原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2010年6月8日



第14回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 第13回の委員会では、安全文化評価、重点施策の実施状況及び現場の安全に関する諸施策の実施状況を中心に検証していただき、「平成21年7月に大飯発電所で発生した協力会社社員の労災事故を真摯に受けて、平成21年度重点施策が一部強化されるなど、適切な対応が取られている。」「現場の安全レベルの向上には地道な活動が大切であり、また人も入れ替わるため、関西電力は、今後も協力会社との協業の理念を軸として、継続的かつ着実な諸施策を行っていくことを期待する。」旨の評価をいただきました。
 今回の第14回検証委員会では、運転中プラントへの立入制限に関する対策を主とした美浜発電所3号機事故再発防止対策、また平成21年度安全文化評価結果および重点施策の実施状況について、検証が行われました。その結果をお知らせいたします。


1.日 時 平成22年5月14日(金) 13時30分~17時25分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 佐藤 信昭 (弁護士)
副委員長  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
委員  【社 外】 小松原 明哲 (早稲田大学教授)
   【社 外】  田中 健次 (電気通信大学教授)
   【社 外】 槇村 久子 (京都女子大学教授)
   【社 外】  増田 仁視 (福井経済同友会代表幹事)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   井狩 雅文  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶等
    4-1.佐藤委員長挨拶骨子
     
私が委員長に就任して以来、今回で4回目の委員会になる。
この間、美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況、更には安全文化の醸成状況の確認、検証を行ってきたが、今後とも第三者としての独立的な立場で、再発防止対策の風化防止、安全文化評価の仕組みの構築とその充実、その運用状況をしっかりと確認、検証していく必要があると考えている。
また、再発防止対策の中で、これまでワーキンググループを立ち上げて慎重なる検討が重ねられてきた運転中のタービン建屋等への立入制限に関する対策がまとまり、その試運用が開始されたとのことである。各委員においては安全最優先の観点からの確認を是非ともお願いしたい。
なお、最近の原子力発電所の安全全般については、確かにトラブル自体は減少傾向にある。それはこれまでの安全への取り組みが機能してきたものと思われるが、一方で燃料リークの発生事象も認められており、必ずしも万全のものとは言えないのではないかと思う。
また、他電力の原子力発電所において、保守管理の不備も報告されており、我々もこれを注視しているところであり、本委員会でも報告してもらうことにしている。
以上、専門的な立場から、あるいは総合的な見地からの忌憚のない意見をいただき、活発な審議にしたい。
     
5.議事概要
    5-1.第13回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第13回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力保全改革委員会事務局から報告し、審議・了承。
    5-2.美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について
        美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について、原子力保全改革委員会事務局、原子力事業本部および経営監査室から報告し、審議。
 
