原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第10回 原子力安全検証委員会

第10回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の発展的な整理状況および再発防止対策の実施状況」、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)の進捗状況」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※平成27年度下期の進捗状況については、平成28年5月24日にお知らせ済み。

1.日 時
平成28年5月30日(月)13時30分から16時50分
2.場 所
関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長)
[社外] 渡邉 ( わたなべ ) 一弘 ( かずひろ ) (弁護士)
(委員)
[社外] 安部 ( あべ ) 誠治 ( せいじ ) (関西大学教授)
[社外] 岩崎 ( いわさき ) 日出男 ( ひでお ) (近畿大学名誉教授)
[社外] 橋詰 ( はしづめ ) 武宏 ( たけひろ ) (ジャーナリスト)
代表取締役
副社長執行役員
生駒 ( いこま ) 昌夫 ( まさお )
取締役
常務執行役員
勝田 ( かつだ ) 達規 ( ひろのり )

4.冒頭挨拶

 渡邉委員長挨拶骨子
  • ○様々な報道により既にご承知のことと思いますが、関西電力の原子力発電は、前回の検証委員会以降の半年の間に、かつてないほどの厳しい状況の下に置かれることになった。昨年12月、福井県知事および高浜町長から、高浜発電所再稼動に関する同意の判断をいただき、また、同月、福井地裁で高浜発電所再稼動差止の仮処分に対する異議審において、仮処分命令が取り消されたことから、これらの動きを踏まえ、新規制基準の下、1月に、関西電力では初めてとなる高浜3号機が再稼動を果たした。
  • ○このような過程において、2月には、高浜4号機において、管理区域内の水漏れや、並列操作時に原子炉が自動停止する事象が発生し、さらに、3月には、大津地裁において、高浜3,4号機の再稼動禁止の仮処分の決定がなされ、高浜3号機は再び停止することとなった。このように、関西電力の原子力発電は、稼動と停止の両極端に大きく揺れ動くこととなった。
  • ○しかしながら、美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさせないという思いに基づき「関西電力における原子力発電の安全性向上の取組みを検証・確認する」という本検証委員会の役割は変わることなく、今後も求められていくと考えている。また、関西電力が取組んでいるロードマップ(「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実」)の進捗状況や、社達「原子力発電の安全性向上への決意」の浸透状況等の確認を通じて、原子力発電のさらなる安全性向上に貢献することも期待されていると思う。
  • ○本日の委員会における検証テーマは、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の発展的な再整理状況および取組状況」、「ロードマップの詳細計画の整備状況 および 進捗状況 ならびに 社達の理念を踏まえた具体的な実施状況」の2つであるが、これらについて、「風化防止が取り組まれ、継続的な改善が図られているか」、「社達の「ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならない」との考え方がさらに浸透し、具体的な活動が実施されているか」、および「ロードマップの詳細計画が整備され、それに従って進捗しているか」といった視点から検証する。各委員からは、専門分野の眼、あるいは社会一般の眼から、活発かつ忌憚の無いご意見、ご助言を頂きたい。

5.議事概要

5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の発展的な整理状況、再発防止対策の実施状況、および監査結果について

<報告内容等>
<検証の視点>
  • 「美浜発電所3号機事故の再発防止対策を発展的に整理するにあたり、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえたロードマップと整合しつつ強化されているか」
  • 「再発防止対策が実施されているか」
  • 「風化防止が取り組まれ、継続的な改善が図られているか」

美浜発電所3号機事故の風化防止対策の発展的な整理状況、再発防止対策の実施状況、および同監査結果について報告し、審議。

[審議結果]

