原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2006年4月25日



第4回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止に係る具体的方策の実施について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、「原子力保全改革検証委員会」を設けております。

 原子力保全改革検証委員会は、平成17年4月に設置後、四半期ごとに行動計画に基づく再発防止対策の実施状況の検証を行ってまいりました。各回の委員会では、重点的に検証するテーマを定め、順次検証するとともに、再発防止対策全体についても実施状況の検証を行い、審議結果を取りまとめています。また、委員会で各委員から出された意見については、次回の委員会で意見に対する対応状況を委員会に報告し、了解を得ることとしています。

 第4回検証委員会では、これまで未検証であった「教育の充実」や「計画、実施、評価等の保守管理を継続的に改善」等の対策について検証を行うとともに、刻印問題を受けた強化充実策を含め、個別対策の検証が一巡することや当社自らの全体評価を終えていることから行動計画全体の評価についても検証を行いました。その結果についてお知らせいたします。

1.日 時 平成18年4月18日(火) 13時30分~16時50分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 大森 政輔 (弁護士)
副委員長  【社 外】  慶次 (大阪大学名誉教授)
委員  【社 外】 黒田 (日本ヒューマンファクター研究所 所長)
   【社 外】  由紀子 (都市生活研究所 所長)
   【社 外】 政野 澄子 (福井県女性エネの会 会長)
   【社 外】  宮村 鐵夫 (中央大学教授)
   【社 外】 向殿 政男 (明治大学教授)
   取締役副社長 齊藤 紀彦  
   常務取締役   小笹 定典  
   常務取締役   篠丸 康夫  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶
  【大森委員長挨拶骨子】
    本委員会もすでに3回の会議を経て、前回までの委員会で、事故の直接原因である2次系配管管理への取り組みが確実に実施され、技術基準不適合の是正処置が完了しているとともに、個別対策の展開等で、対策前の問題点の改善が着実に実施されていることを確認している。
    残る問題は、再発防止対策の継続的な改善への取り組みによる地元信頼の回復、再構築である。
    本日は、まず個別には未検証の対策について、重点的に検証を行なうと共に、関西電力自らも全体評価として、2度にわたりマネジメント・レビューを行ったことを踏まえ、継続的改善に向けての行動計画全体の評価についても審議をしてまいりたい。
    なお、3月22日には、大飯発電所の廃棄物処理建屋において火災が発生している。本件についても本日、会社から説明を受けた上で、委員から忌憚のないご意見をいただきたい。
       
5.議事概要
    5-1.第3回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第3回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、報告・審議し、了承。
    5-2.再発防止対策の実施状況の検証について
    (1) 平成17年度の実施状況
       原子力保全改革委員会事務局から、平成17年度の全体の実施状況について、報告・審議。
     
<審議結果>  
検証委員会は、平成17年6月に第1回の会議を開催して以来、これまで四半期ごとに、独立した立場で、関西電力の行動計画に基づく膝詰め対話をはじめとする再発防止対策の実施状況の検証を行ってきたが、平成17年度第4四半期末において、配管刻印問題を受けた強化・充実策も含め、再発防止対策が計画に基づき着実に実施され、いわゆる計画-実施-評価-改善(PDCA)のサイクルにおいて全ての対策が評価・改善段階に移行していることを確認した。
今回重点的に検証を行なった「保守管理の継続的改善」や「教育の充実」、さらには「再発防止対策を確認し、評価する仕組みの構築」等の取り組みは、計画に基づき着実に対策を実施すると共に、評価から抽出された課題を確実に改善に結び付けている。
また、その他の個別対策についても同様に評価から課題を抽出し、必要な改善に結び付けており、個別対策全体としては計画通りPDCAを一巡させ、自律的に改善を行っている。
行動計画全体の評価も、トップ自らが行なうマネジメントレビューを通じて確実に実施されている。さらには外部の意見から抽出した課題も踏まえ、改善に取り組むこととしている。このように関西電力はトップ主導のもと着実にPDCAを回して行動計画の実践に取り組んでいることから、再発防止対策は継続的改善が自律的に進む程度の段階に至っていると評価する。
しかし安全文化の構築は一朝一夕にできるものではなく、これら一連の取り組みが持続的に行われていく必要がある。ついては今後、現場第一線業務における再発防止対策の自律的取り組みを検証すると共に、トップマネジメントの指示した重要な対策の実施状況について引き続き検証を行っていくこととする。
   
