原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第24回 原子力安全検証委員会

 第24回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2021年度下期の進捗状況については、2022年5月26日にお知らせ済み。

1.日 時 2022年6月1日(水) 13時30分~16時30分
2.場 所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
関西電力株式会社 東京支社(千代田区内幸町)
 ※ビデオ会議システムにより開催
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 わたなべ   一弘 かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 やまぐち   あきら (公益財団法人原子力安全研究協会理事)  
(委 員) 【社 外】 荒木 あらき   孝治 たかはる (関西大学教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   典子 のりこ (慶應義塾大学特任教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   富美夫 ふみお (元福井新聞社編集局長)  
  【社 外】 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  関西電力送配電
株式会社
取締役社長
土井 どい   義宏 よしひろ
  取締役
代表執行役
副社長
彌園 みその   豊一 とよかず
(幹事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • ○新型コロナウイルスオミクロン株の爆発的な感染は、ようやくピークを越えたものの、なお一定程度の感染者の発生が続いている。その上、オミクロン株の亜系統も確認されるなど、終息を見たといえる状況にはなく、決して油断や楽観は許されないものであると思う。
  • ○新型コロナウイルスの流行が長期に及ぶ中、強い使命感を支えに、これに対応されてこられた方々、とりわけ医療関係者や、社会インフラ事業に携われる方々に対し、改めて、衷心から感謝の意を表すとともに、その可能性が直ちに否定できない再度の拡大への万全の備えをお願いしたいと思う。
  • ○翻って、最近のエネルギーをめぐる動向に目を転じると、本年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始し、その戦闘が長期化する様相を呈していること等が原因となって、LNGや原油の価格の高騰にますます拍車がかかるなど憂慮すべき状況が続いている。
  • ○また、国内においては、3月16日に宮城・福島両県で最大震度6強を観測する地震発生による火力発電所停止や春先の寒波による天候悪化の影響を受けて電力需給がひっ迫し、東京、東北エリアにおいては、初めて「需給ひっ迫警報」が出されるなど、我が国の電力需給における懸念が顕在化する出来事も生じている。
  • ○これらの出来事は、昨今の世界的なゼロカーボンへの対応と相まって、従前にも増して、人々の原子力発電への関心や注目を高めることとなっているのではないかと思う。
  • ○さて、このような状況の中、関西電力におかれては、新規制基準施行後、各原子力発電所において様々な安全性向上対策に取り組まれ、一部プラントにおいては再稼動が果たされた。現在も、原子力プラント7基体制の実現や4基の廃止措置に向けて、さまざまな取組みを進められておられるところである。
  • ○繰り返し、繰り返しお願いしてきたことではあるが、ここでもお願いしたいのは、引き続き、これら取組みを含む原子力発電所の運営は、安全最優先で進めていただきたいということである。そして、関西電力の安全最優先の姿勢に支えられた安全性向上に資する取組みに対する国民の理解と信頼の獲得、維持・伸長するための弛まぬ努力を積み重ねていいただきたいのである。
  • ○改めて申すまでもなく、当委員会の設置目的は、美浜発電所3号機事故を契機として
    • ・社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策を検証すること
    • ・原子力安全文化醸成活動、そして福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについて助言を行いこれら継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすること
    にある。
  • ○どうか、皆さんには、改めて、原子力安全への取組みに後退や足踏みがあってはならず、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、同事故への反省と教訓を基に蓄積され、実行されてきた様々な取組みに思いを致し、日々の業務やさまざまな取組みに携われんことをお願いする次第である。
  • ○当委員会もまた、その取組みを、社外の眼で検証・確認するという役割を、今後とも変わりなく果たして参りたいと思う。
  • ○本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況」に基づき、
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況および監査結果
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
    • ・2022年度 検証計画 ほか
    について検証・審議する。
  • ○最後になるが、委員の皆様には、従前同様、ご専門分野の眼から、また社会一般の眼から、ご検証頂き、忌憚のないご意見、ご助言を賜り、活発にご議論いただければと考えているので、どうぞ、よろしくお願いする。
5.議事概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況および監査結果
