原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2008年5月29日



第10回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止に係る具体的方策の実施について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、「原子力保全改革検証委員会」を設けております。
 前回の第9回検証委員会では、平成19年度の6つの重点課題のうち、「経営トップによる安全最優先の徹底」等、3つの重点課題について検証するとともに、安全文化評価の上期末の試行状況についても検証いたしました。
 今回の第10回検証委員会では、平成19年度の重点課題の残りの3つの課題である「調達管理の充実、強化」「不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底」「地域との共生」とともに、「日常業務における再発防止対策の実施状況」「安全文化評価の試行状況」について検証いたしました。また、3年間の再発防止対策及び安全文化再構築の取組みの総括をいたしました。その結果についてお知らせいたします。

1.日 時 平成20年5月16日(金) 13時30分~17時00分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 大森 政輔 (弁護士)
副委員長  【社 外】 
崎
慶次 (大阪大学名誉教授)
委員  【社 外】 黒田 (日本ヒューマンファクター研究所 所長)
   【社 外】 
崎
由紀子 (都市生活研究所 所長)
   【社 外】 政野 澄子 (福井県女性エネの会 会長)
   【社 外】  宮村 鐵夫 (中央大学教授)
   【社 外】 向殿 政男 (明治大学教授)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   井狩 雅文  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)
4.冒頭挨拶
  【大森委員長挨拶骨子】
    前回から半年ぶりの委員会だが、美浜3号機は、昨年2月に再稼動し、その後の定期安全管理審査では、関西電力で初めてA評定を受けたと聞いている。また、高浜3、4号機のMOX燃料調達契約を3月に締結し、プルサーマル計画が再開されるに至っている。
    昨年度、検証委員会では、安全文化再構築の観点から、再発防止対策の日常業務の中での定着状況とともに、6つの重点課題の実施状況、並びに、安全文化評価の試行状況に対して検証を進めてきた。
    本日は、重点課題のうち「調達管理の充実、強化」「不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底」「地域との共生」の検証を行なうとともに、「日常業務における再発防止対策の実施状況」「安全文化評価の試行状況」について審議する。
    加えて、再発防止対策策定から約3年を経過し、検証委員会の検証も第10回を迎えることから、ここで一つの区切りとして、再発防止対策全般の総括評価を行いたい。
検証委員会では、これまで「再発防止対策は継続的改善が自律的に行われている」と評価したが、さらにこの再発防止対策が定着し、関西電力の安全文化が再構築されつつあるのかについて、各委員の専門の立場から、忌憚のないご意見を開陳いただきたい。
       
5.議事概要
    5-1.第9回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第9回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、報告・審議し、了承。
    5-2.重点課題の実施状況と監査結果について
       原子力保全改革委員会事務局から「調達管理の充実、強化」、「不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底」、「地域との共生」の取り組み状況について、また経営監査室から、これら取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
     
<審議結果>  
「調達管理の充実、強化」については、原子力事業本部は、元請会社を通して協力会社の力量や育成計画を把握する仕組みや、作業者の確保、定着等に向けた協力会社への支援策を策定し、計画的に実施している。
「不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底」については、根本原因分析のための要員の育成など実施体制の整備を行い、更に、試運用を通して仕組みの改善を実施し、本格運用を開始している。
「地域との共生」については、地域の視点に立って、地域の女性層を対象にした対話活動や広報誌による情報発信等、分かりやすい広報活動に取り組み、また、エネルギー研究開発拠点化計画など地域と連携して地域共生活動を行ない、その状況を地域にお知らせする等、工夫を加えながら、継続的に活動している。
以上の通り、関西電力は、自らの評価に基づき注力すべきと判断した重点課題について、着実にPDCAを回していることを確認した。
   
