原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第29回 原子力安全検証委員会

 第29回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2024年度上期の進捗状況については、2024年11月28日にお知らせ済み。

1.日時 2024年12月3日(火) 13時30分~17時00分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野うえの   友慈ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 原子力発電環境整備機構理事長)
 
(委 員) 社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  社外 島嵜 しまさき   正行 まさゆき (福井放送顧問)  
  社外 永田 ながた   やすし (早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○関西電力では、昨年、高浜発電所1号機及び2号機の再稼働により、原子力発電所7基運転・4基廃止措置体制を実現され、そのこともあって、先日資源エネルギー庁から公表された2023年度の電源構成では、原子力発電の占める割合は8.5%となり、2022年度から増加し、本年10月には、東北電力女川原子力発電所2号機も再稼働された。
  • ○一方、本年11月には高浜発電所1号機が営業運転開始から50年を超え、また、高浜発電所2号機や美浜発電所3号機についても、営業運転開始から50年近くが経過した。このように長期にわたる原子力発電所の運営は、関係する皆様が安全最優先の理念のもと、安全・安定運転に努めてこられた成果だと思う。
  • ○申し上げるまでもなく、このような長期運転のための高経年化対策を始めとする原子力発電所の安全対策には終わりはなく、安全性をたゆまず向上させていく必要がある。そのためには、これまで皆様が培われた知識・経験に加え、新たな知見や状況をも踏まえた取組みをする必要があると思われるし、そのような取組みをしていることを広く社会の皆様にご理解いただき、安心していただくことも必要だと思う。
  • ○関西電力では、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、再発防止策を講じるとともに、原子力安全文化醸成活動を推進し、さらに福島第一原子力発電所事故を踏まえた自主的かつ継続的な安全性向上の取組みを行っている。
  • ○当委員会は、関西電力のこれらの取組みにつき、独立的な立場から検証し助言を行うことによって、原子力発電の安全の確保をより確実なものとすることを目的としており、本日は
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
    などについて、説明を受け、審議する予定である。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また、社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るよう、よろしくお願いする。
5.審議概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2024年度上期の取組状況について報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[法令・ルールの順守]
  • ○法令手続き不備の事例を踏まえ、規制の本質を担当者に理解してもらうことが重要。
    規制の本質を理解していなければ、資格取消しなどの大きな法令違反につながり、行政や地域からも信頼を失うことになる可能性もある。法的要請の理由や違反した場合にどうなるかなどの本質的な法令理解を深めることが大切である。
    (上野委員長)
  • ○発電室当直業務の休憩時間の問題について、管理職には業務状況・繁忙感や休憩の取得状況に目を配ることを期待したい。休憩取得は運転員の身体や精神の保護にとって重要であり、休憩が十分に取れない状況が改善されなければ、安全確保のための業務に影響を及ぼすリスクにもつながる。
    (上野委員長)
  • ○安全上重要な問題に気付き、対処することのできるリスク認知力を発揮できるようなルールの適正化を検討してほしい。
    現状はルールが複雑になっているため、新しく業務に従事する人にとってルールの本質がわかりにくくなっていることが、今回の法令手続き不備として顕在化しているのではないかと感じた。今後のヒアリング調査等により現状把握を行い、これまでのような対症療法ではなく、重要な問題にフォーカスしたルールや仕組みの適正化の取組みを検討していただきたい。
    (山口副委員長)
  • ○今回の法令手続き不備の要因の一つは、規制体系の複雑さにもあると考えられるので、社内ルールをさらに加えてよくなるものではないと思う。全体としてパフォーマンス向上につながるルールの構築を目指してほしい。
    (小澤委員)
  • ○法令手続き不備の問題については、ヒューマンファクターの観点を踏まえた再発防止策が大切。今回の事例がラプス(認知しているが失念した)に分類されるエラーなら、業務プロセスで確実に止まるという対策がポイントだと思う。
    (白銀委員)
[人財育成]
  • ○人財育成においては、育成される人のインセンティブやモチベーション向上につながるように、わかりやすい目標を示す工夫をしてほしい。一般的に、育成を企画する側の意図や目標は、育成される側からは見えにくい。
    (山口副委員長)
  • ○人財育成の取組みについては、さらなる工夫を期待したい。
    機械が得意な作業と人だからできる作業の分類を行うべき。人材の流動化が進むことも踏まえながら、人「財」育成をどう行うべきか、もっと貪欲な検討を期待する。関西電力の原子力部門で働く魅力、やりがい、メリット等が伝わる取組みを進めてほしい。
    (大場委員)
  • ○人財育成における力量の数値化やグラフ化し推移を追う等の工夫をしてみることも有効。