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2021年度下期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[基本方針等]
  • ○今後は安全最優先の理念の浸透および定着が特に大切。忘れずにやってほしい。(山口副委員長)
  • ○インフラ会社は、社会のために働いていると考えられていると思う。社長の宣言や5つの基本方針は社外向けにも良い理念。(遠藤典子委員)
[再発防止対策]
  • ○2次系配管の余寿命評価は、今後も技術的なデータの蓄積により、さらに精度を高める努力をしていることを示した方が良い。(小澤委員)
  • ○協力会社とのコミュニケーションは、多様な意見を聞くことができる点で大事な活動。「安全帯がかけにくい場所がある」という意見の例示があったが、「足場が作りにくい」「定期検査工程全体との整合」という複数の視点で見ていく必要がある、と関西電力が思いをはせたことが良い点。(山口副委員長)
  • ○協力会社とのコミュニケーションについて、3つの発電所で計6回実施したとあるが、この取組みを社外にアピールすべきではないか。協力会社も安全を確保するうえで大変重要な役割を担っているが、自らの声が届いて、安全向上に資するとなると、協力会社にとってもやりがいにつながる。ニュースになるかどうかは報道機関次第だが、報道機関へのプレスリリースや社内広報への取り上げ等を考えてはどうか。(遠藤富美夫委員)
  • ○法令の届け出漏れについて、ダブルチェックは抜き取りで行っていくということだが、DXを活用してシステム化することにより、すべてを事前にチェックし、問題が発生しそうな場合はアラートを出すことで漏れを防ぐことができる。この事例に関わらず、デジタル化を進めることを提案する。(荒木委員)
  • ○再発防止対策について、対岸の火事にするのではなく、原子力では常に他山の石として考えないといけない。コミュニケーションは大切であり、その前提として安全最優先の理念の共有が非常に重要。これを継続してほしい。(渡邉委員長)
[設備不具合]
  • ○高浜3号機の蒸気発生器の伝熱管損傷は、点検により確認されたものと考えるが、事故のように扱われている。事故と不備・不具合の使い分けや、公表する際の判断基準があるのか。点検により検出した事例であることを、メディアにも丁寧に説明していくことが重要。(遠藤典子委員)
  • ○大飯3号機の循環水系の水漏れは、腐食が原因とのことだが、純度や漏れ、シミの様なもので気付くことがあると思う。最近はAIの活用等もあるため、対策の強化だけではなく、新技術の導入も検討してほしい。(山口副委員長)
[報告書等の記載]
  • ○本委員会の説明資料について、一般の方に理解しやすい表現、書き方に工夫してはどうか。(小澤委員)
  • ○文書を作る際には、誰に向けて書いているのか、自分たちに言い聞かせているのかが明確になるような表現とすることに留意してほしい。(遠藤富美夫委員)
【ロードマップ】
[安全文化醸成活動]
  • ○従来のトップダウンを中心としたマネジメントから、今後、ミドル層をさらに活用する方向性は良い。一方、ミドル層の介在により、担当者の意見が経営層に伝わりにくくならないように気を付けてほしい。(小澤委員)
  • ○ミドルアップダウンは、1990年代の日本の製造業の強み。品質管理では、部門で発見した問題を小集団で解決する活動と、中長期的視点でトップが課題を設定し、それが部門へと展開されてきた課題達成活動を同時に行うことにより、ボトムアップとトップダウンの活動のバランスをとる活動を行っている。今後の参考にされてはどうか。(荒木委員)
  • ○ミドルアップダウンに注目した分析は、大変興味深い。これまでは、再稼動というゴールが明確で、それに向かうプロセスも簡明であったことから、トップダウンが有効であった。しかし、今後の新たな課題に対しては、ゴールとそれに至る道筋に色々な形があり、各課題のゴールをどう設定するかについて、様々な悩みや意見が出てきていると理解した。この取組みは重要で、様々な意見を聞くことは、イノベーションにもつながるため、是非チャレンジしてほしい。(山口副委員長)
  • ○トップダウンがうまくいかないのは、権限移譲がうまく機能していない可能性もあるため、このあたりの仕組みをどうするかも検討されてはどうか。これはトップのリーダーシップの課題でもある。(荒木委員)
  • ○安全文化等は、活動が定着するにつれトップダウンだけではなく、ボトムアップも大切ということになるが、現場が混乱しないように、引き続きトップダウンが必要なものを選定していくことも必要。(渡邉委員長)
[ロードマップ報告書]
  • ○ロードマップ報告書の記載は良くなっている。今後の方向性として、色遣いや文字のフォント等、ユニバーサルデザインについても考慮し、だれでも読みやすい資料作りをされてはどうか。(荒木委員)
  • ○ロードマップ報告書は非常に読みやすくなっており、広報部門による外部視点からの助言は大変効果的。公表した情報がどのくらい世間の人の目に届いているか、データは把握しておいてほしい。(遠藤典子委員)
[リスク管理]
  • ○労災について、本質安全化とは何かと考えた。労災はゼロにはできないが、重篤な労災は起きていないことが大切。本質安全化の「リスク源を無くす」ということについて、これからやっていく方向なのか議論すべき。リスクを管理していく形になるべきではないか。(山口副委員長)
  • ○リスクマネジメントについて、判断力が低下しているとのことだが、判断力を強化することは大変難しい。自分で考える癖のない人に考える力を与えることは大変難しいことを忘れないでほしい。(小澤委員)
  • ○リスクとは無くす(除去する)ものでは無く、低減させていくもの。本質安全化はキャッチコピーとしては良いが、しっかりとリスクマネジメントを回していかないような印象を与える。どこにリスクがあるかをしっかりと見ないといけない。見たくないものは見えないため、敢えて見たくないものを見る訓練をしていく必要がある。それを認識したうえで、科学的なリスクマネジメントを目指してほしい。
    (小澤委員)
[監査]
  • ○監査報告については、読み手にとって分かり易い簡潔な記載に努めてほしい。
    (遠藤富美夫委員)

以 上

用語解説

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