原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第23回 原子力安全検証委員会

 第23回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2021年度上期の進捗状況については、2021年11月26日にお知らせ済み。

1.日 時 2021年12月1日(水)13時00分~16時00分
2.場 所 関西電力株式会社 原子力事業本部(福井県美浜町)
関西電力株式会社 東京支社(千代田区内幸町)
 ※ビデオ会議システムにより開催
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 わたなべ   一弘 かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 やまぐち   あきら (東京大学教授)  
(委 員) 【社 外】 荒木 あらき   孝治 たかはる (関西大学教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   典子 のりこ (慶應義塾大学特任教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   富美夫 ふみお (元福井新聞社編集局長)  
  【社 外】 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  関西電力送配電
株式会社
取締役社長
土井 どい   義宏 よしひろ
  取締役
代表執行役
副社長
彌園 みその   豊一 とよかず
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • 〇11月に入り、新型コロナウイルスの国内感染者数は減少を続け、第5波感染流行の大きな波は収束しつつあると言われているが、他方、海外の状況に目を向けると、むしろ感染者数は増加する傾向にある上、新たな変異株が確認されるなど、その我が国への影響が懸念され、今後の我が国の状況も、決して予断や楽観を許さないものであると思う。
  • 〇この機会に、新型コロナウイルスの流行という、平常とは異なる厳しい状況下においても、強い使命感を支えに、日夜業務に取り組んでいただいた医療関係者はもとより、国民生活の基盤を支える電力、ガス、流通など社会インフラ事業に携われる方々に対し、衷心から感謝の意を表すとともに、僭越ながら、改めて、その可能性を直ちに否定できない再度の拡大に対する万全の備えをお願いする次第である。
  • 〇さて、関西電力におかれては、本年7月、美浜発電所3号機の本格運転を再開されている。この3号機の再稼動は、新規制基準施行後、全国で初めての40年を超えたプラントの稼動であり、これに携われた関西電力社員をはじめとする関係者の皆様のご労苦は一方ならぬものであったと思う。
  • 〇しかし、ここで忘れてはならないのは、美浜発電所3号機は、2004年8月に重大な死傷事故を起こし、その再発防止対策の十全の実施、その実施状況の検証のため、当委員会の前身である原子力保全改革検証委員会が設置されたことである。
  • 〇もとより、原子力発電所の運営に当たっては、これに対する関西電力の安全性向上に資する取組みとこれを支える安全最優先の姿勢に対する理解と信頼の獲得、そしてこの理解と信頼を維持・伸長するための弛まぬ努力を積み重ねていくことこそが、その要諦である。
  • 〇どうか、この再稼動を契機に、改めて、同事故への反省と教訓を基に蓄積され、実行されてきた様々な取組みに思いを致し、日々の業務に携われんことをお願いする次第である。
  • 〇さて、本日は、2名の新たな委員をお迎えしての初めての委員会になる。
  • 〇改めて当委員会の設置目的を申し上げると、先に述べた通り、当委員会は、美浜発電所3号機事故を契機として
    • ・社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策を検証すること
    • ・原子力安全文化醸成活動、そして福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについて助言を行いこれら継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすること
    にある。
  • 〇原子力安全への取組みに後退や足踏みがあってはならず、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、「関西電力における原子力発電の安全性向上の取組み」を、社外の眼で検証・確認するという当委員会の役割は、今後とも変わりなく求められていくものと思う。
  • 〇本日は、検証テーマに基づき、
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況及び監査結果
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    について検証・審議する。
  • 〇今回は、当委員会発足後初めて、委員が福井県美浜町の原子力事業本部を訪問している。残念ながら私は都合により、東京からリモートによる参加となるが、折角の機会なので、原子力部門の皆様におかれては、委員の皆様と、安全性向上に資するための活発な議論をしていただきたいと思う。
  • 〇委員の皆様には、従前同様、ご専門分野の眼から、また社会一般の眼から、ご検証頂き、忌憚のないご意見、ご助言を賜るようお願いする。
5.議事概要

5-1.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2021年度上期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>

5-2.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>

【ロードマップ】
[報告書]