<審議結果>
原子力事業本部ならびに各発電所は、安全最優先の理念のもと、美浜発電所3号機事故再発防止対策を日常業務として定着させ、継続的に取り組んでいる。
再発防止対策の中でルール化を慎重に検討してきた「運転中プラントへの立入り制限に関する対策」については、広く協力会社も含めて意見を聞くなどワーキンググループでの検討を踏まえて具体的な運用方法を定め、現在試運用を実施中である。本日出された適用基準の明確化とその運用についての意見等を踏まえ、社内標準化し、本格運用につなげていただきたい。委員会としては、引き続き安全最優先の取組みとなっているか、確認していく。
今回の対策進展により、美浜発電所3号機事故再発防止対策の29の実施項目のすべてが日常業務の中に移行していくこととなるが、これらが風化することがないか、引き続き検証していく。
<意見等>
運転中タービン建屋等で実施する必要のある作業が整理されているが、○○等という表現が見られる。法律家の観点から、「等」という表現は曖昧で、何が含まれ何が含まれないのかが定かではないと感じるので、明確となるよう表現に注意を払ってほしい(佐藤委員長)。
運転中のタービン建屋等への立入制限について、立入の承認基準がぶれてしまわないよう、そもそも何のために立入り制限をするのかという意義を明確化し、基準にぶれが出ないようにお願いしたい(小松原委員)。
運転中のタービン建屋への立入制限と運転中の保全活動について、美浜発電所3号機事故前は運転中に、定期検査の準備作業がなされていたが、この準備作業を取りやめたことによって、個々の作業工程の中に準備作業が取り込まれることになったと思うが、準備作業が個々の作業工程の中にうまく取り込まれているかどうか、定期検査中に新たなリスクが生じることになっていないかについて関心がある(小松原委員)。
運転中タービン建屋等で実施する必要のある作業は、例示がないと、判断する安全衛生管理責任者によっては、結果にばらつきが出てくる可能性がある。予め想定している作業を例示しておき、現場で積み上げていったものを加えて全体として作り上げていくという仕組みが必要だと思う。判断基準を作った者と、それを判断する者の間に、理解のギャップが無いようにする取り組みが大切である(田中委員)。
運転中のタービン建屋等における保全活動の検討結果の報告書にある表「運転中タービン建屋等で実施する必要のある作業」の「安全・品質上、必要な作業である理由の記載」欄の記載が、なぜ運転中に作業が必要なのかという理由になっていると、運転中に実施する作業の考え方が明確になり、分かりやすい(田中委員)。
報告書では、運転中タービン建屋等で実施する必要のある作業が並列で記載されているが、この中にはリスクの高い作業と低い作業が混在していると思う。例えば作業にあたっての安全対策で、重要なものはすぐわかるように表記等(例◎)を工夫すると良い(田中委員)。
運転中に行う必要のある作業について、報告書では共通的な事項を定めているが、各発電所で運用していく段階では、各発電所の設備等の特徴に応じて、必要な作業を明確化していった方がよいのではないか(槇村委員)。
運転中に保全活動をすることによって、定期検査の安全性が向上するのであれば、運転中の保全活動の意義がわかると思うので、試運用前の定期検査と試運用後の定期検査とを比較して、どのように変わったのかをわかるようにしたらよいと思う(槇村委員)。
定期検査前準備作業の取止めを継続するとしているが、報告書中では、資機材の仮置きの必要性が述べられている。仮置きというのなら、定期検査前の準備作業の一部ではないかと思えるので、「運転中に実施する必要のある作業」と「定期検査前の準備作業」の違いがはっきりと分かる表現にしてはどうか(槇村委員)。
運転中の保全活動の運用について、基本的な考え方はリスクがあるという前提で作るべきであると思う。その場合、立ち入れるケースを例示したり具体化したりして、こういうケース以外は駄目だというきちんとした作り方をしないと分かり難いと思う(増田委員)。
    5-3.安全文化醸成活動状況および監査結果について
   安全文化評価の結果および重点施策の実施結果について原子力事業本部 から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
     