<意見>  
1 調達管理の充実、強化
協力会社の作業手順書の注意事項欄には、やるべきことが並んでいるが、それをしなければどういうリスクがあるのかを記述する方が注意喚起できるのではないか。協力会社の作業手順(作業要領書)にまで関西電力が関与し、望ましい標準を指し示して、全体の底上げを図るようなことも考えてほしい。(宮村委員)
協力会社の技術伝承を支援するための安全管理費については、今後とも継続されるよう、今から効果の測定等を行い、有効活用されていることを説明できるようにしておくことが大切である。(篠崎委員)
協力会社の方の若狭地域への定着により、技能認定者が多くなることは良いことであるが、次の施策として、資格を認定された方のやりがいを引き出すため、資格のステップアップなどの仕掛けを検討して欲しい。(篠崎委員)
テクニカルなスキルだけでなく、問題があればそれを解決できる人、組織にうまく伝えていくためのコミュニケーション能力についても、教育・訓練で考慮してほしい。(宮村委員)
調達管理における協力会社の力量管理については、関西電力から教育の基本的な事項を協力会社に要求していくことが重要である。 (向殿委員)
初歩的なミスによるトラブルが生じているのは残念である。トラブルを起こした協力会社の人達に対して、地域の声を伝え責任を痛感させるとともに、協力会社の若手社員への安全意識の徹底等、教育を充実するようにしてほしい。(政野委員)
(政野委員の意見に関連して)ヒューマンエラーについては、原因となる仕組み、環境への対策と個人の責任の両面がある。常に個人の責任を問うと人材が育たないので、その辺りの兼ね合いが難しいが、一切、制裁・処罰がないのはいかがなものかという感じがする。(大森委員長)
原子力発電所の長期的な安全・安定運転を続けていくために、関西電力と協力会社は、工事ごとの契約関係だけではなく、日本の自動車業界と同じように、互いに成長していく関係、離れられない関係を構築し、新しいモデルを作っていくことを期待する。(宮村委員)
   
2 不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底
不適合をきちっと分析していくことは大変重要である。根本原因分析では、対策をいかに捻り出すかというところに知恵を出す必要があり、片手間ではすまない仕事である。また、対策というのは分析の延長線上には必ずしもないのだということを考えて、対策学という別のものの考え方を持たなければいけない。そういうことから、本来業務と独立した専任チームの設置が必要である。この専任チームがインシデントをきちっと分析すると共通要因が出てきて、これから組織要因や安全文化が見えてくることも考えられる。(黒田委員)
根本原因分析のねらいは、根本原因に焦点を当てることによって、対策を単純化することにあると思う。そうすれば、対策に対する皆の納得感が高まるのではないか。さらに、対策として教育が必要となった場合には、必要なスキル・力量と教育について原子力部門内の検討で閉じず、全社的な波及・展開についても必要性を検討していくようなことを期待している。(宮村委員)
根本原因分析を実施すると、要因が連関していてぐるぐる回り、根本原因がよく分からないことがあるので、人間、仕組み、マネジメント、技術など色々なファクターを総括的に見て分析することも大切である。(向殿委員)
   
3 地域との共生
美浜町で行なっている、女性層との対話活動「レディース・トーク」は良い取組みである。今後は、高浜町、大飯町はもちろんのこと、美浜・高浜・大飯の隣接地にも拡大してはどうか。(政野委員)
発電所の見学会では、ただ発電所を見学するだけでなく、見学者の理解を深めるため、見学者と関西電力の社員が自由に意見交換する場を設けてほしい。(政野委員)
福井県や地元自治体とタイアップして地域からの信頼回復に取り組んでいるが、今後、福井県のために貢献しようとしている企業同士がタイアップして、福井ブランドを広報し福井の魅力をわかっていただく活動を一緒にしていくという視点を持って地域共生に取り組むことが大切である。(篠崎委員)
地域共生については、何でも取り組むというより、関西電力の理念に基づいた範囲内で、例えば、環境や安全だとかいうところに特化して地域共生に取り組むという視点が大切である。(向殿委員)
地域の広聴・広報活動も大切であるが、原子力に対する理解の足元を固めるという点からは、合わせて社員の安全に強い関心がある奥さんや家族に対しても、職場の状況を見せたりして理解を得ることも重要である。 (黒田委員)
    5-3.安全文化評価の試行状況と監査結果
   原子力事業本部から、安全文化評価の試行状況について、また経営監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
平成19年度、関西電力は、安全文化の再構築に資するため、安全文化評価の仕組みを策定し、試行を行ってきた。
下期には、上期に具体化させた評価の仕組みを充実させて、年度の評価を実施した。また、その試行を通じて明らかになった安全文化に係る課題に対しては、重点施策を策定し、適切に対応していくこととしている。
また、この仕組みには、「安全を最優先することが明確であるか」など、美浜3号機事故の反省点から抽出された評価の具体的視点や「安全最優先の取組みに関する社員・協力会社アンケート」などの指標が織り込まれており、再発防止対策の効果を継続的にフォローしていくことが可能な仕組みとなっている。
平成20年度は、平成19年度の試行結果を踏まえ、この取り組みを本格運用することとしており、関西電力は、安全文化の醸成状況を自ら評価し、課題を抽出し、自律的に改善する仕組みを整えたと言うことができる。
   
