原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

2014年6月23日


第6回原子力安全検証委員会

 第6回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止策の実施状況」、「安全文化醸成活動の実施状況」、「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況」について審議が行われ、その結果をお知らせいたします。

1.日 時 平成26年5月12日(月) 13時30分~17時00分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者(敬称略)
(委員長)  【社 外】 渡邉 一弘 (弁護士)
(副委員長)  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
(委 員)  【社 外】 安部 誠治 (関西大学教授)
 【社 外】 岩崎 日出男 (近畿大学名誉教授)
 【社 外】 加賀 有津子 (大阪大学教授)
 【社 外】 橋詰 武宏 (ジャーナリスト)
 取締役副社長
 執行役員
生駒 昌夫  
 常務執行役員 勝田 達規  

4.冒頭挨拶
    渡邉委員長挨拶骨子
     
当委員会は、昨年夏に4名の委員が交替し、12月に新メンバーによる初めての委員会を開催した。その後、原子力を取り巻く話題としては、3月に、原子力規制委員会が、「新規制基準下で九州電力の川内発電所を優先して審査を進める」と決められたこと、4月には、新たなエネルギー基本計画が閣議決定され、「原子力発電は、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。」と示されたことなど、原子力をはじめとする、わが国のエネルギー政策の進むべき方向性に関して大きな動きがあった。このため、原子力の安全性向上の取組みに対しても、今後、ますます社会から注目が集まるものと思われる。
当委員会は、関西電力に美浜発電所3号機事故のようなことを二度と起こさせないという原点を踏まえた上で、関西電力が現在までに行った、または今後、行おうとする原子力安全に関する多種多様な取組みに対し、中立的かつ客観的立場から意見することにより、更なる高い次元に導くことに貢献ができると考えている。
当委員会の議題は、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の実施状況」、「原子力の安全文化醸成活動の実施状況」、「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況」の3つだが、本日は、これらの平成25年度の取組みについて、「定着した再発防止対策が風化することなく、確実に取り組まれているか。」、「見直された安全文化評価の枠組みを理解して、評価が適切に実施されているか。重点施策が、計画通り実施されているか。」、「新規制基準の要求にとどまることなく、更なる安全への取組みが、自主的かつ継続的に進められているか。」といった視点から検証をおこなう。それらに加え、更なる安全性向上への取組みに対してご助言をいただくとともに、平成26年度の検証計画についても審議したい。各委員からは、専門的あるいは社会一般の眼から忌憚のないご意見を頂き、活発な議論をしたい。
     
5.議事概要
    5-1.検証委員から頂いたご意見を踏まえた取組み状況について
   検証委員から頂いたご意見に対する取組み状況について報告し、審議・了承。
<報告内容等>
     
<意見等>
安全文化評価の 「外部の評価」において消費地の声を「地域の声」の指標に追加することを検討するとあるが、地域性や事業者・市民といった立場によっても違ってくるので、属性を考えて、どのような観点で「地域の声」の指標として考えていくのか、今、集まっている資料をベースに、検討を進めてほしい。(加賀委員)
   
5-2.美浜発電所3号機事故再発防止対策の取組み状況および監査結果について
        美浜発電所3号機事故再発防止対策の取組み状況および、同監査結果について報告し、審議。
<報告内容等>
 

[審議結果]

 

<検証の視点>

    「定着した再発防止対策が風化することなく、確実に取り組まれているか。」
 

<確認した結果>

    美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況について、次のとおり確認した。
    再発防止対策に風化の兆しが認められず、日常業務の中で継続的に改善を図っていた。
    再発防止対策における各実施項目が設定された目的等を理解していた。
  <今後注目すべき点>
    美浜3号機事故以降に入社した社員等が増えてくるなかで、事故の経緯や対策立案の背景が関係者に理解されてこそ、日常業務に定着した各対策は意味あるものとなる。日常業務の中で再発防止対策が実施されているかだけでなく、こうした風化防止が新たな施策も含めて取り組まれ、継続的な改善を図っているかについても確認していく。
 

[意見等]

  再発防止対策は、その実施が目的化して形骸化するおそれがあるので、 「なぜそうすることが必要か」という背景にある目的を、経験価値、すなわち「思い」として伝承する取組みは重要である。また、その「思い」については、抽象的な記載にならないよう注意することが必要である。(渡邉委員長)
  風化防止のツールを現場で使用してもらえるように、座学やディスカッション等での使い方を記載したガイドを作成すればいいのではないか。(加賀委員)
  監査のヒアリング時には、問題となる発言がなかったか積極的に拾い出してほしい。それが監査の実力であり、また、拾い出した発言が実施部門の取組みのヒントになると思う。(岩崎委員)
 
   
5-3.安全文化醸成活動の実施状況および監査結果について 
       安全文化醸成活動の実施状況、および、同監査結果について報告し、審議。
<報告内容等>
     

[審議結果]

 

<検証の視点>

   

「見直された安全文化評価の枠組みを理解して、評価が適切に実施されているか。」

「重点施策が計画どおり実施されているか。」

 