<審議結果>
平成21年度の安全文化評価では、協力会社の評価への参加を各発電所へ展開するなど仕組みの充実を図り、課題抽出につなげている。
また、前年度評価に基づく重点施策は着実に実施されており、中長期にわたって取り組みが必要な若手社員育成策や協力会社への取組について、引き続き対応を進めていくこととしている。
一方で、評価プロセスにおいて、一時期に膨大な資料の収集、整理が集中することから、過度な負担にならないよう効率化も検討していくこととしており、活動を息長く継続していく必要があることから、こうした検討にも注目していきたい。
これら安全文化評価の仕組みは、品質マネジメントシステムと相俟って、美浜3号機事故再発防止対策の風化防止に寄与していくことが期待される。
さらに、この仕組みがその運用の中で、安全文化を担う一人一人のレベルでも活かされ、仕事につなげられていくことを期待する。
<意見等>
[安全文化全体]
安全文化を醸成していくというのは、単に倫理的な側面だけではなくて、事故による損失を回避するという意味で経済的な面のメリットもあるのではないかと思う。人も時間も費やして安全性を高める活動をするが、それは実益的なものにもつながっているという認識も重要ではないか(東副委員長)。
現代人のリスク感性が低下しているなど、世の中が変化してきており、このような変化を視野に入れながら、個々の施策のPDCAを回すことが大切である(小松原委員)。
一件重大な労働災害があっても個別に十分な分析をし、十分な対策を実施していれば、一年を通じた評価において必ずしも「改善の余地あり」とする必要はない。一年を通じた14の視点の評価とそのような個別の事象の評価とは別に考えてみてはどうか(田中委員)。
安全文化評価では、統計的なトレンドを見ることと、個別にどのような意見があったかなどを見ていく必要があり、これらをどのようにかみ合わせていくのかを、もう少し考えていくとよりよいものになると思う(田中委員)。
安全に取り組んでいく上でコスト意識は大事なことであるが、広く考えると、自分だけではなく、周りの人や地域の人の安全にもつながり、最終的には自らも幸せになれる。そのようなところと全体の安全文化とは一致していると思うが、どのような仕組みを取り入れたら皆がそのように考え、全体がこのようになっていくかは、重要な課題である。そういった仕組みは現在の色々な取組みの中で、今後できあがっていくと思うので、この調子で進んで行っていただきたい(田中委員)。
地域の方の声に対し、どのようなアクションをとったのか、どのような結果になったのか、どのような課題が残っているのか、といったことも安全文化評価の側面に入ってくると良いのではないかと思う(田中委員)。
大きなロードマップのうえに安全文化醸成活動の取り組みを位置づけるなどして、全体を俯瞰できるようにするとともに、個々の取り組みが社員、地域、協力会社等にとって、どのような意味、重要性、メリットがあるのかをわかりやすく説明できるような方策を考えられてはどうか(槇村委員)。
企業会計の仕組みの中では、内部統制に関して、日常業務になるべく負担をかけずに通常業務をしながら自動的に内部牽制が働くという仕組みをいかに作るのかを考えている。安全文化を根付かせるためには、将来的には安全文化評価のシステムにもこのような考え方を取り入れられないかという感じがしている(増田委員)。
[協力会社との関係]
「現場に足を運んでいるか」について、関西電力の社員と協力会社の社員との間に意識の乖離がある。関西電力の社員が、協力会社の人たちが必要とするときに現場にいて、協力会社の人たちのニーズを正しく理解し、コミュニケーションを図りながら一緒に考えることは、安全や技術力の向上にもつながる活動だと思うので、工夫しながら進めてほしい(東副委員長)。
現場において協力会社が頼りにできる関電社員とはどのようなものなのかを考え、関西電力の技術者として必要なものを強化するプログラムを作っていく必要があるのではないかと思う(小松原委員)。
安全文化の現場第一線への浸透にあたっては、作業員に原子力発電所で働くことにおいて、安全の持つ特別な意味や、関電が望む理想的な作業員像、すなわち、やってほしいことを明確にした上で、それらを「ここはこういうものだ」というようにはっきりと伝える方法をよく考える必要がある(小松原委員)。
関電社員ならびに協力会社社員に必要とされる「危機感受性」と「現場力」について、従来からの対策も含めて具体的に整理し直して、それが向上するような具体的な施策(教育などの場合では到着目標を明確にする、具体的な行動指標にするなど)を計画的に実施する必要がある(小松原委員)。
協力会社の力量維持、向上に関して、工事の発注先である協力会社の決算書を入手して経営状況を確認していることは大切なことである。というのは、赤字決算などで経営が安定していないと、力量向上や技術伝承など本来使用されるべきところにお金が使われなくなってしまうことになる(増田委員)。
協力会社と関電の安全意識のレベルを合わせていくことが必要である。その点、協力会社との意思疎通の活動では、突っ込んだ分析をするとともに、協力会社の人達の意識に積極的に入り込んで、意識喚起をしようとする熱意がうかがえており、今後も続けてほしい(増田委員)。
協力会社との意思疎通の活動では、原子力発電所で仕事をするということは、普通の作業場での仕事とは違って世間からは特に注目されているのだということや、少しのミスやトラブルも発電所の停止につながるという意識をしっかりと持ってもらうことが大切である(増田委員)。
[トラブル・労働災害関係]
労災の原因を分析して適切な対策を講じる取組みを続けてほしい。特に、転倒などの雑災害が多いことについては、若手社員は、子どもの頃から正しい歩き方や足の踏ん張り方などを学んでいないために起こっている可能性がある。他産業の最近の労災の実情や取り組み事例なども参考にするとよいと思う(小松原委員)。
地元にとっては、安全文化について、検証委員会で評価して大丈夫ですと言っても、法令上のトラブルが散見されてくると、安全文化なんてあったものではないということになるので、現在、安全文化評価の結果評価の中で実施されている組織要因も含めたトラブルの分析とそのフィードバックは大切だと思う(増田委員)。
原子力発電所では、トラブルが起きてもシステム上きちんと感知、チェックされて、危険が広がらない仕組みになっているということが伝わるメッセ-ジが少ないと感じているので、情報の発信時にはこの点を心がけてほしい(増田委員)。
原子力に限る話ではないが、最近は、作業がかなり細分化しているので、自分がやっていることが全体の中でどのような位置づけになっているのかという、全体の中で自分をみる機会がなくなってきている。自分が何かトラブルを起こした時に、それがどこまでどのように波及するかについて、あまり意識していないので、個々の作業が他の作業にどのように影響を与えるのかということを理解してもらう工夫が大切だと思う(田中委員)。
[その他]
若手社員の育成策として、保修新規配属者を対象とした勉強会は、発電所で主体的に取り組まれている良い事例だと思う(槇村委員)。
広報誌などにおいては、どのようなことが掲載されたかによって、読者の反応が違うと思う。情報提供のタイミングなど、どのように社会に伝えていくかという観点も大事だと思う(槇村委員)。
前年度やや問題であったものがどのように改善されたかを監査で確認することは、自分達がどのように考えて活動しているかを確認することであり、重要である。考えていくことが文化である(田中委員)。
    5-4.その他報告事項について
       その他報告事項として、原子力事業本部から、「美浜発電所1号機高経年化技術評価の概要」、「MOX燃料調達に関する進捗状況」、「大飯発電所の燃料集合体漏えいに係る原因と対策」、「中国電力株式会社島根原子力発電所の保守管理の不備」について報告。なお、「中国電力株式会社島根原子力発電所の保守管理の不備」については、今後予定されている中国電力の調査結果の公表等を受けて、次回検証委員会でもその内容等を報告する。
     