<意見>  
[評価の視点・指標]
評価の3本柱(トップのコミットメント、コミュニケーション、学習する組織)において、社内、協力会社、地域等ステークホルダーごとに評価の視点を整理していくと、安全文化評価の取組みが社会ともつながってくる。(宮村委員)
評価指標を、計画に対する達成状況を示す指標と達成した結果が最終的にどういう結果に結びついたかという指標に整理しておくと、問題があったときもPDCAを廻しやすい。(宮村委員)
法令順守(コンプライアンス)は当たり前であり、安全文化も同様で、プラント安全、労働安全と同列の関係ではなく、階層構造があるのではないか。よく整理して位置づけてはどうか。(向殿委員)
ハットヒヤリは必ずあるものであり、安全文化の醸成が進んだから件数が減るものではないので、収集活動を続けて欲しい。(向殿委員)
労災件数について、火力・水力との比較を行ったり、関電と協力会社の比率のデータを取りつづけることが、安全文化を見る良い指標になる。 (向殿委員)
   
[教育]
(トラブル発生件数に関して)プラント安全の教育の仕方が不十分ではないかと思う。「must do」(やらなければならないこと)や「better to do」(したほうがよいこと)の教育はやるが、「must not do」(やってはいけないこと)やクリティカルなことの教育が足りないのではないか。すなわち、リスク感性が足りないとしきりに言うが、リスク感性を養う教育が不十分ではないか。作業責任者や棒心クラスになると失敗経験も多いのでわかっている。これをどうやって引き出して伝えていくかである。 (黒田委員)
今の教育現場の状況や世代的に仕事観が変わってきていることを踏まえ、若い世代が自ら学習できる仕組み、モチベーションを上げる仕組みをどう考えるかが大切だと思う。また、繁忙感の中で主体的、能動的に学習することができるのかという点についても留意する必要がある。(篠崎委員)
若手社員に対する教育にあたっては、やってみせて、やらせてみせて、ほめるなどして辛抱強く自ら学ぶ姿勢を育てるところからはじめてほしい。 (篠崎委員)
   
[トラブル等の再発防止・未然防止]
人間は間違えるものであるという発想で、重大な事故につながる作業には、ハードウエアにて対策をとることが重要である。(向殿委員)
トラブルの原因が運用面の悪さであっても、その根本の原因には設備面での悪さが潜んでいることが多い。ヒューマンエラーであっても設備が悪いから起こることもあるので、運用面だけでなく設備面での対策もよく検討することが大切である。(向殿委員)
安全については、設備やシステムでできるだけ対応するとしても、人に頼らざる得ない部分は残るため、どのような間違いが起こるのかよく検討しておいて、教育、標準化、コミュニケーション等を活用して改善に努めてほしい。(宮村委員)
   
