原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第25回 原子力安全検証委員会

 第25回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2022年度上期の進捗状況については、2022年11月28日にお知らせ済み。

1.日 時 2022年12月7日(水)13時30分~16時30分
2.場 所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
関西電力株式会社 東京支社(千代田区内幸町)
 ※ビデオ会議システムにより開催
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 わたなべ   一弘 かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 やまぐち   あきら
(東京大学名誉教授
公益財団法人原子力安全研究協会理事)

 
(委 員) 【社 外】 荒木 あらき   孝治 たかはる (関西大学教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   典子 のりこ (慶應義塾大学特任教授)  
  【社 外】 遠藤 えんどう   富美夫 ふみお (元福井新聞社編集局長)  
  【社 外】 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
土井 どい   義宏 よしひろ [欠席]
  執行役常務 池田 いけだ   雅章 まさあき
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • ○皆さまご承知のとおり、今日のエネルギーを取巻く環境は、昨今のゼロカーボンへの対応などが声高に叫ばれる中、昨年来の資源価格高騰、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う国際情勢の緊迫化、円安ドル高など、次々と劇的な変化が生じている。
  • ○また、それらの影響によって、先行きの不確実性がますます高まり、世界的な燃料価格の高騰、LNG調達の不透明性の増大など、憂慮すべきと思われる状況が続いている。
  • ○本年7月に、政府によるGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議が開催され、その中で、「日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策」、また、「それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップ」の検討が開始されている。
  • ○エネルギー供給の方策面で申し上げれば、再生可能エネルギーの大幅な拡大に加えて、原子力発電の重要性を踏まえた、再稼動への関係者の総力の結集、安全第一での運転期間延長、次世代革新炉の開発・建設の検討等といった方策が取り上げられている。
  • ○さて、このような状況において、関西電力は、新規制基準施行後、各原子力発電所において様々な安全性向上対策に取り組まれ、原子力プラント7基体制の実現や4基の廃止措置に向けて、一歩一歩進まれているところである。
  • ○しかし、そうした中で、本日の委員会にて報告されるが、近頃、発電所において設備不具合等が散見されている。これら不具合等が発生した後、関係者全員が事象と真摯に向き合い、原因および再発防止対策を検討していると承知しているが、同時に、関西電力がこれまで積み上げてきた安全性向上への取組みの劣化や風化がないことを常に確認していただきたい。
  • ○改めて申すまでもなく、当委員会の設置目的は、美浜発電所3号機事故を契機として
    • ・社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策を検証すること
    • ・原子力安全文化醸成活動、そして福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについて助言を行い、これら継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすること
    にある。
  • ○どうか、原子力に携わる皆さんには、どのような環境・状況下にあっても、常に、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、同事故への反省と教訓を基に蓄積され、実行されてきた様々な取組みに思いを致し、日々の業務に取り組まれることを心からお願いする次第である。
  • ○当委員会もまた、その取組みを、社外の眼で検証・確認するという役割を、今後とも変わりなく果たして参りたい。
  • ○本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況」に基づき、
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
    について検証・審議する。
  • ○最後になるが、委員の皆さまには、従前同様、ご専門分野の眼から、また社会一般の眼から、ご検証いただき、忌憚のないご意見、ご助言を賜り、活発にご議論いただければと考えているので、どうぞ、よろしくお願いする。
5.議事概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
原子力部門安全文化評価の改善状況について原子力事業本部から、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2022年度上期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[法令手続き不備]
  • ○法令手続き不備について、法令改正を全てフォローすることは難しいが、是正措置プログラム(CAP)を活用して再発防止対策をしっかり実行していただき、改善が進められるようお願いしたい。(山口副委員長)