<意見等>
島根原子力発電所の保守管理の不備に関連して、関電の保修・機器管理の仕方で、管理漏れや不適合が生じ得ないのか、保修後の入力誤りによる管理不備が生じ得ないのかなど、関電の管理の仕組みの脆弱性の有無を確認するとよい(小松原委員)。
島根原子力発電所の保守管理の不備について、現在の限られた情報の範囲内とはいえ、関電の現状を対比、整理し、関電において同様の問題が生じないかを検討している取り組みは、安全を先取りする姿勢として安全文化上、評価できる(小松原委員)。
今回の島根原子力発電所の事例のように、点検を実施していないものを点検済みとしたものについて機械システムだけで防ぐことは難しい。島根の事例から、関電としての教訓を導き出し今後に生かすことが大切である(田中委員)。
    5-5.平成22年度の検証委員会の進め方について
       平成22年度の検証委員会の進め方について経営監査室から提案し、審 議。
     
<審議結果>
平成22年度上期(第15回検証委員会)の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
     
検証テーマ 視  点
美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況
運転中立ち入り制限に関する施策が適切に実施されているか。
安全文化の醸成状況
中間評価が適切になされているか。
*「安全への取組」については、必要に応じて取り上げる。

<配付資料>
・ 議事次第 [PDF 10.5KB]
・ 第13回原子力保全改革検証委員会でいただいた意見への対応状況について [PDF 15.7KB]
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策 実施状況について [PDF 901KB]
・ 安全文化評価の結果について [PDF 472KB]
・ 重点施策の実施結果について [PDF 614KB]
・ 美浜発電所1号機高経年化技術評価の概要について [PDF 128KB]
・ MOX燃料調達に関する進捗状況について [PDF 207KB]
・ 大飯発電所の燃料集合体漏えいに係る原因と対策について [PDF 326KB]
・ 中国電力(株)島根原子力発電所の保守管理の不備について [PDF 81.7KB]

増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から) 佐藤委員長、東副委員長(左から)
増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から)
佐藤委員長、東副委員長(左から)
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用語解説

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