原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第26回 原子力安全検証委員会

 第26回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2022年度下期の進捗状況については、2023年5月23日にお知らせ済み。

1.日時 2023年5月26日(金)13時30分~16時40分
2.場所 関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
関西電力株式会社 東京支社(千代田区内幸町)
 ※ビデオ会議システムにより開催
3.メンバー
(委員長) 社外 渡邉 わたなべ   一弘 かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 社外 山口 やまぐち   あきら (東京大学名誉教授
 公益財団法人原子力安全研究協会理事)
 
(委員) 社外 荒木 あらき   孝治 たかはる (関西大学教授)  
  社外 遠藤 えんどう   典子 のりこ (慶應義塾大学特任教授)  
  社外 遠藤 えんどう   富美夫 ふみお (元福井新聞社編集局長)  
  社外 小澤 おざわ   まもる (関西大学名誉教授)  
  関西電力送配電
株式会社
代表取締役社長
土井 どい   義宏 よしひろ
  執行役常務 池田 いけだ   雅章 まさあき
(幹事) 経営監査室長 多田 ただ   充宏 みつひろ
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • ○政府では、GX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく、その実現に向けた取組みを進めている。
  • ○今月に入って、GXを総合的かつ計画的に推進するための戦略を策定・実行するためのGX推進法も成立した。
  • ○とりわけ、ロシアによるウクライナ侵攻の継続が生む様々な状況の影響もあって、エネルギー安定供給の確保が喫緊の課題となり、徹底した省エネに加え、再生可能エネルギーや原子力発電などエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換を進めることが、その取組みの重要な柱の一つになっていることは、皆さまご承知のとおりである。
  • ○このような状況において、関西電力は、新規制基準施行後、各原子力発電所において様々な安全性向上対策に取り組まれ、高浜発電所1号機、2号機の再稼動、7基運転体制に向けて着実に準備を進めていると聞いている。
  • ○これまでも、この場で繰り返し、繰り返しお願いしてきたことではあるが、ここでもお願いしたいのは、引き続き、これら取組みを含む原子力発電所の運営は、安全最優先で進めていただきたいということである。そして、関西電力の安全最優先の姿勢に支えられた安全性向上に資する取組みに対して、国民の理解と信頼をさらに積み重ねて行っていただきたいのである。
  • ○改めて申すまでもなく、当委員会の設置目的は、美浜発電所3号機事故を契機として
    • ・社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策を検証すること
    • ・原子力安全文化醸成活動、そして福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについて助言を行い、これら継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすること
    にある。
  • ○どうか、原子力に携わる皆さんには、どのような環境・状況下にあっても、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意を原点に、同事故への反省と教訓を基に蓄積され、実行されてきた様々な取組みを、常に念頭に置いて、日々の業務に取り組まれることを心からお願いする次第である。
  • ○当委員会もまた、その取組みを、社外の眼で検証・確認するという役割を、今後とも変わりなく果たして参りたい。
  • ○さて、本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組状況」に基づき、
    • ・美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況および監査結果
    • ・「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
    • ・2023年度 検証計画 ほか
    について検証・審議する。
  • ○委員の皆さまには、従前同様、ご専門分野の眼から、また社会一般の眼から、ご検証いただき、忌憚のないご意見、ご助言を賜り、活発にご議論いただくよう、どうぞ、よろしくお願いする。
5.議事概要
5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況および監査結果
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について原子力事業本部から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2022年度下期の取組状況について経営企画室から、また同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
<意見>
【美浜発電所3号機事故の再発防止対策】
[法令手続き不備]
  • ○法令手続きの不備事案は軽重様々であるが、社外一般から見ると大きな問題と捉えられる。再発防止対策として、教育や周知も重要であるが、それだけでは時間の経過とともに効果が薄れて行く恐れがある。例えば、物品であれば、実物に注意喚起の張り紙をするなど、事象に応じて目に見えるような形での対策の検討・実施も重要である。