[全般]
安全文化は、皆に安心してもらうための安全のレベルを上げる上向きの理念であると思う。「学習する組織」の評価において、守りだけでなく、もっと積極性や夢が表に出てくるように体系立ててやってほしい。 (向殿委員)
今後の原子力を支えていく人材確保に繋がるものとして、原子力の夢や新規性を見せることが必要である。これは、関西電力だけの問題ではなく原子力全体の問題であると思っている。(宮副委員長)
(安全文化評価に関する取組みについて)時間が経ったり、人が替わると風化しやすいものなので、原子力安全文化推進委員会のような委員会を社内に残すことは良いことである。また、このような安全文化に関する取組みがモデルケースとなることを期待している。(宮崎副委員長)
安全文化の醸成は、皆が肩を張らずに楽な自然な状態でやっていないと長続きはしないものである。そういう点で今の取組みを見ていると本当に長持ちして楽にできるのかなという気がするところがたくさんある。色々工夫はされているが、人が変わったり、不景気になったりと色々状況が変化しても、取組みが長持ちするのかという目で見てみることが必要である。(黒田委員)
文化というのは、20年くらい後になって評価が出てくるようなものであり、それを今、安全文化ということで色々なことをやろうとしていることは素晴らしいことだと思う。(黒田委員)
安全は事業目的ではなく、その目的を達成するための方法論であって、その優先順位において、どこに位置するか(最優先)ということが重要である。そして、現場の者が、色々な事を決心する時に迷わないように、第一、第二、第三は何かという順序をきちんと知っていることが大切であり、そのためには、コミュニケーション、トップマネジメントが必要で、これが安全文化を構成するものである。このことを理解する必要がある。 (黒田委員)
関西電力のような大きな組織では、社内外とのコミュニケーションが悪くなることがあるので引き続き留意した活動をしてほしい。(向殿委員)
これまで多くの資源を投入し、取り組んできた美浜発電所3号機事故再発防止対策(安全文化再構築活動)の考え方、経験を、CSRレポート等を通じて社内外のステークホルダーと共有していってほしい。 (宮村委員)
    5-4.再発防止対策の総括評価について
       原子力保全改革委員会事務局から、再発防止対策の総括評価について、また経営監査室から、日常業務における再発防止対策の実施状況の監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
平成17年3月、「美浜3号機事故再発防止に係る行動計画」が策定され、これに基づき、「2次系配管肉厚管理システムの充実」、「メーカ、協力会社との協業」、「地域との共生」など、再発防止対策の継続的な実施、改善が進められてきた。平成18年度末には、当委員会はそれまでの2年間の活動を踏まえ、「再発防止対策が発電所に浸透し、継続的な改善が自律的に進められている」との評価を行っている。
平成19年度は、重点課題とした「不適合分析の強化」などの取組みについて、PDCAが回されていること、並びに、個々の再発防止対策が概ね標準化され、日常業務の中で着実に実施されていることを確認した。
さらに、関西電力は、安全文化の再構築状況を「安全最優先の取組みに関する社員・協力会社アンケート」などの指標を用いて評価し、改善を行っていく仕組みを構築し、その試運用により、仕組みの改善を行い、平成20年度からの本格運用に繋げていることを確認した。
以上のことから、関西電力の安全文化の再構築は自律的に進められていると言うことができる。
今後とも安全最優先を肝に銘じ、再発防止対策及び安全文化の再構築の取組みをさらに進展させ、「関西電力の安全文化」を醸成し、社会の信頼を高めていくことを期待する。
    5-5.その他
    (1) 検証委員会の活動について
       再発防止対策の総括評価の審議結果を受けて、大森委員長から、「検証委員会に与えられた、『再発防止対策の有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものにする』という使命は、一応、達成されたものと考える。したがって、現体制における検証委員会については今回第10回をもって一区切りをつけても良いのではないかと思うが、どうか」との提言があり、了承された。
    (2) 検証委員会の活動冊子の作成について
       経営監査室から、今回、現体制での検証委員会の活動について一区切りをつけるにあたり、3年間の活動を冊子にとりまとめ、今後の再発防止対策の風化防止、安全文化再構築の進展の一助としたい旨の提案があり、了承された。
    (3) 各委員の所感・感想について
    1 現体制での検証委員会の活動が最後となることから、社外委員が所感・感想を述べた。
     