<確認した結果>

    平成25年度における安全文化醸成活動の評価、および平成24年度の評価結果より抽出された課題に対する重点施策の実施状況について、次のとおり確認した。
   

シビアアクシデント等に対する取組強化に伴って、評価の枠組みが見直され、評価者は見直された枠組みを理解して、評価を実施していた。

    重点施策は計画通り進捗しており、年度目標の達成状況は評価され、次年度の取組みの方向性が検討されていた。
  <今後注目すべき点>
    ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならないとの考え方が浸透し、活動が実施されているかについて確認していく。
 
     

[意見等]

(事例からの反映)

  規制の枠にとどまらない取組みの中で、海外事例にならって設備等を追加する場合や、JANSIなど外部からの提言を受けた場合に、無条件に取入れたり、従うのではなく、 その設備等が本当に必要かどうかなどを、自ら考え評価する姿勢こそが、安全文化上必要である。(東副委員長)
  他産業の良い例だけでなく、安全文化にほころびが生じて事故を起こした他産業の事例についても調査して、参考としてほしい。(東副委員長)
  過去に前例のない事故をどう防ぐかが重要である。航空会社では80年代からヒューマンファクター等に取り組んでいるので、航空会社における事例を参考にした方がよいと思う。(安部委員)

(安全文化評価)

  安全文化評価における「プラント安全(重大なトラブル、ヒューマンファクターに起因するトラブルなどの発生件数)」や「労働安全(労災、計画外被ばくの件数)」、「社会の信頼(コンプライアンスに係る不適合事象の件数)」の諸指標については、本来ゼロ件を目指すべきで、「経年変化を見て低下傾向だから安心」と認識してはいけない。原子力に関しては小さなトラブルも極めて厳しい眼で見られていることを意識するべきである。(渡邉委員長)
  安全文化評価については、視点3「現場第一線はトップの考え、価値観を理解し、実践しているか」のように、一つの視点に対し、「~を理解しているか」と「~を実践しているか」と2つのことを評価する際、「理解している」ので『良好』と判断する人と、「理解はしているが、実践できていない」ので『改善の余地あり』と判断する人に分かれるので注意が必要である。(渡邉委員長)
 

部門及び発電所による安全文化評価において、「課題なし」とあるが、「課題を見出すには至らなかった」と評価された方がよい。(東副委員長)

  コンプライアンスは単なる法令遵守だけではなく、社会的責任ということも含まれており、広い観点でも見てほしい。(安部委員)
  安全文化評価において、評価者によって評価結果が違うことに対して誰もが最終的な評価結果に納得できるようにするためには、各評価者による評価結果がそれぞれどのような根拠に基づくものなのか、しっかりコミュニケーションを行い、お互いの違いを認識したうえで調整を図ることが必要である。加えて、例えば良好なのか課題があるのかをみる4段階評価を、どちらでもないという中間的評価を加えた5段階評価に見直すなど、評価が本当に違っているのかということを精度よく評価できるように、評価方法の観点からも工夫を図ってはどうか。(岩崎委員)
  安全文化評価の仕方がマンネリ化やパターン化するというようなことがないよう、評価方法がこれで良いかということについても考えてほしい。(橋詰委員)
  安全最優先の取組みや意識に関するアンケートの聞き方に「どちらともいえない」という選択肢を設けることによって、不満・否定の意思がより明確になってきていると思う。そこで出てきた数少ない否定的意見は、従来の否定的意見とは質が違うので、価値ある情報だとの受け止めをして次にどう展開していくか検討されると良い。(岩崎委員)
 

福島第一原子力発電所事故後の原子力を取り巻く社会的な環境の変化を踏まえると、安全文化評価の「外部の評価」における「地域の声」として、防災・避難地域である周辺自治体や消費地の声も捉えていくべきだと思う。(橋詰委員)

(INSSの提言)
  原子力安全システム研究所(INSS)の提言は、重く受け止めて、安全文化醸成活動の改善に努めていただきたい。(岩崎委員)

(俯瞰人材について)

  経営幹部は、トップダウンとボトムアップのバランスをとりながら現場第一線と情報共有を図り、状況を把握することが望ましい。そのためには、例えば、臨時業務に追われるあまり、恒常業務を遂行する上での気がかり事項について言いにくい雰囲気が生じないよう、臨時業務と恒常業務の双方を俯瞰して、幹部に指摘する役割の者が現場にいると良い。(渡邉委員長)
  原子力安全システム全体を俯瞰する人材は、縦割りの弊害を打破し横串を刺すのに必要である。ただ、日本はタテ社会だから、横串は苦手なので、役割の明確化、横との連携方法について、具体的に決めておかないと混乱する。(渡邉委員長)
  これからの原子力は、福島第一原子力発電所事故以降、全く新しい視点で捉えていく必要がある。そのためには、関西電力が進めているように発電所全体を俯瞰できる人材は必要であるが、専門的・技術的な知識だけでなく、人とのつながり、特に社外との連携が図れる人材の育成に取り組んでほしい。(橋詰委員)

(地元地域との共生)