<確認した結果>

美浜発電所3号機事故の再発防止対策の発展的な整理状況および取組状況について、次のとおり確認した。

  • ・監査対象とした再発防止対策で、さらなる改善の観点で改善要望はあるものの、自律的な改善が実施されていることを確認した。
  • ・事故の反省・教訓を忘れないための有効な取組みが実施されていることを確認した。
  • ・美浜発電所3号機事故再発防止対策とロードマップとの関連整理についても検討されていた。
<意見>
  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策の見直しについては、対策実施の成果を踏まえて、表現を変えた対策、バージョンアップしている対策、完了した対策等に見直したこと、ならびに、美浜発電所3号機事故再発防止対策とロードマップとの関係整理については、対策実施の成果がどのようにロードマップに反映されているかということなどを、対外的に、分かりやすく説明していただきたい。(渡邉委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策とロードマップとの関係整理については、地元や社会の理解が得られるよう見てわかる工夫をすることが望ましい。一生懸命検討した結果わかって貰えないとすれば良くない。美浜発電所3号機事故から10年経過し、新たなステップに入って整理して行くのは良いことである。一方で、「美浜発電所3号機事故再発防止対策の印象を薄れさせていくのか」と捉えられる懸念もあり、難しい面もあるが、試行錯誤で検討を進めていただきたい。(橋詰委員)
  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策とロードマップとの関係整理において、29項目のうち、整理後のロードマップの取組項目として明示される項目と、項目としては明示されないものとに関係性があることは理解できる。ただ、この明示されない項目について、ランクが下であるかのように受け止められないよう、書き方を工夫することが必要ではないか。(岩崎委員)
  • ○美浜発電所3号機事故再発防止対策とロードマップとの関係整理に関して、美浜発電所3号機事故は単に労働安全の問題だけではなく協力会社も含めた安全文化上の問題もある。一方、ロードマップも単に原子炉安全だけの問題ではないため、それぞれの取組みを単純に労働安全、原子炉安全といった分野ごとに分けない方がよいのではないか。(安部委員)
  • ○協力会社からライブラリに関する意見を寄せてもらう専用メールアドレスを設置したとのことだが、今のところ意見が出てきていないということであり、様々なコミュニケーションの場などを活用して、意見を寄せてもらうきっかけを作ることが必要ではないかと思う。また、寄せられた意見は、例えば「よくあるご質問(FAQ)」のような形でまとめ、共有を図ることを検討いただきたい。(加賀委員)

5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実」(ロードマップ)の進捗状況および監査結果について

<報告内容等>
<検証の視点>
  • 「ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならないとの考え方が浸透し、活動が実施されているか」
  • 「ロードマップの詳細計画が整備され、それに従って進捗しているか」

なお、本議題については、次の取組みについて審議を行った。

  • (1)安全文化醸成活動の詳細計画の整備状況および進捗状況
  • (2)自主的・継続的な安全性向上への詳細計画の整備状況および進捗状況

5-2-1.安全文化醸成活動の詳細計画の整備状況、進捗状況および監査結果について

安全文化醸成活動の詳細計画の整備状況、進捗状況および同監査結果について報告し、審議。

[審議結果]

<確認した結果>

安全文化醸成活動の詳細計画の整備状況および進捗状況について、次のとおり確認した。

  • ・ロードマップの詳細計画が整備され、それに従って進捗していた。また、年度の評価が実施され、次年度の改善が検討されていた。
  • ・「原子力発電の安全性向上への決意(以下、「決意」という。)」の更なる浸透が必要であるものの、「決意」に基づく取組みが具体的に実施され、安全文化評価において、評価され、「決意」に基づく取組みに関する課題・気がかりはなかった。
<意見>

(「決意」の浸透状況に関するアンケート)

  • ○他のアンケート項目は具体的に聞いているが、「決意」の理解度に関する質問で、「特性やリスクについて内容を理解しているか」と、特性とリスクの2つのことを同時に聞いている。このような質問をすると、一方を理解していても、もう一方を理解していないと回答に困ることがあるので、アンケートの結果が正確に出ないことがあると思う。こういった観点も踏まえ、設問を工夫してもいいのではないか。(渡邉委員長)
  • ○「決意」の浸透状況に関するアンケートについて、「理解」という言葉が相手によってどのように受け止められるかをよく踏まえた上で、適切に確認できる質問設計にする必要があると思う。(加賀委員)
  • ○「決意」の浸透にあたっては、「理解」から「行動」に至るまでの段階やプロセスについて、行動変容のステージモデル理論等を参考にすることを検討いただきたい。(加賀委員)

(安全文化評価結果の課題)