  • 〇今回の報告書でも美浜3号機の再稼動や新型コロナウイルス影響の記載で一部対応いただいているところであるが、報告書作成に際し、お願いしたいことは、各種取組みにおいて、実施した結果がどうであったか、安全に影響がなかったかをしっかりと伝えていくことが重要であり、これからも留意いただきたい。(山口副委員長)
  • 〇この報告書の目的は、さらに安全を高めていくこと、加えて、ステークホルダーと関西電力との情報共有を図ること。もう少し幅広い層に情報が伝わるようにすべきであり、専門用語、英語略称等も含め、分かりにくいことを分かり易く説明する技量・スキルをさらに磨いていく必要がある。(遠藤富美夫委員)
  • 〇40年超運転プラントを安全性確保に尽力のうえ再稼動したことは、原子力業界や原子力政策全体において非常に重要なこと。報告書では、ステークホルダーの関心事に対応したと記載されているが、対応結果だけでなく、ステークホルダーが「通常プラントの再稼動と異なり、何を不安に思い、何に関心を持っていたか」を情報として集積し、共有することが重要。(遠藤典子委員)
  • 〇報告書を誰に向けて書いているのかについて改めて議論する必要がある。その対象が一般の方なのか、それとも専門家なのかによって、読み手を意識した資料作りを心掛けて欲しい。(荒木委員)
  • 〇報告書の伝え方が本当にこれで最善なのかについては議論の余地がある。各種取組みの結果を伝えることが大切で、それはできているように感じるが、全般的に読み手の安心に繋がる報告書になっているかについては、まだ改善の余地がある。(山口副委員長)
  • 〇RCPのシャットダウンシールについては、一般の方には非常に分かりづらい。例えば、規制基準ではここまで求められており、さらに安全になるように自主的に取り組んでいるということを、一般の方にも伝わるような資料にすることが必要。(渡邉委員長)

[美浜3号機再稼動、40年超運転]

  • 〇美浜3号機の再稼動が安全に実現されたことに敬意を表したい。その際、発電所OBが集中的な安全確認に参加して対応したとのことだが、原子力の施設は40年、60年と長期間にわたって使われるものであり、過去の経験・知見を発電所OBを通して活かしていることは、大変良いこと。(山口副委員長)
  • 〇10年間停止していた美浜3号機を再稼動させた際に出た、技術的な課題や技術伝承の課題を記録として残して欲しい。米国では60年超運転も行われており、美浜3号機の再稼動に係る技術的な記録は、将来に向けて役立つデータベースとなり得る。(小澤委員)
  • 〇40年超運転について議論されているが、そもそも40年ということに技術的に大きな意味はない。全く設備更新せずに40年超運転を実施しているという誤解を解消し、「40年超運転プラントは古い」という見方が正しくないと伝わるよう説明していく必要がある。(小澤委員)

[コミュニケーション]

  • 〇世間では、新型コロナウイルスの流行によりWEB会議が主流となっているが、顔を合わせてコミュニケーションを図ることが、改めて大切と実感している。大学では、新入生がこの1年間学校に行っていないということや、会社員でも社員同士であまり顔を合わせないということもあると聞く。これにより、コミュニケーションギャップが生じないかと危惧している。是非、意思疎通を確実に実施してもらいたい。(小澤委員)

[監査結果]

  • 〇監査報告において、音声ガイド付きe-ラーニングの作成を良好事例として取り上げていた。ダイバーシティは、今後、ますます社会で求められるものであり、視覚に障害のある方の声をきちんと反映し環境整備したこと、また良好事例として監査で取り上げたことは、地道ながら非常に良いこと。今後も、このような取組みを継続してほしい。(山口副委員長)

【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[再発防止対策の取組み]

  • 〇美浜3号機事故から年月が経過するとともにロードマップに掲げる安全の5つの柱が定着してきている。(山口副委員長)
  • 〇美浜3号機事故の再発防止対策は一定の定着が見られることから、個別各論の議論にとどまることなく、会社全体としてどのような効果があり、どのような文化が定着しているのか、ありたい姿に対してどのレベルまで到達しているのか、ギャップをどのように改善するかを、より広義にとらえて議論していく段階に来たのではないか。(山口副委員長)
  • 〇大切なことは、安全文化、安全性についての考え方に関する議論。すでに実施されている原子力事業本部長と現場第一線職場との対話のようにフリーディスカッションできる場もあった方がよいかも知れない。(小澤委員)

[設備維持・管理]

  • 〇大飯3号機の循環水管ベント弁は狭隘な場所にあったため視認しづらかったとのことだが、この反省をデータベース化するなどして、将来に活かしてほしい。(小澤委員)
  • 〇美浜3号機再稼動時の総点検、集中的な安全確認の点検結果において、気づき事項への処置を適切に実施したとあるが、大切なのは、このようなことが発生しないように再発防止に取り組むこと。(荒木委員)
  • 〇発生したトラブル等への個別の対策については、かなり細かく対応・報告しているが、より広義の議論をすることが必要。また、発生した問題についてもう少し議論すべき点を絞ったほうがよい。(渡邉委員長)

以 上

用語解説

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