(黒田委員) 
 最後のまとめの中にもありましたように「徹底をする」とか、「着実に実施する」とか大変、格調の高い言葉がたくさんならんでおります。人間の塊が動くという時のエネルギーだとか、プロシージャーは原子力発電所を動かすのとは違う発想が必要だと思います。そのためには、今まで色々なことを積み上げてきたものが現場にいかに浸透し、その状態が自律的に動くかというための努力は、これからも非常に大切だと思います。今まで検証委員会を10回やってきた中で大きな問題になっておりますのは、安全というのは、技術の問題だけではなく社会の問題でもあり、また社会の信頼という言葉が出ておりますように、企業が社会の中に生き残っていくために最も大切な1つの要件であるという点において社会的な動きというものに移り変わっていっているのです。その努力というのは今までと随分と変わってきたのだなという気がいたします。この状態を如何に続けていくのかということが、これから非常に大切だと思います。特に、組織として長続きさせていくためのコミットメントの言葉がたくさん出ておりましたが、組織としての枠組みが非常に大切だという気がいたします。
 
(篠崎委員)
 眠れる獅子が目覚めると本当にすごい組織になるのだと、トップのリーダーシップのもと皆さんが一丸となってやられたことを高く評価しております。ただ、これから危惧しますのは、目覚めた獅子が、もう二度と居眠りしたりしないように持続する志を持ってやっていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。
 今日もお言葉にありましたが、標準類に盛り込むということによって、これからどのように自律的に改善していけるのかということです。自律的という言葉で総括をした場面がたくさんございますが、自律的+主体的、自主的という言葉を皆さん一人一人に、現場の皆さんあるいは協力会社の皆さんにもお持ちいただきたいと思っております。そのためには、非常に大事なこととしてトップのリーダーシップと非常に風通しの良い組織作りが大事ではないかと思っております。それプラス、外からの視点、外からの目というのを、感性を持って持ち続けていただきたいと思います。外から、というのは協力会社さんでもあり、地元でもあり、先ほど申し上げたとおり地元にもいろいろな方がたくさんいらっしゃいます。社会の信頼という社会の中に、ある意味で関電さんとの距離感の中で聞こえる声だけが聞こえるということであってはいけないと思っております。これだけのことをなされる組織ですから、私は私のこの期待にこれからもずっと応えていただけるものだと確信しております。
 今、3年間が終わってほっとされているとは思いますが、これからも緊張感を持って持続していただきたいと思っております。
 
(政野委員)
 この3年半、各委員の意見を聞かせてもらい、自分自身、大変勉強になったと思います。
 私は福井県で原子力発電所と一緒に生きており、地元の視点で意見を申し上げてきました。福井県は、以前は嶺南と嶺北で温度差がありましたが、今は同じぐらいの意識になったと思います。現在、地球温暖化問題もあり原子力に追い風が吹いています。県民の意識は、特に女性を中心に変わってきたと思います。
 美浜事故で関西電力は信頼をなくしたといっても過言ではない程でしたが、その後、説明会等を通じて理解獲得に努めるとともに、地域共生本部が福井に移転したことで、2つの点が変わったと思います。一つは、県民の意識が随分変わりました。もう一つは、マスコミの取り上げ方が変わりました。これまでの関西電力の社員の努力の芽が出てきて、ようやくつぼみが膨らんできたのではないでしょうか。だからこそ、美浜事故のような事故を二度と起こして欲しくないし、信頼だけは裏切らないで欲しいと思います。
 福井県民の関西電力を見る目も変わってきました。原子力発電所があることで福井県は様々なメリットを受けており、そのことを私も県民に知らせていきたいと思います。
 今後も私たちは関西電力と長い付き合いをしていきたいと思います。きついことも申し上げましたが、県民の声だと思って受け止めていただければと思います。関西電力がますますご発展されることを心から念じ上げます。
 