  • ○平成27年度安全文化評価で出された課題は、どれも大変なものばかりで、それに対する施策は長期的に取り組む必要があるので、平成28年度は最低ここまでは実施するというような計画性を持って取り組んだ方がよい。(岩崎委員)
  • ○モチベーションの要因には、経済的処遇、組織の中での評価、社会的評価等、様々な要因があるが、モチベーションが低下してくると優秀な人材が獲得できない状況となり、将来、じわじわと影響が出てくる。また、短期的には各職場で仕事への執着心が弱くなり、仕事の精度が落ちてくるといったことも考えられる。これは原子力部門だけの問題でなく全社的にモチベーションの維持・向上に取組む必要がある。(安部委員)

(協力会社アンケート)

  • ○目標を設定してそれに向けた方策を展開していくことが改善の仕組みなので、協力会社アンケートにおいて肯定率を何%にするのか、願望のようなものでもよいので目標を設定した方が良い。(岩崎委員)
  • ○協力会社アンケートについて、昨年と今年の肯定率を比較、検定し、改善していると評価しているが、以前に比べて改善したことを確認するためには、肯定率が悪くなる前の一昨年とも比較、検定する必要がある。(岩崎委員)

5-2-2.自主的・継続的な安全性向上への詳細計画の整備状況、進捗状況および監査結果について

自主的・継続的な安全性向上への詳細計画の整備状況、進捗状況および同監査結果について報告し、審議。

[審議結果]

<確認した結果>

自主的・継続的な安全性向上への詳細計画の整備状況および進捗状況について、次のとおり確認した。

  • ・ロードマップの詳細計画が整備され、さらなる安全性向上に向けた取組み、ならびにその実効性を確保するための活動を適切に実施し、継続的な評価・改善に努めていた。
<意見>
  • ○防災訓練の中長期計画が必要ではないか。(安部委員)
  • ○総合的な防災訓練に関する防災訓練の中期計画を作成しているのであれば、その計画に基づき、今回の訓練が実施されているか、所期の目的が達成されたか、といった視点を監査に取り入れていくことを検討いただきたい。(安部委員)
  • ○リスク認識というのは、その時々の社会の状況や立場等により変わってくる。そのため、相手側のリスク認識を把握した上で、リスクコミュニケーションは何に重点を置いて取組んでいくべきなのか、研修会等の場でしっかりと議論し、リスクコミュニケーションの方向性を共有すべきである。(安部委員)
  • ○地元の同意は、原子力発電の安全性や将来性といった観点だけではなく、色々な人々の思いや県の歴史を深く考慮された上で、判断に至っていることを再認識いただきたい。(橋詰委員)

5-3.原子力安全検証委員からいただいたご意見を踏まえた取組状況について

原子力安全検証委員からいただいたご意見に対する取組状況について報告し、審議・了承。

<報告内容等>

5-4.平成27年度 原子力安全検証委員会の審議結果のまとめ、および平成28年度 検証計画(案)について

<審議結果>
  • ・平成27年度原子力安全検証委員会の審議結果のまとめについて提案し、審議、了承。

    平成27年度 原子力安全検証委員会の審議結果のまとめ [PDF 127.94KB]

  • ・平成28年度の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
    検証テーマ 検証の視点
    • ・原子力発電の安全性向上に向けた取組状況
    • 美浜発電所3号機事故再発防止対策
      再発防止対策が風化することなく、自律的に取組まれているか
    • 当社ロードマップの取組み
      「ロードマップ各項目 」が、「決意」の「安全文化を高め、原子力発電のリスク等を認識し、リスクの継続的な低減等を図り、安全性を向上させる」との考え方に基づいて取組まれているか

    ※「ロードマップ各項目」とは、次の3項目を意味する。

    1. 1.原子力安全の浸透・定着
    2. 2.リスクマネジメントの充実
    3. 3.原子力事業本部における安全性向上に向けた基盤整備

以 上

<参考資料>
越前若狭のふれあい 特別号

渡邉委員長
渡邉委員長

第10回原子力安全検証委員会の様子
第10回原子力安全検証委員会の様子

 


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