原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第27回 原子力安全検証委員会

 第27回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2023年度上期の進捗状況については、2023年11月17日にお知らせ済み。

1.日時 2023年11月21日(火)13時30分~16時30分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 社外 上野 うえの   友慈 ゆうじ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口 やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 公益財団法人原子力安全研究協会理事)
 
(委 員) 社外 遠藤 えんどう   富美夫 ふみお (元福井新聞社編集局長)[欠席]  
  社外 大場 おおば   恭子 きょうこ (長岡技術科学大学准教授
 国立研究開発法人
 日本原子力研究開発機構技術主幹)
 
  社外 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  社外 永田 ながた   やすし (早稲田大学教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
白銀 はくぎん   隆之 たかゆき
  取締役
代表執行役副社長
荒木 あらき   まこと
(幹 事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
上野委員長挨拶骨子
  • ○関西電力は、本年度、高浜発電所1号機および2号機を再稼動されて原子力発電所の7基運転・4基廃止措置の体制を実現され、地元の皆様のご理解のもと、現在、各原子力発電所において、安全・安定運転に取り組まれていると承知している。
  • ○この高浜発電所1号機および2号機は、いずれも約12年振りの再稼動であり、かつ、いずれも40年を超える原子力プラントであったことから、再稼動にあたっては、十分な安全対策を講じられるなど万全の準備をされたものと思う。
  • ○引き続き、原子力発電所の運営にあたり、安全最優先の理念のもと、安全性向上のために必要な体制を構築され、また、必要な人材の確保や育成にも配意してもらいたいと思うし、さらに、地元の皆様はもとより、広く社会の皆様のご理解を頂けるようにしてもらいたいと思う。
  • ○関西電力では、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、再発防止対策を講じられるとともに、原子力安全文化醸成活動を推進され、さらには、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、自主的かつ継続的な安全性向上の取組みをされている。
  • ○当委員会は、これらの取組みにつき、独立的な立場から検証し助言を行うことによって、原子力発電の安全の確保をより確実なものとすることを目的としており、本日は
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
    • ・当委員会委員の意見を踏まえた取組状況
    について、説明を受け、審議する予定にしている。
  • ○委員の皆様には、ご専門分野の立場から、また社会一般の立場から、ご検証いただき、忌憚のないご意見・ご助言を賜るよう、よろしくお願いする。
5.議事概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2023年度上期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[協力会社]
  • ○高浜発電所1、2号機の再稼動に向けた取組みにおいて、協力会社・メーカーとともに行う現場点検は一体感が醸成される非常に良い取組みであり、続けてほしい。協力会社と関西電力は、受注者・発注者の関係であるものの、フランクに意見を聞き取り、現場の作業改善の提案等をできるだけ採用することによって、協力会社のインセンティブにもつながる。
    (山口副委員長)
  • ○協力会社の良好事例の共有は有効であり良い取組みである。ただし、同じような情報の繰り返しの発信は形骸化を招くので、取組内容を深く聞き取り、様々な形態をもつ協力会社において実施し易くする工夫や本当に優れた良好な取組みを表彰する等の工夫をされたい。
    (大場委員)
  • ○米国の発電所の事例からも、協力会社等の要望に対し、出された意見のすべてに返答する姿勢が重要である。こうした姿勢がみえると、意見を出した方もうれしいし、「また言ってみよう」となる。協力会社の信頼向上にもつながる。
    (大場委員)
[設備保守・管理]
  • ○安全・安定運転の実績を積み重ね、そのデータを蓄積していくことは、事故発生防止の取組みと同等に安全上重要なことである。加えて、振動測定箇所の汚れが測定値に影響を与える可能性についての紹介があったが、振動測定に限らず計測データの信頼性を確保することも重要である。疑いの目でデータを見ることで、プラント異常の早期検知にもつながる。
    (小澤委員)
  • ○施工不良に起因する設備故障においては、新品の時は問題がなくとも、時間の経過とともに顕在化するケースもあるので、点検にあたってもそのような視点を持っていただきたい。
