原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第14回 原子力安全検証委員会

第14回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※平成28年度下期の進捗状況については、平成29年5月31日にお知らせ済み。

1.日 時
平成29年6月5日(月) 13時30分から17時00分
2.場 所
関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) [社 外] 渡邉 一弘 わたなべ かずひろ (弁護士)  
(副委員長) [社 外] 山口 彰 やまぐち あきら (東京大学教授)
(委 員) [社 外] 安部 誠治 あべ せいじ (関西大学教授)  
[社 外] 岩崎 日出男 いわさき ひでお (近畿大学名誉教授)  
[社 外] 加賀 有津子 かが あつこ (大阪大学教授)
[社 外] 橋詰 武宏 はしづめ たけひろ (ジャーナリスト)  
取締役副社長執行役員 土井 義宏 どい よしひろ
取締役常務執行役員 勝田 達規 かつだ ひろのり
(幹 事) 執行役員経営監査室長 小槻 百典おおづく ももすけ

4.冒頭挨拶

 渡邉委員長挨拶骨子
  • ○様々な報道によりご承知のことと思うが、この数ヶ月間も、関西電力の原子力発電に関して大きな動きがあった。前向きな動きとしては、3月に大阪高裁が、高浜3,4号機の「運転禁止の仮処分命令」を取り消した。このことを踏まえ、4号機は5月に再稼動し、3号機も今月中に再稼動する予定と聞いている。また、5月に大飯3,4号機も「原子炉設置変更」が許可され、大飯発電所も再稼動に大きく動き出した。これで、関西電力は7基が、再稼動、または、再稼動を目指す状況になった。
  • ○その一方、懸念される動きとして、高浜2号機で「クレーン倒壊事故」が発生したことを踏まえ、この議題に特化した当委員会を、3月に急遽2回開催した。この事故を経験し、当委員会をはじめとする様々な方面から意見等を得て、再発防止策を講じる中で、関西電力は、従前にも増して「放射能漏洩リスク以外の原子力にかかわるリスクに対しても、社会の眼は極めて厳しい」ことを改めて理解するとともに、「そのリスクに対しても感受性を高める必要がある」ことを再認識し、有意義な教訓を得たと思う。
  • ○このことから見ても、「美浜発電所3号機事故を真摯に反省し、二度と起こさない」という決意に基づき、「関西電力における原子力発電の安全性向上の取組みを、社外の眼で検証・確認する」という当委員会の役割は、今後とも変わりなく求められていくと思う。また、関西電力が取組んでいる「ロードマップ」の進捗状況や、社達「原子力発電の安全性向上への決意」の浸透状況等についても、当委員会で検証・確認をするが、これらの活動が、関西電力はもとより、わが国における原子力発電の安全性に対する理解の深化の一助になることを心から願っている。
  • ○本日の委員会では、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた取組状況」に基づき、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策」および「ロードマップ」の取組状況等について、「再発防止対策が風化することなく、自立的に取組まれているか」、「社達の「安全文化を高め、原子力発電のリスク等を認識し、リスクの継続的な低減を図り、安全性を向上させる」との考え方に基づいて取組まれているか」、といった視点から検証していく。各委員からは、専門分野の眼から、または社会一般の眼から、活発かつ忌憚の無いご意見、ご助言を頂きたい。

5.議事概要

5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況

美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について、原子力事業本部から、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
  • ○現場の人達の中に、美浜発電所3号機事故再発防止対策の背景等について明快に回答できない者がいたとのことだが、これが進んでいくと手段が目的化してしまい、「なぜ、その対策を実施しなければならないか」を理解しないまま対策を行うことにつながる。そうならないように、安全文化では「問い掛ける姿勢、学ぶ姿勢」の定着が大切であるので、美浜発電所3号機事故再発防止対策について、「なぜその活動を行うのか」背景等を今後どのように浸透させていくのか、考慮されたい。(山口副委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組みは、経営トップの安全に対する理念から5項目の品質方針に展開し、さらに品質目標、そしてそれに対する具体的な実施計画を策定し、それに対して平成28年度下期の活動の評価をするというようにストーリー性を持って実施されており、取り組んでいくべき仕組みが体系的に構築されており非常に良いと思う。(岩崎委員)
  • ○地元とのコミュニケーション指数実績が上がってきていることは、良いことである。今後は量的だけでなく、質的な向上を目指すためにコミュニケーションの効果を継続的に捉えることを続けてほしい。(加賀委員)