  電力会社が原子力を推進していくためには、地元地域との共生や、正しい情報の共有が大事であり、これは福島第一原子力発電所事故の教訓でもある。関西電力は地域共生を電力会社の中でも他に先がけて実施してきたと思っているが、引き続き、地元地域と一緒に原子力を進めていくという意識を忘れずに、透明性の高い正しい情報を伝えていくことに取り組んでほしい。(橋詰委員)

(要員、業務輻輳)

  新規制基準対応と長期プラント停止という平時ではない状況への対応は大切だが、それらの対応に伴い、要員が増えた部署と要員が減った部署、双方について、人の気持ちの面で弱体化しないよう留意する必要がある。(渡邉委員長)
  業務が特別な状況にあるときに、うまく対応できるのが強い組織であるので、業務輻輳による影響が出ている業務については、社員の意識を評価し、影響が出ないように対応することが望ましい。(岩崎委員)

(リスク評価・伝達の仕組み、機能)

  リスク評価は想定等が難しい面があるが、シビアアクシデントのように発生確率は低いが、いったん起きると被害規模が大きなリスクを評価する仕組みについて、今後考えてほしい。(安部委員)
  トップが現場を視察してコミュニケーションするということも大切ではあるが、いかにリスク等の重要な情報をトップに伝え、経営判断していくかというシステムが機能していることが重要であり、留意してほしい。(安部委員)

(監査について)

  経営幹部自身が原子力発電の安全に対してどれだけ強い意志・意識をもっているかについて、監査部門がどのように確認するか検討してほしい。(岩崎委員)
  監査結果の良好事例や各所の工夫は、被監査箇所だけでなく、関係箇所にも通知して、共有化を図ってほしい。また、そのことを資料に表記するように統一してほしい。(加賀委員)
       
    5-4.原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況および監査結果について
       原子力発電所における自主的・継続的な安全への取組み状況、および、同監査結果について報告し、審議。
     

[審議結果]

 

<検証の視点>

   

「新規制基準の要求にとどまることなく、更なる安全への取組みが、自主的かつ継続的に進められているか。」

 

<確認した結果>

    原子力発電における安全性向上対策の取組み状況について、次のとおり確認した。
   

最新知見や教訓等を反映するしくみの運用が地道に継続されており、安全性の更なる向上を目指した安全対策が、計画に基づき適切に進捗・実施され、その実効性が継続的に維持されていた。

  <今後注目すべき点>
   

安全性の更なる向上を目指し、安全対策が絶えず計画、実施され、その結果を評価し、継続的な活動となっているかについて確認していく。

 
     

[意見等]

  リスクマネジメントという用語が使用されているが、この用語は、どうしてもリスクをマネジメントするというイメ-ジが強いので、必ずしも原子力安全への取組みの趣旨を表現していないのではないか。この用語については、検討していただきたい。(渡邉委員長)
  過去の事故事例をみると、関係箇所の連携不備が弊害になって事故の復旧がうまくできていないことが一般的である。関係部署が連携できる体制を整備し、それを訓練でより精度高く確実なものにしていく仕組みが出来上がってきているという点は、非常によい取組みである。また、それを監査でも良好事例として確認したという点は非常に重要である。(岩崎委員)
  安全性向上に向けて、組織に横串を通して見るような体制を検討する際は、どういう機能、役割を果たすのかについて、具体的にしておくべきだと思う。どのプロセス、どのステップで何をするのか、どのような組織体制としてPDCAを回していくのか、そのような全体像が見える安全システムをまず確立し、横串の機能が加わることによって、そのシステムが問題なく運用できるということが必要である。そのことにより、監査部門が何をチェックすべきかも明確になると思う。(岩崎委員)
  事故が起きた福島第一原子力発電所の現場で、原子力のリスク等を肌で感じることが大事であり、それこそ生きた安全文化の醸成であると思う。ぜひ、機会があれば、現場で学び、その経験を今後の原子力に生かすという姿勢を持ってほしい。(橋詰委員)
    5-5.平成25年度 原子力安全検証委員会の審議結果のまとめ、および平成26年度 検証計画(案)について
     

平成25年度 原子力安全検証委員会の審議結果のまとめ、および平成26年度 検証計画(案)について提案し、審議。

     
[審議結果]
平成25年度 原子力安全検証委員会の審議結果のまとめ、平成26年度 検証計画(案)について了承。
平成26年度の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
<報告内容等>
   
検証テーマ 検証の視点

美浜3号機事故の風化防止への取組み状況

  • ・再発防止対策が実施されているか。
  • ・風化防止が取組まれ、継続的な改善が図られているか。

原子力発電の更なる安全性向上に向けた取組み状況

  • ・ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならないとの考え方が浸透し、活動が実施されているか。
渡邉委員長、東副委員長
渡邉委員長、東副委員長
  第6回原子力安全検証委員会の様子
第6回原子力安全検証委員会の様子
<参考資料>
第5回原子力安全検証委員会後の動き[PDF 137.30KB]
・越前若狭のふれあい 特別号

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用語解説

事業概要