    (小澤委員)
[再稼動に向けた取組み]
  • ○再稼動に向けて新たな取組みを実施したことは素晴らしい。ただ、継続にあたっては現場の負担も考慮すべきである。資源は限られているため、良い受止めの声も大切にしつつ、取組みの効果をチェックした上で、時にはいくつかの取組みを1つにまとめる等も検討しながら、継続を判断すべきである。
    (大場委員)
  • ○高浜発電所1、2号機再稼動にあたり、原子力分野以外の技術者、協力会社、OBに点検作業に参加してもらったことは素晴らしい取組みだと思う。持続的な体制確保の観点からも、OBの継続的な活用を検討してはどうか。
    (上野委員長)
[ワークライフバランス]
  • ○昨今、休日や夜間の勤務がある職種そのものが、若い人に忌避されることも多い。優秀な人材を確保するためにも、効果的かつ合理的な休日・夜間体制を考えてみてはどうか。ワークライフバランスの観点を踏まえた施策の検討が必要だと考える。
    (大場委員)
[トラブルの俯瞰的な分析と対策]
  • ○トラブルの俯瞰的な分析と対策について、施工不良の分析結果とそれを踏まえた具体的な対策のつながりが明確でない。ストーリーを意識して記載してほしい。
    (永田委員)
[ベンチマーク活動]
  • ○ベンチマーク活動について、関西電力には、リーダーシップを発揮し、日本の原子力事業の安全を底上げするという気概で取り組んでもらいたい。現状、事業者によって取組みの程度にばらつきが生じていると感じており、例えばJANSI(原子力安全推進協会)と連携し、グッドプラクティスを全国の原子力発電所に展開し、安全の底上げをしていくことが重要である。
    (山口副委員長)
【ロードマップ】
[持続可能な体制構築]
  • ○今後、3発電所の持続的な運営体制を構築するために何をすべきであるか、人員を効率的・実効的に運用する考え方の整理、要員面の懸念事項を丁寧に分析し、必要な対策を講じてほしい。
    (山口副委員長)
  • ○従業員の離職について、従業員満足度といった定量データやアンケート結果等を併せて提示していただけると、より具体的な議論や改善への提案につながると思う。
    (永田委員)
  • ○従業員の離職について、どういう世代がどういう理由で離職しているかを分析してみてはどうか。
    (小澤委員)
  • ○離職防止のためには、快適な寮の整備等、居住環境整備も重要と考える。
    (上野委員長)
  • ○要員不足の対策として、業務のスクラップアンドビルドも考えるべき。
    (上野委員長)
[ロードマップ報告書]
  • ○ロードマップにQRコードを付け、より詳しい情報を見てもらう取組みは良いことだと思う。今後は、ロードマップ自体のQRコードを広く発信すること等によって、より多くの人に見てもらえるように工夫してもらえればと思う。
    (大場委員)
  • ○ロードマップのダイジェストの見出しは、取組みの効果を記載すると、よりわかりやすくなる。
    (大場委員)
  • ○ロードマップについて一般の人に興味をもってもらうために、例えば、この半期で注力した取組みを際立たせるような工夫を考えてはどうか。
    (小澤委員)
  • ○ロードマップの資料の記載方法をルール化したことは良い取組みである。記載上のノウハウをチェックポイント化して確認するようにすれば、品質やわかりやすさの安定化を図ることができる。
    (山口副委員長)
  • ○高経年化プラントの運転継続について、40年以降の運転に不安を持っている方もいると思われるし、高浜発電所1号機については、来年50年を迎える。工学的に安全性が確保されていることを前提として、高経年化プラントの運転の安全性に関し、さらに安心してもらえるようなメッセージを出すことも考えてはどうか。
    (上野委員長)
[社達の浸透]
  • ○社達の浸透について、テスト等を用いて理解度を確認する考え方もある。
    (永田委員)
  • ○社達の浸透を目的に、内容を解説するメールを1回きりではなく何度も繰り返し送付していることは良い取組みである。以前のメールを参照できるリンクをつける等の工夫があるとなお良いと思う。
    (大場委員)
[オーバーサイトレビュー会議]
  • ○オーバーサイトレビュー会議が2度も延期された件について、インプット情報が揃わなくてもやれるところだけやって、揃っていない部分は後日対応するというような管理をするべきである。
    (永田委員)
  • ○オーバーサイトレビュー会議の目的を達成するために、定期的な開催が必要なのか、この会議に具体的に何を求めるのかを検討すべきである。
    (山口副委員長)
[DXの活用]
  • ○DXの活用について、法令手続きの申請漏れやトラブル防止に限定するのではなく、業務効率化と品質向上といった広い視点での取組方針を検討されたい。
    (山口副委員長)
[その他]
  • ○福島第一原子力発電所事故から12年経った今、当該事故が起きる前とは異なり、現実に起きた重大事故があるからこそ感じる「事故を起こしてはいけない」という気持ちがあると思う。そのためにも、「事故を起こしてはいけない」という気持ちを強く持つための取組みもしっかりやってほしい。
    (大場委員)
  • ○事故対応において、防護服を着用した作業では、水分補給が非常に重要な問題となる。他の分野の既存の技術で対応できるものがあるかもしれないので、検討してほしい。
    (大場委員)

以 上

用語解説

事業概要