原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第16回 原子力安全検証委員会

 第16回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」等について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※平成29年度下期の進捗状況については、平成30年5月30日にお知らせ済み。

1.日 時
平成30年6月1日(金)13時30分~16時30分
2.場 所
関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 一弘 わたなべ かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 彰 やまぐち あきら (東京大学教授)
(委 員)   【社 外】 荒木 孝治 あらき たかはる (関西大学教授)  
【社 外】 小澤 守 おざわ まもる (関西大学教授)  
【社 外】  田中 嘉久 たなか よしひさ (元福井県中小企業団体中央会専務理事)
【社 外】 松本 真由美 まつもと まゆみ (東京大学客員准教授)  
取締役副社長
執行役員
土井 義宏 どい よしひろ
常務執行役員 月山 將 つきやま すすむ 〔欠席〕
(幹 事) 執行役員
経営監査室長
小槻 百典 おおづく ももすけ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • ○前回の検証委員会の後、大飯発電所1,2号機を廃炉される方針が公表され、関西電力が保有する原子力発電所のすべての原子炉について、今後の方向性が確定したと理解している。具体的には、再稼働したもの、高浜3,4号機、大飯3,4号機、再稼働に向け安全対策工事等を進めているもの、美浜3号機、高浜1,2号機、廃炉するもの、美浜1,2号機、大飯1,2号機の3種類に分かれ、運営及び作業が進められていくことになる。
  • ○電気事業を進めるにあたっては、地域社会からのご理解ご協力をいただくことが何よりも重要であることは改めて申すまでもないが、原子力発電に対する社会の眼には、依然として厳しいものがある。このため、技術的な安全を高めるための不断の努力はもちろんであるが、その内容を社会に十分に理解いただけるよう努めることも不可欠だと思っている。関西電力はこのことにも留意しながら事業を進めていかなければならない。
  • ○昨年11月、新委員をお迎えして初めて検証委員会を開催し、様々なご意見をいただいたが、今までになかった新しい視点からのご意見もあり、関西電力がこうした新たな気づきを踏まえ、さらなる安全の向上に取り組むことは極めて有益であると思う。
    本日は検証のテーマ「原子力発電の安全向上に向けた取組状況」に基づき、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」「当社ロードマップの取組状況」「検証計画」等を審議する。委員におかれては、ご専門の分野の眼から、また、社会一般の眼からご覧いただき、活発、忌憚のないご意見、ご助言を賜るようお願いする。
  • ○最後に、本日の検証委員会における審議を踏まえ、関西電力における原子力発電の安全性向上活動がより一層改善され、社会の理解が深められることを期待し、併せてわが国における原子力に対する理解の向上に資することも心から願う次第である。
5.議事概要

5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況および監査結果
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について、原子力事業本部から、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>

(自律的取組みと良好事例)

  • ○原子力事業本部のルール、それを守るとともに工夫をしている発電所の自律的取組み、また、監査から出てきた良好事例やさらなる改善のための提案、この3者の取組みの関係や、PDCAや水平展開の実施状況がわかりにくいので説明してほしい。(渡邉委員長)

(監査のあり方)

  • ○新規制基準対応工事の増加という普段と違う状況にあるということを、きちんと現場で把握し理解をして、「環境変化等に対するリスクの抽出、対策の検討が実施されているか。」等のTBM参加時の確認項目を考えだされたことが重要なのではないか。TBMやKY活動は、しばしばルーチン化してしまうものだが、日常的ではない環境の変化や普段と違う状況を、きちんと感じ取れるということは、自律的に仕組みが働いている一つの証左だと思うので、そういう点を監査ではしっかり評価してほしい。(山口副委員長)

(リスク感受性向上教育)

  • ○美浜3号機事故の再発防止対策として、直接的な対策と根本的な対策とがあると思うが、2次系配管の減肉の管理、立入の問題等、直接的な対策はしっかりやられている。
    一方、様々な重大な影響を及ぼす事象を事前に防ぐために根本的な対策として、リスクに対する感受性を向上させるための教育を、何をどういう考え方でやるのかということが、まだ発展途上である。今後はその部分を重点化して充実してほしい。(山口副委員長)

