原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第30回 原子力安全検証委員会

 第30回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

1.日時 2025年6月2日(月) 13時30分~17時00分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野うえの   友慈ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 原子力発電環境整備機構理事長)
 
(委 員) 社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  社外 島嵜 しまさき   正行 まさゆき (福井放送顧問)  
  社外 永田 ながた   やすし (早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○本年2月18日、第7次エネルギー基本計画が閣議決定された。
    同計画では、「再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極めて重要となる。」とされるとともに、「安全性の確保は、エネルギー政策の大前提である。特に原子力については、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる必要がある。」、「原子力事業者を含む産業界は、産業界全体で一丸となった安全性追求が不可欠であり、規制充足に留まらず、自主的に不断に安全を追求するべく、安全マネジメント体制の改革、不断の安全向上を目指す組織文化の醸成に取り組む必要がある。」などとされている。
  • ○また、本月6日には、改正電気事業法が施行される。
    同法では、運転期間に最長60年という上限を設ける従来の枠組みを維持しつつ、原子力事業者から見て他律的な要素により停止していた期間については、この60年の運転期間のカウントから除外する制度が整備された。同制度の下では長期運転のための高経年化対策がより重要となると思われる。
  • ○関西電力では、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、再発防止策を講じられるとともに、これまでも、原子力発電の安全性向上のため、原子力安全文化醸成活動を推進され、さらに福島第一原子力発電所事故を踏まえ、安全を支える人財の確保・育成、高経年化対策、外部の知見の活用、地域とのコミュニケーションの充実など、規制の枠組みに留まることなく、自主的かつ継続的な安全性向上の取組みを行ってこられた。
  • ○申し上げるまでもなく、原子力発電の安全対策には終わりはなく、引き続き安全性をたゆまず向上させていただきたい。
  • ○当委員会は、関西電力のこれらの取組みにつき、独立的な立場から検証し助言を行うことによって、原子力発電の安全の確保をより確実なものとすることを目的としており、本日は
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
    などについて、説明を受け、審議する予定である。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また、社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るよう、よろしくお願いする。
5.審議概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2024年度下期の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[法令・ルールの順守]
  • ○法令手続き不備として、上期に続いて事例が報告されているが、再発防止のための仕組みづくりを検討してはどうか。フールプルーフの理論も参考にしてもらいたい。
    (永田委員)
  • ○業務引継ぎ不足については、法令手続き不備だけではなく安全確保の業務にも通じる問題であり、しっかり取り組んでもらいたい。
    (上野委員長)
  • ○法令手続き不備事象については、問題点が分かった時のプロセスを再発防止の取組みに盛り込むことが有効と思う。
    (山口副委員長)
  • ○事象分析において、発生時点での原子力規制や関西電力の状況や他の事案との前後関係等が見えるようにもう少し工夫してほしい。それにより、原因や問題点がより明確になると思う。
    (大場委員)
  • ○法令手続き不備事象については、自主的に調査して発見した事例もあることに安心感を持った。前回の委員会で上野委員長からの「なぜこの法令があるのかを理解することは重要」という指摘に対して、引き続き取り組んでもらいたい。
    (島嵜委員)
[DXの活用]
  • ○DXの活用は事業の効率化に加え安全や品質の向上の両立が重要である。発電電力量増大、コスト低減、効率化を目指す取組みとして、DXを使った現場の工夫で解決していくといったボトムアップ的なアプローチに加え、安全と品質の向上を目的としたDX活用の全体を俯瞰したトップダウンの取組みを加えると、バランスの良い取組みになると思う。
    (山口副委員長)
  • ○DX適用による原子力発電所の目指す将来像の説明に「社会的許容性を考慮」とあるが、実際には非常に難しい課題である。
    例えば、原子力発電所の社会的許容性のためには、関西電力だけではなく、日本全体や地域全体で、お互いにリスペクトしながら取り組んでいくのが、遠いようで一番の近道だと思うが、なかなか難しい問題である。
    (小澤委員)
  • ○3Dマップについて、福島第一原子力発電所では過酷な作業環境であり現場に行くことが困難であることを踏まえ、より信頼性の高いシステムの導入がなされていると聞いている。参考にしてみてはどうかと思う。
    (大場委員)