  • ○法令手続き不備は、例え形式的に過ぎないものでも、時に、法令違反として社会的には厳しい評価を受けることがある。常にこのような社会への影響を考えて的確な対応をしていただきたい。また、法令手続き不備を招かないためには、その要否に迷ったときは、まず必要と考えて対応することが大切。(渡邉委員長)
[設備不具合]
  • ○高浜発電所4号機で弁に異物が入ったことについて、作業時に異物混入の可能性をできる限り排除することが重要。今回の事象を教訓に、引き続き作業環境の整備に努めてほしい。(小澤委員)
  • ○不具合事象への対策として、「現場力の向上」に取り組むとしているが、「基礎現場力の再構築」が必要と捉えるべき。例えば、異物混入については、3S(整理、整頓、清掃)が出来ていないのではないか。また、トルク値の間違いについては約一桁違っているが、技術者としてはこれに違和感を持たなければならない。
    (荒木委員)
  • ○不具合事象について、「基礎現場力の再構築」とともに、デジタル化、さらにはDXの活用で防げるものがあるように思う。例えば、トルク値の間違いや申請漏れはDXを活用してチェックできるのではないか。(荒木委員)
  • ○2022年度に不具合事象が多数発生しているとのことだが、その要因はどこにあったと考えているのか。原子力に対して注目が集まっている中、現場力の向上ということだけでなく、経営に関わる問題と捉えてしっかりと対応してほしい。
    (遠藤典子委員)
  • ○不具合事象について、DXの活用も検討しているとのことだが、単にDXを使っていくということだけではなく、DXを活用してどのようなエラーをつぶしていくのかという考えを示していただきたい。(遠藤典子委員)
  • ○大飯発電所4号機において配管から水漏れが起こった箇所については、エロージョンが原因なので注視している。管理指針における管理対象ではなかったものの、自主的に定点測定していたとのこと。今回の事象をしっかりと検証して、管理対象とする考え方を明確にし、同様の箇所を点検プログラムにしっかりと組み込んでほしい。(山口副委員長)
  • ○不具合事象について、地元ではトラブルがやや多いと受け止めており、高経年炉だからトラブルがあるのではと思っている。ハード面のみならず、ソフト面の視点も必要ではないか。例えば、長年運転すると関わる人が増えるので、コミュニケーションやノウハウの伝承などが上手くいっているか、といった視点も含めて、高経年炉への不安に対する配慮が必要。(遠藤富美夫委員)
  • ○不具合事象について、初歩的なエラーが原因ではないかと気になっている。いろいろな事象を包み隠さず公表いただき対策を打っているのは誠実であると評価できるが、高経年炉については特に念入りに点検してほしい。(遠藤富美夫委員)
【ロードマップ】
[安全文化評価の見直し]
  • ○14視点(美浜発電所3号機事故を踏まえて策定した安全文化評価の項目)と10特性(世界各国で用いられている安全文化評価の項目)を合理的に丁寧に比較していただき、齟齬がないことを確認する検討は良い取組み。両者が整合することが確認できている。(山口副委員長)
  • ○10特性で安全文化を評価いただくことは問題ないが、美浜発電所3号機事故の教訓を忘れないことも大切。しばらくは14視点についても継続して評価していただき、問題がないか確認いただくことを要望する。(山口副委員長)
  • ○今回の安全文化評価の改善は合理的な取組み。10特性を採用することで物事の概要や輪郭がはっきりする点は良いが、14視点の作成経緯である生々しさやリアリティが薄れていかないかとの思いもある。14視点の項目を残すので問題ないと考えるが、引き続き、取組みを確認させていただきたい。(遠藤富美夫委員)
  • ○安全文化評価の実施段階において、10特性を用いて評価する場合も、従来の14視点で実施していたように問いかける形での評価が適切に実行されるよう留意して欲しい。(小澤委員)
  • ○10特性の下には43属性がある。10特性に簡略化したと捉えるのではなく、従来の14視点と43属性との関連を考えることで、より細分化され、精緻化されているとポジティブに考えることもできる。(荒木委員)
  • ○14視点は、美浜発電所3号機事故の再発防止対策がその原点となっている。10特性による評価にあたっても、このことを忘れずに改善していくことが大事。
    (渡邉委員長)
[安全文化醸成活動]
  • ○社員の安全文化醸成と並行して、一時的に原子力発電所に関わる方を含め、発電所周辺地域で交通事故等のトラブルを起こした場合の影響の大きさを理解していただく活動も重要。(小澤委員)
  • ○WANO(世界原子力発電事業者協会)の方からも、ミドル層の役割が大事と聞く機会があった。トップと現場をつなぐミドル層が機能すると、トップの意思が組織全体に浸透する。ミドル層を中心にコミュニケーションをしっかり取って意見を吸い上げることが重要。今後の取組みに期待している。(山口副委員長)
[ロードマップ]
  • ○ロードマップの表現について、「試験を想定した模擬口頭試験の風景」(p.12)とあるが、単なる試験対策と捉えられないよう、育成の趣旨が伝わるような表現とした方がよいのではないか。(荒木委員)
  • ○システム全体を俯瞰する人材の育成は、どの業界でも難しく、原子力安全も同様。人には得手・不得手があるので、会社として人の見極めをしつつ、必要なスキルを持った人材を育成していくことが重要。(小澤委員)
  • ○ロードマップの読みやすさについて、より理解されやすいものにという意識をもって、毎回改善に努力されており、このことは評価できる。この努力を止めることなく、さらに改善に努めてもらいたい。(渡邉委員長)
  • ※液体等が金属表面に衝突することで生じる機械的な衝撃力で配管の内面などが損傷する現象。 大飯4号機の不具合事象では、高速となった液滴が配管の内面などに衝突したときに、局所的 に大きな衝撃力を発生させ、衝突部位が侵食される現象が発生した。

以 上

用語解説

事業概要