(リスクアセスメント)

  • ○「リスクアセスメントにおけるリスクの更なる具体化」という監査からの「更なる改善の提案」にあるとおり、労働災害で何を防ぐのか、今日の注意すべき点は何かを明確にして、それに至る過程を具体化するということは、KYにおける非常に重要なポイントである。それぞれの現場の状況に合わせて具体化する努力は、有効性を高めるための非常に良い活動であると思う。(山口副委員長)
  • ○大飯発電所品質保証室で写真を活用したエリアマップでは、注意箇所として、転倒、墜落、落下、火災、飛来落下があるような可能性のある場所を明示的に示して注意喚起をしている。リスクを具体化して、実際の作業する方に注意を喚起するという意味で有効な取組みである。(山口副委員長)
  • ○一度、認識し、対策できたと思ったリスクについても、追加の工事等で現場に変化があるので、定期的に全てのリスクを見直すことが必要である。(松本委員)

(取組みの評価)

  • ○「美浜発電所3号機事故再発防止対策は全ての実施項目において、設定した活動を達成」と表現してしまうと、非日常的な業務で新たな問題も出るかもしれないので、「全て」は避けた方が良い。(小澤委員)
  • ○PDCAのサイクルが回っている限り、要改善が「なし」というのはありえない。「なし」といってしまうと、完璧であると評価していると受け取られる。完璧だと思い始めると、組織はダメになる。(荒木委員)

(良好事例)

  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策の監査において、好事例や自主的な取組みを取り上げていることは、現場のモチベーション向上につながると思う。今後も積極的に取り上げ、表彰制度なども組み合わせ、こうした取組みの推進を図っていただきたい。(田中委員)

(地元とのコミュニケーション)

  • ○地元とのコミュニケーションの目標値に対して実績値が上回っていることは、良い結果だと思うが、指数の枠組みや目標値設定の考え方等に関して、詳しく説明してほしい。(松本委員)
  • ○リスクコミュニケーションに関する数字が15万幾らとインフレの気がするので、5段階ぐらいに分けて、表現し直すというのが良いのではないか。(荒木委員)

5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について経営企画室から、また、「高浜発電所2号機クレーン事故再発防止対策の取組状況」「原子力部門の安全文化評価実施結果」について原子力事業本部から、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>

(ロードマップ報告書の改善)

  • ○ロードマップの報告書はより分かりやすく改善されたと思う。様々な意見を聞きながら、さらに努力してほしい。(渡邉委員長)

(監査結果)

  • ○ロードマップに基づく取組状況の監査は、ありたい姿をベースに非常に体系的にもれなく項目が監査できるようになっている。しっかりチェックできる仕組みができ上がったと思う。(山口副委員長)

(教育の効果把握)

  • ○現場の人に対してeラーニングが最も良いのか、疑問に思っている。面と向かって話をする等、手取り足取りやらないといけないのではないか。
    先ずはeラーニングの結果、効果があるのか等、実施側が分析、確認しているかについて監査の対象にすべきではないかと思う。(小澤委員)

(防災訓練)

  • ○緊急時の対応能力を高めていくためには、防災訓練が重要である。原子力災害の重大性、特殊性を十分に踏まえ、いろいろな想定を織り込んで、より一層実践に役立つよう実施してほしい。(田中委員)

(クレーン事故対策)