  • ○被ばく低減や労働災害防止を目的とした3Dマップの構築は進んだ取組みと感じており、安全性向上の観点で他の分野でも活用できる技術として期待しているため、引き続き情報発信してほしい。
    (島嵜委員)
[人財育成]
  • ○人財育成に対する取組みの評価について、定量的な評価を工夫してはどうか。主観的なものでもよいので定量評価を行い、レーダーチャートなどを使って分析すれば、2024年度の評価を踏まえて2025年度に重点的に取り組むべき事項を設定することができる。
    (永田委員)
  • ○ナレッジマネジメントにおいては、発電所を長期に運用していくにあたってどのようなナレッジを継承していくべきかという観点で、計画を立てる必要があると思った。長期運転に伴って喪失するナレッジとして、エンジニアの世代交代により喪失するナレッジやデジタル化による部品供給の停止等があげられると思う。原子力分野を含むインフラ関係の社会共通の問題であり、業界大で情報共有することも有効と思う。
    (山口副委員長)
  • ○人財育成におけるリーダーシップ育成は非常に難しい課題であり、様々な工夫をして取り組んでほしい。リーダーの見極めは、やってみないとわからないところもあり、どの企業にとっても非常に難しい課題である。
    (小澤委員)
  • ○人財育成における労働人口減等の外部要因に対する対応については、協力会社も含む多重構造も考慮し、工夫して対策してほしい。
    (島嵜委員)
  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策について、研修の再整備として育成段階毎に期待事項を設定して教育するのは有効と思う。世代交代があるなか、美浜発電所3号機事故の教訓を風化させないためにも、研修の再整備を進めてほしい。
    (上野委員長)
[マネジメント・オブザベーション]
  • ○事業本部マネジメント・オブザベーションについては、広い視点で捉えて取り組んでほしい。経営層や現場の中間管理層と現場スタッフとの意思疎通に課題があるとの指摘を受けて、事業本部管理職が現場を訪問し、現場とコミュニケーションをとって風通しをよくすることが主旨であったと理解している。また、マネジメント・オブザベーションを「現場観察」と説明すると、経営層と現場との連携という本来の目的から乖離して細かいところに目が行ってしまうのが心配である。
    (山口副委員長)
  • ○マネジメント・オブザベーションについては、本来の主旨に立ち返って、取り組んでほしい。
    「結果」ではなく、「ふるまい」を観察することにより、トラブルの芽を摘んでいってもらいたい。観察時間を長くすることも有効と思う。
    (大場委員)
【ロードマップ】
[安全文化評価]
  • ○安全文化評価のアンケート等の分析について、ミドル層と若年層の回答を比較し考察することも有効だと思う。
    (永田委員)
  • ○安全文化評価のアンケートにおける気がかり事項については、対応策を検討されているので、その効果測定をしていただきたい。
    (上野委員長)
  • ○安全文化評価のアンケートや監査では、注視すべき意見もあるため、引き続き、現場の生の声を丁寧に拾い続けて欲しい。
    (上野委員長)
[自主的な原子力の安全性向上(ロードマップ)活動状況]
  • ○これまでの取組みが高い次元で昇華されており、一生懸命取り組んでいただいたことに感謝と敬意を感じている。現在、運転している原子力発電所は高いパフォーマンスをあげており、社会からの信頼を少しずつ獲得している表れだと思う。安全文化の本質である「安全最優先」、「問いかける姿勢」、「学ぶ姿勢」が確立してきたと考えている。今後も、自己満足に陥ることなく、自らの立ち位置と国内外のエクセレンスとのギャップを見定め、それを埋めていく努力を継続していただきたい。
    (山口副委員長)
  • ○品質管理の基本としてパレート図を作って整理するのはとてもいいことであるが、パレート図による分析の適否や項目についても考えて分析してほしい。内容に応じた重要度の評価点をつけて、重点的に取り組むべき課題を考えていくことも有効だと思う。
    (永田委員)
  • ○本質安全化の取組みについては、多数の要望が出されること自体、問題提起をしやすい風土になっていると思われ、また、その8割について採用され、不採用のものについても理由を説明されるなどされており、そのほか、マネジメント・オブザベーション、事業本部オーバーサイトレビュー会議等の様々なツールを、安全性向上などのために活かされており、大変素晴らしいことだと思う。
    (上野委員長)
  • ○ロードマップ見直し後も、安全性向上のための取組みを継続する意味で本質的に同じと理解した。引き続き、自信を持って取り組むとともに関西電力で上手くいった取組みについては、外部機関に発信して欲しい。
    (小澤委員)
  • ○社会・外部機関との連携のうち、「社会との連携」として取り組みたい内容や目指す方向性がわかりにくい。説明を加えた方がよい。
    (大場委員)
[自主的な原子力の安全性向上(ロードマップ)報告書]
  • ○報告書の文章や掲載する写真については、伝えたいメッセージを突き詰めて考えてほしい。
    (大場委員)
[トラブル事象]
  • ○重篤な労災は絶対に防ぐべきであり、その可能性のあった「高浜発電所3号機原子炉キャビティへの協力会社作業員の落水」については、要因分析と再発防止対策をしっかり実施してほしい。
    (山口副委員長)
  • ○説明があったトラブル事象については、いずれも基本的なことができていない古典的な事象と感じた。現場で携わっている人の危険性に対する認識や関心が時代とともに変わってきているかもしれないといった様々な要素を考慮して再発防止に取り組んでほしい。
    (島嵜委員)
  • ○「大飯3号機排気筒ガスモニタの一時的な指示上昇」について、役職者が必要な対応を認識していながら、担当者へのフォローができなかったということは、より重視すべきである。深掘りした方がよい。
    (大場委員)

以 上

用語解説

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