    (永田委員)
  • ○美浜発電所3号機事故研修の整理・充実にあたっては、再発防止対策29項目に福島第一原子力発電所事故等の教訓も取り入れ、高いレベルでの安全への取組みに発展させる観点で整理し、次世代に効果的に伝えられる工夫に取り組んでほしい。
    (山口副委員長)
  • ○原子力発電所の事故には福島第一原子力発電所事故のように現在も進行形の社会問題やトピックスが生じるものもある。事故が発生したときに予想される報道も想定しながら、どういった研修が必要なのかを検討してほしい。
    (大場委員)
  • ○過去の事故を自分事として捉えることが重要であり、美浜発電所3号機事故当時の新聞を閲覧させるなど、事故当時の状況を実感できる機会をつくることも有効と思う。
    美浜発電所を訪問した際に、2号機の蒸気発生器細管漏洩事故の報道記事が展示されており、当時の様子を知る機会となった。
    (上野委員長)
[組織風土]
  • ○世代間ギャップを踏まえた受け止め側の目線を意識し、若い世代に伝わることを意識してコミュニケーションをした方がよい。
    (島嵜委員)
  • ○発電室当直業務の休憩時間の問題に関連して、断っても良い、しなくても良い、さらにはそうした行為が認められていると感じられる風土の醸成に向けた工夫ある取組みも検討してほしい。
    (大場委員)
【ロードマップ】
[発電所支援]
  • ○事業本部MOにて確認した各発電所の困りごとについては優先順位をつけて対応していくと思うが、例えば有効性や実現性などで評点を付け、優先順位を見える化することも一つの方法である。
    (永田委員)
  • ○労働災害が減らすことができた要因分析を行い、今後のMOの取組みに反映してはどうか。
    新規制基準対応のための同時進行の大規模工事が減ったことも大きな要因の一つと思われるが、その中で事業本部MO、発電所MOの取組みの有効性を評価した上で、今後の取組みに反映してはどうか。
    (山口副委員長)
  • ○本質安全化や事業本部MOで出された提案のうち採用しなかったものについても、提案者に丁寧に説明されていることは良い取組みだと思うので、継続していただきたい。
    (上野委員長)
  • ○現在取り組まれている「魅力ある職場つくりプロジェクト」や職員の情報共有ツールである「みんなの変革広場」の活用は、安全の基盤の一つである要員のモチベーション向上に有効と思うので、継続してもらいたい。
    (上野委員長)
[自主的な原子力の安全性向上(ロードマップ)報告書]
  • ○ロードマップの記載については、ロードマップ5本柱の「コミュニケーションの充実」に関して、他の柱と同様に重要であるとの認識をもって取り組んでいる旨が伝わる工夫が必要である。
    (大場委員)
  • ○ロードマップについては、ポイントをコンパクトに書いてわかりやすくする工夫を続けてほしい。例えば、効果については、取組みにより良くなったことを記載すべきである。
    (山口副委員長)
  • ○地域住民の皆さまの関心を踏まえた内容として、「能登半島地震を踏まえた対応」をとりあげた理由の説明があった方がよい。様々な地域住民等の関心の高い事項の中で、能登地震を踏まえた地盤隆起に対応する訓練を取り上げた論理的な考え方が説明されているとわかりやすい。
    (山口副委員長)
  • ○地盤隆起の訓練について取り上げて説明されたことはよかったと思う。ただし、「想定以上の事象が発生した場合の対策の実効性が確認できた」という表現は、地盤隆起のみについて想定以上を確認したと言いたいのであれば、誤解を招きかねず、やや書きすぎと感じた。
    (島嵜委員)
  • ○ロードマップの説明に使用する写真については、取組内容をわかりやすく示す写真を採用する方がよい。「安全性向上に関する基盤整備」を説明する写真はわかりにくいと感じた。
    (永田委員)
【その他】
[トラブル対応]
  • ○新たな設備を採用する際には機能集約を進めることも多いと思われるが、共通要因でシステムに大きな障害が発生することもあるため気を付けてほしい。
    放送と発電所のシステムは24時間止めることができないという点で似ている。放送もデジタル化を進める際に機能集約を進めたが、一つの設備のトラブルの影響が広範囲に及ぶなど、当初想定してなかった事象を経験した。
    (島嵜委員)
  • ○美浜発電所3号機の海水管漏洩のトラブルを教訓とし、元の設計を変更する場合の設計検証の重要性を再認識すべきである。
    (島嵜委員)
  • ○美浜発電所3号機の海水管漏洩のトラブルについては、その事象の安全重要度を関係者が共有し、適切に対応することが重要である。リスクインフォームド・パフォーマンスベースが国際的に確立された考え方である。事業者として、実効性ある安全確保を達成すべく、事業者の考え方や技術評価について発信してほしい。
    (山口副委員長)
[DXの活用]
  • ○DXで効率化する際には、これまでの慣れたやり方とシステム化による効率的なやり方の両方を考察し、ミスの発生しにくいシステムとしていくことが大切である。
    (大場委員)
  • ○DXの活用においては、標準化とビックデータの活用がポイント。7基のプラントを保有する関西電力はビッグデータの活用に有利であり、韓国のベンチマーク結果も有効活用して、良い取組みを進めてほしい。
    (山口副委員長)
[広報]
  • ○美浜発電所3号機の海水管漏洩のトラブルの情報提供にあたっては、「当直員が巡視点検で兆候を発見した」などの点についてももう少し丁寧に情報発信した方が一般の方々の安心にもつながるのではないか。
    (上野委員長)
  • ○これからの時代、原子力発電に係る情報について、わかりやすくホームページで説明しておくことがますます重要となると思う。
    「原子力発電」についての教育も以前とはかなり違う状況も生まれている。さまざまな立場や視点にあわせた情報をホームページに掲載する工夫が求められている。
    (大場委員)

以 上

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