原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第28回 原子力安全検証委員会

 第28回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2023年度下期の進捗状況については、2024年5月29日にお知らせ済み。

1.日時 2024年6月3日(月)13時30分~16時40分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野うえの   友慈ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 公益財団法人原子力安全研究協会理事)
 
(委 員) 社外 遠藤えんどう   富美夫ふみお (元福井新聞社編集局長)  
  社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  社外 永田 ながた   やすし (早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○関西電力では、昨年度、高浜発電所1号機及び2号機の再稼動により原子力発電所7基運転体制を実現され、今年4月には定期検査を終えた高浜発電所4号機の原子炉起動により、新規制基準に合格した原子力発電所7基全てが同時に運転する状態となった。このような7基運転体制の実現は、再稼動の際はもとより、定期検査や日々の運営に当たっても、関係する皆様が十分な安全対策を講じてきた成果だと思う。
  • ○今年は、美浜発電所3号機事故から20年になる。関西電力では、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、再発防止策を講じるとともに、原子力安全文化醸成活動を推進し、さらには、福島第一原子力発電所事故を踏まえた自主的かつ継続的な安全性向上に取り組んできた。例えば、昨年度は、原子力発電の安全性向上の土台となる人財の確保・育成や組織風土改革のために新たな取組みを始め、また、今年4月には、発電所の安全に関する外部知見の活用の一環として、美浜発電所で国際原子力機関(IAEA)が行う安全な長期運転のための支援プログラムを受け入れるなどされている。
  • ○今後とも、事故の教訓を風化させることなく、引き続き「安全最優先」の理念の下、原子力発電所を運営してもらいたいと思う。
  • ○当委員会は、関西電力のこれらの取組みにつき、独立的な立場から検証し助言を行うことによって、原子力発電の安全の確保をより確実なものとすることを目的としており、本日は
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
    • ・当委員会委員の意見を踏まえた取組状況
    などについて、説明を受け、審議する予定である。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また、社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るよう、よろしくお願いする。
5.議事概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2023年度下期の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[トラブル発生防止対策]
  • ○想定外が起こりうることを認識し、美浜発電所3号機事故のような事象を再び発生させないよう、新しい目線も取り入れて、事故発生防止の継続的改善に取り組んでほしい。
    (小澤委員)
  • ○各取組みについては、QCストーリーに基づいて論理的に検討を進めるとともに、可能な限りKPI(Key Performance Indicator)を設定して検討を進めると良い。例えばDXの取組みについても、必要なものにKPIを設定すれば、効果や取組みの有効性も定量的に評価できる。
    (永田委員)
  • ○事故件数の要因分析について、重点指向がしやすくなるような分類を検討してはどうか。細かく分けすぎて件数が0件や1件になると、年度の変化が横ばいのように見えてしまい、対策の効果や新たな取組みの必要性などの分析が難しい。
    (永田委員)
  • ○各取組みについてPI(Performance Indicator)を用いることを検討してはどうか。
    米国NEIのレポート(NEI 20-04, "The Nexus Between Safety and Operational Performance in the U.S. Nuclear Industry")では、安全性と運転性能は独立ではなく、強い相関があり、米国のプラントの設備利用率が向上するとともに、計画外停止や被ばく、労働災害が減少したことが示されている。PI等をうまく活用し、安全性向上と運転性能向上の同時達成を目指してほしい。
    (山口副委員長)
  • ○各取組みについて数値化することは大切だが、それが行き過ぎると本質を見誤る可能性もある。数値に表れない状況変化や特殊性にも留意してほしい。
    (小澤委員)
  • ○事業本部によるマネジメントオブザベーションは、よい取組みであり、継続してほしい。
    (上野委員長)
  • ○マネジメントオブザベーション(管理職による現場観察)について、事業本部が全体を俯瞰し、他の発電所へ水平展開するといった事業本部の役割と現場をよく知って意見を出すという発電所の役割の両方が大事であり、バランスよく取り組むことが重要である。
    (山口副委員長)
  • ○技術力向上の教育などは、協力会社にとっては時間を取られるといった負担になる側面もあるので、実作業を行う協力会社の意見をよく聞きながら改善を図っていくべき。
    (大場委員)
  • ○地元としては、トラブル低減の取組みにおいて、技術伝承等の背景要因を深堀りし、取組みを進めていることは、心強くありがたい。
    (遠藤委員)
  • ○トラブルの原因分析・対策については相当程度の取組みが進められ、数字としても成果が示されているものと評価できる。今後の取組みのチェック&レビューにおいては、予兆的なものも敏感に受け止め、実効的な安全性向上に努めてもらいたい。
    (山口副委員長)
[現場安全性向上]
  • ○現場の安全対策の実施にあたっては、対策の実施に伴い発生する(可能性がある)新たな弊害に注意して取り組むべき。
    (大場委員)
【ロードマップ】
[安全文化評価]
  • ○高浜発電所の2023年度の安全文化評価において工程、予算、要員の評価が低い要因は、高浜発電所1、2号機の再稼動などに伴う繁忙期であったことが背景にあるとの分析だが、状況が変わっている2024年度のアンケート結果をフォローし、注視した方がよい。
    (永田委員)
  • ○トラブル減少といったプラントパフォーマンスが向上した一方で、技術力維持・向上について、「社内ルールの目的や本質の理解不足、リスク認知に課題がある。」などの声があることについては、重要な予兆の可能性として捉え、深堀りして評価いただくことを要望したい。関連する重点施策のうちの「教育・研修プログラムの見直し」については、その評価を踏まえて実効的な対策も検討してみてはどうか。
    (山口副委員長)
[外部機関からの改善提案への対応]
  • ○外部機関からの改善提案(原子力事業本部の発電所への関与に係る改善提案)については、現場の安全性を高めるための重要な提案であり、真摯に対応するべきである。
    (山口副委員長)
[魅力ある職場つくり]
  • ○「魅力ある職場つくり」には、社内の環境整備にとどまらず、原子力発電事業が社外からどのように見られているかを意識しつつ、従業員が誇りをもって働けるような環境改善にも取り組んでいくべき。
    (小澤委員)
  • ○「魅力ある職場つくり」は、組織に内在する課題を率直に従業員に示しており、幹部の意気込みを感じる良い取組みだと思う。安全性向上のためにも「社員のやる気」をあげることは重要であり、今後も継続して実施してほしい。
    (上野委員長)
[協力会社と一体になった取組み]
  • ○発電所では社員と協力会社が一体となって取り組んでいると思われるが、本日の説明では社員と協力会社の取組みを別々に実施しているような印象を受けた。例えば本部長からのメッセージなどを、社員と協力会社への共通の言葉で伝えることもあってよい。
    (大場委員)
[リスクコミュニケーション]
  • ○世間の関心が高い乾式貯蔵施設や能登半島地震に関連したコミュニケーション活動の取組みは、タイムリーで良いと思う。
    (上野委員長)
[その他]
  • ○事業本部オーバーサイトレビュー会議開催時期の遅延に対する改善提案に関連して、業務過多になっている状況を心配する。このような状況が続くことは望ましくないので、今一度対応を検討してほしい。
    (遠藤委員)

以 上

用語解説

事業概要