    (渡邉委員長)
[設備不具合]
  • ○経験の少ない作業員にとっては、注意事項を伝えるだけでなく現場の状態を見える化する工夫をしないと、トラブルを防止するのは難しい。また、現場における作業員等の関係者間のコミュニケーションも重要である。
    (小澤委員)
  • ○トラブルの俯瞰的な分析と対策について、複数のトラブルの根本にある共通要因の分析およびその抜本的な対策の検討に取り組まれようとしていることは理解する。しかしながら、技術伝承のような難しい課題に対して、まだまだ対症療法的な印象を受ける。一朝一夕では難しいので、今後、取組みの効果をしっかりと確認しながら進めて行く必要がある。
    (山口副委員長)
  • ○大飯発電所でのマネジメントオブザベーション※の取組みは、大変良い。上から目線の指導ではなく、関西電力の管理職が自ら勉強して、実施することは大変良いことで継続してもらいたい。関西電力の管理職には、協力会社と一緒に学ぶ姿勢を今後もしっかりと持っていただきたい。
    (遠藤富美夫委員)
  • ○トラブルを減らすために、若手社員に「マイプラント意識を持ってきちんと対応するように」といった精神論はなかなか通じない。それぞれの作業を忠実に実施すれば間違いなくできるといった従来とは違ったアプローチの仕組みを作っていくことも必要ではないか。
    (小澤委員)
  • ○高浜4号機の原子炉自動停止があったが、地元はかなり大きな衝撃を受けた。また、原因究明までに相当な時間がかかったが、その間の地元の不安も大きなものがあった。トラブルが続く共通の要因を究明してもらいたい。
    (遠藤富美夫委員)
  • ○原子炉自動停止のような重大な情報は、標準化された社内ルールに基づき、必要な箇所に適切なタイミングで情報共有されることが重要である。
    (遠藤典子委員)
[原子力部門のDX]
  • ○DXについて、原子力発電の重要性に鑑みて、システムを絶えず見直す、確実なデータの入力確認を行うなど、システムがブラックボックス化してしまわないよう十分に検討することが必要。また、利便性の向上によりシステムのセキュリティを損なうことのないよう、十分に留意する必要がある。
    (小澤委員)
  • ○DXについて、現在、ChatGPTを代表とする生成AIの進化が目覚ましいため、DXの中期計画においてその活用に関して継続的な検討が必要。生成AIは、事務作業、教育、監査等のほか、原子力の安全をサポートするシステムとして有用であり、生産性の向上のために活用を検討してほしい。
    (荒木委員)
[その他]
  • ○品質管理の世界では、品質と安全は同時に追求できるものとして個別に扱っている。品質と安全は同時達成できるということを、改めて認識してほしい。
    (荒木委員)
  • ○安全性向上に関しては、電力業界大で他電力の良い点を水平展開する取組みが行われており、関西電力も良好事例をたくさん出している。安全と同様に、人材育成や技術継承、DX等についても、他電力や海外事業者と積極的な情報交換を行い、良好事例を共有してほしい。
    (山口副委員長)
【ロードマップ】
[安全文化醸成活動]
  • ○経営層の安全への想いに対して一定割合の社員が納得できないとあるが、こういった情報は経営層へのフィードバックが重要。現状も対策は取られていると思うが、納得できないという声を極力減らせるよう今後も工夫してほしい。
    (小澤委員)
  • ○社員へのアンケートについて、活動の効果を評価するためには、アクションの前後での変化をデータで分析することが重要である。
    (荒木委員)
  • ○経営学では、リーダーシップの類型として、サーバントリーダーシップや変革型リーダーシップなど代表的なもので8~10程度提案されている。安全を追求するために望ましいリーダーシップのイメージを、理想の姿として共有することが必要ではないか。
    (荒木委員)
  • ○昨年度実施した「経営層がミドル層を支援して課題解決する」という重点施策の評価結果と今年度の安全文化評価結果から、「資源を目に見える形で投入する」という活動につながる関連が見えづらい。安全文化評価は組織の特徴を分析して、課題を挙げていくため、易しいものでは無い。きめ細やかな評価をされていると思うが、定点観測などを用いることにより、分析から次のアクションへの展開を見える化するといった工夫も必要。
    (山口副委員長)
[ロードマップ報告書]
  • ○公開版のロードマップの資料について、分かり易くする努力をされていて、良くなってきているが、今回はやや専門的な表現等に傾いている印象。ご覧になった方の感想を把握してみてはどうか。
    (山口副委員長)
  • ○公開版のロードマップの資料は、年々分かりやすいものに改善され、良くなっていると思う。ただ、時に、その一部に後戻りするような出来が良くないと思われる資料が含まれていることもある。今回も専門的な表現が多く、そのような例の一つと言う外ない。引き続き、読み手の立場になって、分かり易い表記・表現を意識して編集にあたってほしい。
    (渡邉委員長)
  • ○公開版のロードマップの資料を初めて見た方にとっては、まず最初に原子力発電の安全性向上対策等の全体像がないと理解しづらいのではないか。
    (小澤委員)
  • ○公開版のロードマップの資料について、長期運転等については確かに専門用語が多いものの、分かりづらいところが増えているとは感じなかった。まず「とっつきやすいか」、次に「(読んでいて)引き込まれるか」、「説得力があるか」を見ており、広報的には良い資料で、作成上の工夫もある程度のレベルに達している。これ以上わかりやすく伝えるためには、親近感のある人物に解説していただく等の工夫が必要ではないか。
    (遠藤富美夫委員)
  • ※関西電力の管理職による現場観察

以 上

用語解説

事業概要