<意見>  
トラブルを起こさず安全に運転を継続することが第一であるが、トラブルが発生した時には、リスクアセスメントの手法等も活用して地元の理解が得られるように速やかに説明することが重要である。(黒田委員、向殿委員)
今後、美浜発電所3号機の運転を再開することになった場合、検証委員会での検証結果等、運転再開に至るまでの経緯をきちんと地元に周知広報するようにしてほしい。また、運転を再開して、すぐに何かトラブルが起こるといったことのないよう、運転再開にあたっての点検は慎重を期してほしい。(政野委員)
この4月に労働安全衛生法が大きく変わったので労働安全衛生マネジメントシステムにも反映させる必要がある。(黒田委員)
労働安全衛生マネジメントシステム等から得られる情報、特にハットヒヤリ等の情報は、上手に活用すること。電力間の情報交換が有効だが、情報過多では消化不良となるので、ベテランによる上手な整理も肝要である。(宮副委員長)
    (2) 第4四半期の検証テーマの実施状況と監査結果
    a. 教育の充実
 
 原子力保全改革委員会事務局から、「教育の充実」の取り組み状況について、また品質・安全監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
再発防止対策に係る教育の充実については、事故原因の要因の除去につながる教育項目・内容を抽出するプロセスを明確にして教育計画を策定している。これを個別の教育計画に展開し、これに基づき、計画・実施・評価・改善が確実に行われている。
一方、教育受講者が計画数に満たない場合もあったが、それらについては必要な対策が講じられている。
また、業務部門から基本教育計画の変更の依頼がある場合あるいは教育結果に関する意見で計画に反映する必要がある場合には期中において発生した場合でも直ちに検討し、計画の改善につなげている。さらに年度を通しての教育結果についても全体の評価を行い、次の教育の改善につなげている。
   
<意見>  
個々の教育のPDCAを回しているのはよいことであるが、教育計画の前提として、現場の悩みを現場と共有していることが大切。教育受講後のレポート等を分析して、共通の悩みが浮き上がってくれば、業務の見直しや次の教育計画にフィードバックしていくようなことに努めてほしい。さらに外部環境の変化を踏まえた人材育成のあり方については、原子力事業本部内のみでなく、本店大としても積極的にコミットメントしていくことを期待したい。(宮村委員)
安全を築くのは「人」であるので、安全文化の構築のためにはきちんと教育を位置づけることが必要である。また、経営者倫理が重要であり、それが下まで伝わって全体の倫理が出来上がることを認識して倫理教育を行う必要がある。(向殿委員)
大学の理系においては技術者倫理の問題に取り組むことは必須になってきている。原子力学会でも倫理規定が定められている。企業においてもそうした問題をこれまでにも増して、自ずから取り上げるようにすることが重要である。(宮副委員長)
新入社員の時から関西電力の安全文化を自分たちが担うという教育が、非常に大切である。(篠委員)
危機意識を高める事例研修結果を業務に活かして行く際には、例えば業務プロセスにおける作業ステップで万一問題が生じればどういう結果につながっていくのかということまで考えて、要領書等を進化させていくことも大切である。(宮村委員)
       
    b. 計画、実施、評価等の保守管理を継続的に改善
 
 原子力保全改革委員会事務局から、「計画、実施、評価等の保守管理を継続的に改善」の取り組み状況について、品質・安全監査室から、同取り組みの監査結果について報告・審議。
     
<審議結果>  
『保守管理方針の明確化、基本的な考え方の徹底』については、計画に基づき、保守管理方針を明確化し、その行動規範となる基本的考え方を社内標準に明記し、保守管理関係者に確実に周知している。
また、事業本部は、保守管理方針に対応した保守管理目標、活動計画をルールに基づき適切に策定し、発電所の目標に展開するとともに、目標達成のための活動計画につなげている。
これらの活動状況は、ルールに基づき定期的に品質保証会議等で評価され、必要な改善を活動へ反映させる等、目標の達成に向けた取り組みが着実に実施されている。
また、全体の保守管理目標等の達成状況は、マネジメントレビューにおいて経営トップにより評価され、次年度のさらなる改善につなげている。
調達管理については、計画に基づき品質保証等の観点から検討し、役割分担の『原則』の策定を行っている。
さらに、『役割分担案』の信頼性を上げるため、発電所での検討対象工事を充実、追加し、業務実態とのギャップを補足し、改善に結び付けている他、メーカ、協力会社とのコミュニケーションも確保し、抽出された課題を改善し、H18年度からの展開に結び付けている。
   
<意見>  
保守管理方針等の組織全体への浸透に際しては、社員の階層・属性により把握しておくべき背景情報の内容が異なるということをよく理解・留意して、浸透方法について工夫してほしい。(宮村委員)
   
    c. 監査の充実
       原子力保全改革委員会事務局から、「監査の充実」の取り組み状況について、品質・安全監査室から、同取り組みの監査結果(*)について、報告・審議。
(*)本取り組みの活動主体である品質・安全監査室の原子力監査グループに対し、同室の原子力保全改革検証グループが監査を実施。
     