(宮村委員)
 最近、私の好きな言葉ですが、「ローカルに学ぶ。そしてグローバルに考え、行動する。」ということをお願いしたいと思います。ローカルに学ぶということは、例えば、協力会社で若い人が増えてきて、スキルの低下が心配だというふうに現場で局所的に変化が起きるわけです。再発防止対策が日常業務に落とし込まれて、きちんと実行できる体制になっているというわけですが、現場を取り巻く、あるいは組織を取り巻く状況を、英語で言えば、コンフィギュレーションということですが、そういう色々なコンフィギュレーションというのが、時々刻々、昨日今日、変わるわけですが、そういう変化をしっかり受け止めてそして細部にとらわれず、全体をよく見てしっかり行動に移すということをお願いしたいと思います。したがって、色々な対策が標準という紙の上の話だけではなくて、日常の変化を受け行動にしっかりと結び付けていくということを心から期待して、是非、福井県とともに持続的に成長していくという面で、今後とも活躍していただきたいと考えております。
 
(向殿委員)
 確かに原子力は真面目にやっていますが、社会からの信頼を得るには、こういうリスクの高い事業をやっている会社は末端まで信頼されないといけない。ということは、原子炉は大丈夫かもしれないが、他で事故が起きればやはり同じなのですね。全体がどこから見ても信頼度が高く、安全度も高くやっていただくことが、社会の信頼を得るのに非常に大事だと思いますので、協力会社も全部含めて皆さんが信頼されるようにしていただきたい。その場合、風通しの良い会社にしないと、上だけしっかりしているけど、下は知らない、ここから下はあの会社に任した、ここから先は協力会社だから知らないというような形になってしまったら、また、どこかで起きる可能性があるなというふうに思います。
 もう少し言わせていただくと、安全をもっと積極的にアピールできる会社になってほしいと思います。今回の場合は、2次系配管の破断で原子炉とは関係がないかもしれませんが、大きなインパクトを与えました。新潟の地震を見ればわかりますように、これからも何が起きるかわからないわけですよ。原子炉の廻りでどんなことが起きるかわからない。そのときに、関西電力はこういう対応をしますよということを今からきちんと危機管理という面で考えた方がいいのではないか。再発防止はこれで結構ですから、実はそれ以上に、もっと先に、こういうことが起こりそうだ、そのときにどう対応するのだと、今から考えておいて、皆から信頼される会社になってほしい。それが安心につながるのだと思います。そのためには、安全を一生懸命やっている人を高く評価して、この会社は、安全が第一の価値であるということを外からも見えるようにしていただくのがいいのではないだろうかと思います。
 あえて言わせていただくと、このまま格好だけで終わらしてしまってはもったいないというか、しかもその気配はないわけではなさそうだという感じが若干します。ですから、是非、全社あげて協力会社も含めて主体的にやっていただきたい。それができる会社であるのは間違いありませんので、それをこれから期待したいと思います。是非、福井県だけではなく、日本全体から信頼される会社、何が起きても「あっ、関西電力すごい」と。事故は起こりえます。起きたとき、きちんと対応する、その仕方を皆から信頼されるようにしていただきたいと思います。
 
(宮崎副委員長)
 美浜3号機事故の問題を再発防止の観点から考えてみますと、良好な人間関係が一番重要だと思います。この問題が起った時には、情報の共有化がなされていないのではないのかというのが、発端であったと思います。社員のトップから現場までの意思疎通、それだけではなく、協力会社との横の、あるいはメーカさんとの連携を図ってきちっとやるということが極めて大切です。結局情報が共有化されていないと、皆さん参加意識を持たないわけです。参加意識がありますと、皆さん自分も参加して一緒にやっているということになりますと、それは高い水準を保ちうるというふうに考えますので、これは是非続けて行っていただきたいと思います。
 もう一つは、今回の特色は、従来原子力安全イコール放射線安全というように、あまりにもそのように取られて、拘泥されていたと云う反省があります。確かに、公衆の安全に重大な影響を与える潜在的可能性があるのは放射線影響の方でしょうが、この度の事故を考えると、労働安全というものを入れないと、本当の原子力安全にはならないと考えています。今回の事故を契機に、先生方にもお教え願う機会を得て、私も勉強させていただきました。最後に、もともと安全文化は原子力から発した言葉ですが、原子力においても必ずしも守れていないし、文化は黒田先生がおっしゃいましたように一朝一夕になるものではない。今後時間をかけて継続して行かねばならない努力が必要だと感じますので、是非、続けていただきたいと思います。
 最後に、折角このように再発防止をまとめたわけですので、今後再発防止が劣化していかないかということ、また安全文化の評価に取り組んではいるのですが、こういうことが守られていくためには、単に後はよろしくというわけではなくて、ここで関西電力さんに第三者的な立場からの意見を聞く場を設けていただくことで担保していくということをよろしくお願いしたいと思います。
 
