原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

2012年8月16日


第1回 原子力安全検証委員会

 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 第18回の委員会では、美浜発電所再発防止対策実施状況、福島第一原子力発電所事故からの教訓を取り入れた平成23年度の安全文化評価結果および重点施策の実施状況について検証していただきました。美浜発電所再発防止対策実施状況については、「日常業務の中で定着し、対策項目の経緯や目的が理解され、確実に実施されていることを確認したことから、風化の兆しは認められない」、平成23年度安全文化評価結果および重点施策については、「福島第一原子力発電所事故に関して公表された報告書等からの教訓を安全文化評価の枠組みに取り入れ、事故の教訓を踏まえた評価が実施されていた」、「『協力会社作業員の安全意識の更なる向上』や『若手社員育成策の充実、強化』などの重点施策については、有効に機能し、活動が定着していることから、日常業務として継続されるが、今後も実効ある活動を期待したい」旨の評価をいただきました。
 また、平成24年4月9日に当社が公表した「大飯発電所3、4号機事故における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画」の中で、社長が決意表明した「原子力発電の自主的・継続的な安全への取り組み」についても、同委員会として、確認・助言していくことになりました。
 その上で、委員会の名称については、これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらすべての活動を「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。
 今回の第1回原子力安全検証委員会では、「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み」を中心に審議が行われ、その結果をお知らせいたします。


1.日 時 平成24年7月23日(月) 14時00分~17時00分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 佐藤 信昭 (弁護士)
副委員長  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
委員  【社 外】 小松原 明哲 (早稲田大学教授)
   【社 外】  田中 健次 (電気通信大学教授)
   【社 外】 増田 仁視 (公認会計士)
   取締役副社長  井狩 雅文  
   取締役副社長 生駒 昌夫  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)
 
(※加賀有津子委員(大阪大学教授)は、当日欠席のため、別途説明)

4.冒頭挨拶等
    佐藤委員長挨拶骨子
   
全国から注目される中、大飯発電所3号機はこの7月9日に、福島第一事故後停止していた全国の原子力発電所で最初に再稼動を実現し、この夏の供給力に大きな貢献をする見通しとなったが、原子力発電所の安全性を巡る国民的議論は、中長期的な問題も含め、まだまだ続いていくものと思う。
さて、前回の検証委員会において、これまで本委員会で検証してきた美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況、安全文化醸成活動に加えて、4月9日の社長の決意表明「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み」についても本委員会において取り扱うこととなり、その上で委員会の名称を原子力安全検証委員会に見直すことについて各委員の了解をいただいた。
これまでの美浜発電所3号機事故再発防止対策、安全文化醸成活動の検証で積み重ねてきた委員会の活動を活かしながら、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた関西電力の安全への取り組みについても、各委員の様々なご専門の見地などからご意見を頂戴していきたい。
本日は、新しい名称での委員会の第1回となる。「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み」を中心に忌憚のない意見をいただき、活発な議論をしたい。
     
5.議事概要
    5-1.検証委員会規則の見直しについて
   検証委員会規則の見直しについて、経営監査室から提案し、審議・了承。
   
5-2. 第18回原子力保全改革検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
      
<報告内容等>
 第18回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力安全推進委員会事務局から報告し、審議・了承。
 但し、「規制が要求すること以上に安全を確保していくということは今さら言うまでもないことである。むしろ全ての外部電源喪失が長時間続くということを想定し、対応してこなかったということが反省事項ではないか。」という意見に対する対応方針(案)として「ご指摘の通り、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、外部電源喪失が長時間続くことも想定して緊急安全対策等を実施しております。」を提案したが、委員より
 
「外部電源喪失が長時間続くことを想定してこなかったということが反省事項ではないか」との指摘に対して、単に「外部電源喪失が長時間続くことを想定して対策を実施しています」という答えだけでなく、そもそも根本として、これまでの想定の仕方や取組みに関する反省事項があり、それらに対してどのように取り組んでいくかということを示すべきだと思う。(田中委員)
長時間の全交流電源喪失については、設計の想定自体が甘かったということを反省すべきではないか。想定を超えることが起こったらどうするかももちろん考えなくてはならないが、原子力発電における想定の立て方や想定の考え方などに反省すべき事項がなかったのかということの方が重要である。このような考え方に立って、社内での原子力安全への議論を深めてほしい。(小松原委員)
との意見が付された。
<その他の意見等>
プラントの長期停止によって、通常の運転操作や作業の機会が減少することを考慮して、教育や訓練が十分なものになっているかについて検討する必要があると思う。(東副委員長)
「原子力の安全は確保されている」との前提において、安全への取組みを見直し・改善すると安全ではなかったと思われることを懸念し、見直し・改善していくことに電力は臆病だったのではないか。技術革新もあるので、電力はより一層の安全向上のために決然たる姿勢で取組んでほしい。(小松原委員)
社会は説明できる安全を求めている。信頼を得るためには安全への活動や仕組み・取り組みに関する説明が求められる。(小松原委員)
アプローチには2つあって、1つは、目標があって目標に到達することをねらう目標追究型と、目標がなくて、より今より良いものを目指すという課題達成型がある。後者にはゴールはないのだが、常に今よりも一段上を目指しながら、最終的によいものを目指す。現状では、ゴールがどんどん変わってくるため、最初からゴールを決めずに、今ある現状を把握し、それに対して改善を続け、常に良いものを目指すということを検討することが必要である。世界最高水準とは、そういう意味だと思う。(田中委員)
大飯発電所以外の職員のモチベーションの低下がないのかが気になる。発電所毎のモチベーションの違いなどを確認して欲しい。(小松原委員)
    5-3.原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況について
   原子力事業本部から、「原子力発電所における自主的・継続的な安全への取組みについて」、「免震事務棟(緊急時対策所)の設置について」報告し、審議。
<報告内容等>
     