  • ○PDCAを何度も回して対策を打っているにもかかわらず、労働災害が発生しているのは、他の部門と比べて原子力発電所の特有の問題なのか、工事が増えた中での問題なのか、といった根本的な所まで分析して、対策を考える必要がある。(渡邉委員長)
  • ○重大な労働災害が発生しているので様々な対策を取っている。あわせて、非常に多忙感があるという現場の悩みが伝わってきた。いかに現場が安全文化を保って取組めるかを考えると、再発防止対策の取組みを最適化する必要があるのではないか。そのために再発防止対策で発見した問題の安全上の重要度、影響度、対策の効果の分析をやるべきではないか。その上で効果的な対策に重点化してしっかり取組むという再発防止対策全体を最適化する。そうやって、問題を同時に解決する方法を探っていかなければいけない。(山口副委員長)
  • ○一般的には労働災害の件数がここ20年ほど増えている。若年労働者と熟年労働者との意識ギャップ、経営サイドと現場サイドの考えのギャップがあるといわれており、関西電力はこれらの乖離がないように丁寧に対応してほしい。(小澤委員)
  • ○一般の労働災害に関して、医療分野のヒヤリハットの分析をみると、若い人だけでなく、ベテランも起こしており、家庭の問題等で集中力が欠け事故になることも多い。容易なことではないが、そういった点まで踏まえた工夫をしないと減らない気がする。(小澤委員)

(安全文化)

  • ○重点施策の方向性について、文化面の課題をしっかり書いておく必要があるのではないか。実際にやることは変わらないかもしれないが、次回以降の安全文化評価では、何のためにこの重点施策を実施するのかということがわかるよう、安全文化に対する会社の考え(方針・方向性)を書き込む工夫がいるのではないか。(山口副委員長)

(協力会社との意思疎通)

  • ○協力会社アンケートによって、協力会社の視点から、関西電力が気づかないことを掘り起こすことは、有効ではないかと思う。記名、無記名を問わず、社内も含め、様々な視点からの意見が自由に提出され、取り上げられる体制を整え、強化していただきたい。(田中委員)
  • ○協力会社の方に不適切、不親切な対応をしているのが、もし特定の数名程度であれば、様々な取組みと並行しつつ、上長が対象者に対して直接、理解させることも考えられるのではないか。(松本委員)
  • ○協力会社との意思疎通について、実際に協力会社へ聞き取った結果、コミュニケーションのやり方に問題があったのか等、どのような問題点があったのか、また、その対策として、例えば複数の人が立ち会ってチェックしている等、どのような工夫をされているのか、報告してほしい。(渡邉委員長)
  • ○協力会社とのコミュニケーションの問題は根強く残っており、だんだん経年的に悪くなっている。特に、コミュニケーションの問題はすごく重要だと思うので、その辺りをきちんと分析して対処する必要がある。是非やってほしい。(荒木委員)

(健康の維持・管理)

  • ○社会に重大な影響を与える可能性があり、責任重大な原子力という特別なことを扱っている方々の心のケアの対策をしっかりやってほしい。(田中委員)

(技術伝承)

  • ○発電所では、今後、大量のベテランの退職者が発生することは分かったが、技術伝承に関する具体的なアクションプランを詳しく説明してほしい。(松本委員)

5-3.原子力安全検証委員からいただいたご意見を踏まえた取組状況
原子力安全検証委員からいただいたご意見に対する取組状況について報告し、審議・了承。

<報告内容等>

5-4.平成30年度検証計画(案)について
平成30年度の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。

検証テーマ 検証の視点
原子力発電の安全性向上に向けた取組状況

原子力の安全性向上への取組みが継続的に改善され、総合的に見てロードマップの各項目(注1)が『ありたい姿』の実現に向かっているか

  1. (1)美浜発電所3号機事故 再発防止対策
  2. (2)当社ロードマップ(注2)の取組み
  • (注1)

    「ロードマップの各項目」とは、次の5項目を意味する。
    1. 1.安全最優先の理念の浸透および定着
    2. 2.安全性向上に関する基盤整備
    3. 3.安全性向上に関する活動の実施
    4. 4.リスクマネジメントをはじめとするマネジメントシステムの確立・改善
    5. 5.コミュニケーションの充実等
  • (注2)

    「当社ロードマップ」とは、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ
    継続的な取組みのさらなる充実」を意味する。

5-5.平成29年度原子力安全検証委員会の審議結果
「平成29年度原子力安全検証委員会の審議結果」について提案し、審議、了承。

以 上

<参考資料>

用語解説

事業概要