(大森委員長)
 安全をキーワードとして網羅的総合的な再発防止策を策定し、全社を挙げてその実施に取り組む関西電力の姿は、関西電力は変わったと、一種の感慨を持って断言することができると思います。その初心を忘れることなく、実施に伴い新たに生じる諸問題を継続的に改善し続けるならば、究極の目標である安全文化の確立の意味における再構築も遠い将来ということではないと信ずるところでございますので、今後関係者の一層のご尽力を期待する次第でございます。
 原子力発電事業は今後関西電力の中で、さらには我が国のエネルギー政策におきまして益々比重を増していくように思われます。このような情勢の下で、原子力の専門技術者の担う役割は大きいものがあると考えます。年々意欲に満ちた有能な若者を採用し、養成していくことが必要となりますが、それを確保していくためには、生活面、教育面あるいは住居面、就業面といいますか手当面その他あらゆる面での特別のきめ細かい配慮を加えていくことが必要ではないかとかねがね心中ひそかに思い続けてきたところでございます。関西電力の経営トップにも、若狭の地域関係者の皆さまに対しましても、この点に関するなお一層の心配りを期待する次第でございます。
 宮崎副委員長からこの本検証委員会の組織についての提言がございましたが、私も同感でございます。
    2 以上の社外委員の所感・感想を受けて、社内委員並びに会社を代表して、 齊藤委員が挨拶を行なった。
     
(齊藤委員)
 まず、大森委員長から検証委員会として一区切りをつけてはどうかと提案があり、各先生方も異存がないとのことでした。当社としても異存はなく、そのように取扱いさせていただきます。
 その上で、御礼を申し上げます。先生方には、この3年間大変なご指導をいただき、心から御礼を申し上げます。再発防止対策、さらにそれを広げた安全文化の再構築、醸成の活動が先ほど総括したようなレベルに至ったのは、先生方の懇切なるご指導の結果です。また、ただ今、各先生方からお言葉を頂戴しましたが、一つ一つ我々の心にしみるお言葉でした。過分なお言葉も頂戴いたしましたが、今後の活動について身の引き締まるお言葉も頂戴しました。この場にいる者だけでなく、全社員がお言葉を噛み締めて進んでまいりたいと思います。
 また、今後の活動について、宮崎副委員長からのご提案があり、大森委員長、篠崎先生からもお話がございました。我々も、形はこれから考えたいと思いますが、このような第三者あるいはご専門の目から我々の活動をチェックしていただくような形での活動を続けたいと思います。
 いずれにしても、この安全という取組みは、これで終わりということはなく、継続的に改善の努力を積み重ねていかねばならない取組みでございます。先生方におかれましては、どうか今後とも様々なお立場でご指導を賜ればと思っています。また、これまでのご指導と、先ほどの大変暖かいお言葉を社長以下、全社員が共有して今後の活動の糧にしたいと思います。
 以上、心よりの覚悟を申し上げて御礼の言葉とさせていただきます。
 本当に3年間ありがとうございました。

<配付資料>
・ 第9回原子力保全改革検証委員会でいただいた意見への対応状況
・ 調達管理の充実、強化
・ 不適合の分析強化に基づく再発防止の徹底
・ 地域との共生
・ 安全文化評価の試行状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況
・ 原子力発電所耐震安全性評価の中間報告
・ 高浜発電所3,4号機のプルサーマル計画の再開

向殿委員、宮村委員、政野委員、篠崎委員、黒田委員(左から) 大森委員長、宮崎副委員長(左から)
向殿委員、宮村委員、政野委員、
委員、黒田委員(左から)
大森委員長、宮副委員長(左から)
第10回原子力保全改革検証委員会
第10回 原子力保全改革検証委員会
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