<審議結果>  
「ベース業務に係るプロセス監査の実施」、「品質・安全監査室の若狭地域への駐在」、さらには「外部監査の導入」といった「監査の充実」の取り組みについては、ねらいを明確にして、計画を策定し、着実に実施している。
その中で、外部監査の結果報告の際、より優れた運用を期待して提起された改善要望については着実に対応が図られている。また、外部監査自体の評価を適切に行う等、「監査の充実」の各々の取り組みは、適切に評価のうえ、必要な改善策を講じている。
さらに、「監査の充実」に係るこれらの実施状況と、「監査の充実」の取り組みにより充実が図られた監査に基づく監査結果は、マネジメントレビューに報告され、評価のうえ、必要な改善に結び付けられている。
   
       
    d. 地域との共生
 
 原子力保全改革委員会事務局から、「地域との共生」の取り組み状況について、品質・安全監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
「地域との共生」の取り組みについては、地域共生本部は、福井県「エネルギー研究開発拠点化計画」に基づき、取り組み内容やスケジュールを明確化した方針を策定し、これに基づき、高経年化対策等の取り組みを着実に実施している。
また、取り組み体制について評価を行ない、地域とのコミュニケーションをさらに強化し、取り組みを推進していく観点から、体制の強化を図るという改善を加えながら取り組みを進めている。
   
<意見>  
地域共生に関し、地元の悩みを聞いて、共有化し、一緒になって具体的な対策につなげていくことが大切。また、このような地元とともに悩み、解決していくといった取り組みをお知らせしていくことで、リスクコミュニケーションも高まり、地元の安心につながるのではないか。(宮村委員)
福井県の小中高校におけるエネルギー教育をさらに充実するように、関西電力も地域と一体となって取り組んでほしい。(政野委員)
   
       
    e. 再発防止対策を確認し、評価する仕組みの構築
 
 原子力保全改革委員会事務局から、「再発防止対策を確認し、評価する仕組みの構築」の取り組み状況について、品質・安全監査室から、同取り組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
再発防止対策を確認し、評価する仕組みについては、原子力保全改革委員会、原子力保全改革検証委員会を設置するとともに、地域共生・広報室等が再発防止対策の取り組みをお知らせする仕組みを構築している。
この仕組みに基づき、原子力保全改革委員会、原子力保全改革検証委員会、地域共生・広報室等は、刻印問題に起因する再発防止対策の実施計画の強化、充実を行い、その評価・お知らせを行う等、再発防止対策を推進・評価し、お知らせする取り組みを着実に実施している。
また、これらの仕組み全体の評価を行なうとともに、お知らせの活動については、福井県全域に拡充した広報活動を地元の目線に立って行なうという、さらなる改善の方針を決定している。
   
<意見>  
県民の意識を定量的に把握する上で、信頼性の高い調査方法を検討していく必要があるのではないか。(篠委員)
福井県全域で配布することになった広報誌で、大飯発電所の火災に関して中間報告の形でお知らせしたり、広報誌を県民の意見も取り入れながら編集していくことで、関西電力の取り組みに対する県民の理解もより深まるのではないか。(政野委員)
CMや広報誌では、社員の個人名を出してメッセージを発していくことで、社員一人一人が責任をもって業務に取り組んでいるさまがより実感をもって訴求できるのではないかと思う。(篠委員)
   
     
    5-3.平成18年度の検証委員会の検証テーマについて
       品質・安全監査室から平成18年度の検証の基本的考え方、平成18年度第1四半期の検証テーマ、検証の視点について提案・審議。
      <審議結果>
 平成18年度第1四半期の検証テーマ、検証の視点については、次のとおりとすることで了承。
       
     
テーマ 視  点
労働安全活動 労働安全衛生マネジメントシステムの試行結果を評価・改善し、本格実施につなげているか。
定検工事における再発防止対策の実施状況 行動計画の個別対策が現場第一線で自律的に実現されているか。
     

 

<意見>  
高経年化対策について、原子力学会等でロードマップを作成しており、それらに基づき着実に推進する必要がある。そうした中で関西電力がリーダシップをとることを期待する。(黒田委員)
安全を守るのもコミュニケーションをとるのも「人」であるので、平成18年度検証テーマについては、「人」も切り口のひとつに加えたほうがよいのではないか。(篠委員)
   
    5-4.その他報告事項
       原子力事業本部から大飯発電所3,4号機廃棄物処理建屋での火災について報告。
     
   
<意見>  
大飯発電所の火災については、協力会社の関係を含め、火災の再発防止策をしっかりしてほしい。(政野委員)
   

<配付資料>
・ 第3回原子力保全改革検証委員会における委員意見への対応状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策実施状況について
・ 配管刻印問題に対する再発防止対策の実施状況について
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施計画
・ 大飯発電所3,4号機 廃棄物処理建屋での火災について

向殿委員、宮村委員、政野委員、篠崎委員、黒田委員(左から) 大森委員長、宮崎副委員長(左から)
向殿委員、宮村委員、政野委員、
委員、 黒田委員(左から)
大森委員長、宮副委員長(左から)
第4回 原子力保全改革検証委員会
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用語解説

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