電所で国内初の40年以降運転に向けて実施した、高経年化対策、新規制基準対応、自主的な安全性向上対策について、地元の皆様に真摯に説明を行う努力を重ねていると聞いている。運転再開への理解を得、これを維持していくためには、まずもって原子力発電を運営する関西電力の安全最優先の姿勢に対する信頼を頂き、その信頼が減じることなく維持・伸長されていくよう、弛まぬ努力を重ねていくことがその要諦である。
  • 〇そのためには、どのような状況にあっても、原子力安全への取組みに後退や足踏みがあってはならず、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、「関西電力における原子力発電の安全性向上の取組み」を、社外の眼で検証・確認するという当委員会の役割は、今後とも変わりなく求められていくものと思う。
  • 〇さて、本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況」に基づき、
    • ・原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組み(ロードマップ)」の取組状況及び監査結果
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    について検証・審議する。
  • 〇委員の皆様には、これまでと同様、ご専門分野の眼から、また社会一般の眼から、ご検証頂き、忌憚のないご意見、ご助言を賜るようにお願いする。
5.議事概要

5-1.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
労働災害の撲滅に向けた取組みと今後の方向性について原子力事業本部から、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2020年度上期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>

5-2.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>

[労働災害]

  • 〇労働災害の傾向分析では墜落転落や「はさまれ」が多くなっているが、世の中では珍しくない災害が起こっているもの。美浜や大飯の労働災害でも、なぜ基本動作ができていなかったのか、現場で監督が常日頃からきちんと指導できなかったのかが問題。そもそも循環水管の上で作業する事自体が危険。危険要因の排除が安全対策の一歩であり、しっかりと取り組んでもらいたい。(小澤委員)
  • 〇基本動作不遵守等の労働災害の防止には、本人の自覚が前提であるが、さらには現場において、安全性、危険性に問題を感知した者が、上司・部下、先輩・後輩の関係を抜きにして、お互いに遠慮することなく指摘し、声を掛け合うことが大事であると思う。また、リスクを事前に細かく掘り出しても限界があり、現場で気づくリスクへの対応が不可欠であり、リスクに対する現場での話し合い、安全性、危険性に対する声掛けの文化を醸成することが重要だと考える。(田中委員)
  • 〇作業員アンケートでは、約5千人のうち数%の方が労災防止の一部の取組みについて「できていない」と答えており、一方で発電所入構1年以下の方の労災が6割を超えていることから、こういった方々が初歩的な労災を起こしているとも考えられる。例えば、このような方々をターゲットとして研修プログラムを作成するなど、労災を起こしやすい数%の作業員の安全意識を高めるような、ピンポイントの対策を考えるフェーズになったのではないか。(山口副委員長)
  • 〇美浜や大飯の労災について、リスクアセスメントをきちんと深堀りされていたのかが疑問。リスクアセスメントにおいては、現場状況や作業環境等を踏まえ、なぜなぜによる真因を探求する深堀を行う必要がある。また、分析のプロセスも十分ではない。例えば、入構年数が短い作業員の労災が多くなっているということがわかった時点で、以降はこの作業員に絞って重点的に分析していく必要がある。対策として例えば、基本動作ディスカッションやパトロール等で新規入構者を主対象として行うなどである。限りある資源の中では、重点指向でないと効果は期待できない。(荒木委員)
  • 〇ハットヒヤリや、何かミスした時も同じだが、そのことによって災害や過誤が起こらず、また作業に支障が生ぜずに終わってしまうと、感じたハットヒヤリが生かされないままになる。そのままにしておき、それが重くなると重大災害に繋がりかねない。終礼時の報告を励行し、こういう事があったと必ず挙げてもらい、それをリスクアセスメントにも活用することが大切と思う。(渡邉委員長)
  • 〇労働安全コンサルタントから「人間はエラーをするのが当然」との助言があったというが、登山者が万全の装備を準備するように、作業員の装備、特に作業靴が適切かどうかにも注意してもらいたい。高所などリスクが高い所で作業する際は、元々は高齢者用に開発された物だが、転倒時にエアバッグが作動する腰ベルトを装着するなど、自動車の安全技術を導入したエアバッグなども活かせるのではないか。新規入構者への演習式の研修や関西電力による抜き打ちパトロールは続けてもらいたい。(松本委員)

[ロードマップ]

  • 〇ロードマップ報告書は、社会に理解してもらうことが重要であり、独自に定量的な指標を工夫しているのは大変すばらしい。(山口副委員長)
  • 〇ロードマップ報告書で、リスクマネジメントについて、リスク評価の精度向上に努めているとあるが、それは結果であり、プラントの最新の状態が把握できていること、それを反映・評価して、安全確保に役立っていることが重要。(山口副委員長)
  • 〇皆さんの努力で、ロードマップ報告書は毎回よりわかりやすくなっていることはこれまでも委員会で申し上げてきたが、規制庁が定めた基準等に基づく取組みに加えて、独自に、あるいは他例を参考にしたものもあろうが、関西電力がそのようにしてより安全性の向上のために工夫した事柄について、それと分かるように具体的に紹介した方が、より一層関西電力の取組みを一般の方に理解して頂けるのではないか。(渡邉委員長)

[人材育成]

  • 〇人材育成では、社内の活動だけでなく、社外の安全に係る議論や技術の進歩、安全文化を取り込むなど、社外との情報共有、意見交換に関する取組みがあれば記載されると良い。(山口副委員長)
  • 〇人材育成に関して、原子炉主任技術者養成など発電所を動かすための計画はあるが、現在起こっている労働災害を抑えるための、作業リスクを評価する人材育成はどうなっているのか。主体は元請会社となるのかもしれないが、関西電力の中にもそれを評価できる人材がいなければならない。(小澤委員)

[防災訓練、リスクコミュニケーション]

  • 〇防災訓練について、指標だけで示すのは難しい。訓練は、万一の緊急事態に機器が想定通り動くか、組織として、職員個人として、適切に対応できるかを確認することが重要であり、毎回、目的、想定、内容等に変動があるものだと思う。規制庁は客観的に評価していると思うが、関西電力として、訓練ごとの重点事項、評価があると思うので、特記事項で良いので、そうした関西電力としての独自の取組み、評価を掲載してもらいたい。(田中委員)
  • 〇防災訓練を通じて事故時対応能力を高めている事実はリスクコミュニケーションでは非常に重要であり、関西電力のHP上で防災訓練をアーカイブとして残してはどうか。防災訓練で得られた知見を積み上げ、積極的に情報発信していくこともリスクコミュニケーションとして必要だと考える。関西電力の管轄エリアに留まらず、有事の際に有益な情報となる。(松本委員)
  • 〇リスクコミュニケーションの充実について、こちらから伝えるだけでなく、発電所周辺の地域の方にどのように伝わっているか、また難しいとは思うが、効果を上げているかを考えおく必要があるのではないか。(小澤委員)

[美浜発電所3号機事故の再発防止対策]

  • 〇上期に実施計画した協力会社とのコミュニケーションを下期に延期したとあるが、期を挟んでの僅かな実施時期の違いである。これが未達と誤解され、そこに労力をむけることは再発防止の趣旨から外れるかもしれない。記載の必要はないか、あるいは表現を工夫してはどうか。(山口副委員長)

以 上

用語解説

事業概要