<意見等>
(世界最高水準の安全性)
現状は、独立新組織他から最新知見を取り入れて世界最高水準を目指していくということだと思うが、世界最高水準の事業者になれば、逆に、国内外の事業者に対して指導的な情報を発信していくことになるのではないかと思う。(東副委員長)
安全性・信頼性向上に関する基準3である世界最高水準の安全性を目指していくためには、先ずは、課題や検討すべきことが何なのかなどをもう少し明確にすることが重要だと思う。(田中委員)
世界最高水準を目指すとあるが、どのようなものを目指すのか、ブレークダウンして、具体化しておく必要がある。(加賀委員)
(更なる安全性・信頼性向上対策)
30項目等の対策の実施にあたっては、訓練等ソフト面の確認を含め、優先順位や資源投入の問題等の点についても社内の推進会議等の場で議論していくことが大切である。(佐藤委員長)
30の安全対策について、それぞれの取組みの優先順位はどのような考え方で決定しているのか、きちんとした方針を持っておく必要がある。(加賀委員)
対策項目(97項目)がすべて同じ重要度のように見えるが、今後これらの対策を実施し、また、その意味を理解、継承していくにあたっては、一つ一つの対策の重要度など色々な情報を付けて表記しておくことや、対策間の関係を整理することで、多重性、多様性が増していることが見えるようになっていることが大切である。(田中委員)
本検証委員会においては、個々の安全対策の実施状況ではなく、安全に関して関西電力が組織を挙げて自主的・継続的に行っている取組み全体とその状況に関する報告をしてほしい。(小松原委員)
自主的・継続的な安全への取組みについては、やるべきことは全部やり、ここまでやっているかというところまでやらなければ、国民は納得できないと思う。企業存続の危機であるという意識を持って取り組んでいくという状況が大切だと思う。(増田委員)
言われたことだけではなく、関西電力独自で実施する対策が重要だと思う。「免震事務棟などはまだできていないのに、なぜ再稼動するのか」という意見もまわりにあるが、謙虚に、真摯にやっていくしかないと思う。(増田委員)
安全対策の取組みとして、マニュアルの整備、充実を図るだけでなく、実際にマニュアルに基づく訓練をしておくことが大事である。(加賀委員)
原子力災害時の体制として、外部組織との連携を考え、また、連携がしっかりできるように外部とのネットワークを作り、訓練も一緒に実施することが大切である。(加賀委員)
原子力工学を希望する学生や原子力産業に就職を希望する人が激減し、この先、現場から管理・計画まで、あらゆるレベルの人材確保はかなり厳しくなってくると予見される。中長期的に優秀な人材を育成・確保する戦略も重要だと思う。(小松原委員)
    5-4.その他報告事項について
       原子力事業本部から、「第18回原子力保全改革検証委員会以降の主な動き」、「大飯発電所3,4号機のプラント起動状況」について報告。
<報告内容等>
    5-5.次回検証委員会の検証テーマおよび検証の視点について
       次回検証委員会の検証テーマおよび視点について経営監査室から提案し、審議。
     
<審議結果>
次回(第2回)検証委員会の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
     
検証テーマ 視  点
安全文化醸成活動の中間状況確認について
中間状況確認が、適切に実施されているか。
福島第一原子力発電所事故の教訓を安全文化評価の枠組みに取り入れるプロセスと活動は適切に進められているか。
原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況について
規制の枠組みにとらわれず、更なる安全への取組みが、自主的かつ継続的に進められているか。
 
<意見等>
自主的・継続的な安全への取組み状況については、本委員会の助言等を得た後に社外へ報告する流れであるならば、社内的に監査を通じて牽制している様についても、本委員会に報告して欲しい。(増田委員)

第1回 原子力安全検証委員会 佐藤委員長、東副委員長(左から)
第1回 原子力安全検証委員会
佐藤委員長、東副委員長(左から)
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