5-2.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について

「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について総合企画本部から、また、「原子力部門安全文化評価の実施結果」について原子力事業本部から、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
(ロードマップ)
  • ○ロードマップの質は高くなったと思う。さらに読まれる方のことを考え、文章の長さなど分かりやすくなるよう検討してほしい。(渡邉委員長)
  • ○これからの安全性向上に向けた取組みにおいて、本当に重要なのは、安全上ポイントとなるところにリソースを配分して、取り組んでいくことだと思う。例えば、なぜそこにリソースを配分するのか、どういう姿を目指すのかをしっかり全社に対して説明できないといけないが、そのために「ありたい姿」としてビジョンを明確にして、全社で共有することにしたことは意義のあることだと思う。(山口副委員長)
  • ○ロードマップは、ありたい姿の設定等、分かりやすくなったと思うが、ロードマップはゴールに到達するためのプロセスを世間に示すためのものなので、ありたい姿に向かって、毎年取り組んだ内容を評価し、改善していくというPDCAが適切に回っていて、継続的に取り組んでいる様が分かるように工夫していただきたい。(山口副委員長)
  • ○今回設定した「ありたい姿」は非常にクオリティが高いと思うが、それに到達するためにはもう一工夫がいると思う。そのためには、2017年度から19年度に展開された計画には、「ありたい姿」に向かって取り組んでいく中で、途中どこをどう通っていくのか、そしてPDCAを回してどう改善していくのか示すことが重要であり、今年度からロードマップの取り組み方を少し変えたので、しっかりと充実した成果が出ることを期待している。(山口副委員長)
(安全文化)
  • ○安全文化についてはこれで十分というものはない。絶えず課題を見出して改善していくことが必要である。そういう意識を持たないと細かな欠点を発見できない。(橋詰委員)
(クレーン倒壊)
  • ○クレーン倒壊は、原子力施設の周辺に目配りが行き届いていなかったことが問題である。従って、直接的な対策だけではなく、従来目配りできていなかった部分に、どう目配りできるよう仕組みを作ることが教訓ではないか。(安部委員)
(健康の維持・管理)
  • ○健康管理は、労働安全衛生で実施していく課題であり、安全文化評価に入れることに違和感がある。何もかも入れると、所期の目的が見えなくなってしまう。(安部委員)
  • ○現在のような状況の中では、継続的にモチベーションや誇りをもてる仕組みが特に必要だと思う。(加賀委員)
  • ○「健康の維持・管理」の取組みはとても良いと思う。第三者である外部の専門家に社員に対してメンタルヘルスに関するセミナーや研修を実施してもらい、「何かあれば相談して下さい」とすると、社員が顔を知っていることもあり、その方に相談しやすくなるのではないか。(加賀委員)
(福井県内原子力事業者との連携)
  • ○福井県内の原子力事業者と、廃炉問題や使用済み燃料の問題も含め、様々な面で連携し、協力体制を進めていってもらいたい。(橋詰委員)
(監査について)
  • ○監査について、例えば、予防処置カードに関して、トラブル情報の件数、水平展開要不要の件数など、原子力事業本部が定量的に評価しているかも、監査で把握して報告してほしい。(渡邉委員長)
(原子力安全検証委員会のあり方)
  • ○原子力安全検証委員会で取扱う内容は、大変、網羅的で、盛りだくさんであり、原子力の安全や本委員会の発展のためには、今後、選択と集中、スクラップ・アンド・ビルドを進めていく必要があるのではないか。(橋詰委員)

5-3.原子力安全検証委員からいただいたご意見を踏まえた取組状況

原子力安全検証委員からいただいたご意見に対する取組状況について報告し、審議・了承。

<報告内容等>

5-4.平成29年度検証計画(案)について

平成29年度の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。

検証テーマ 検証の視点

原子力発電の安全性向上に向けた取組状況

「ロードマップの各項目(注1)」が『今一度、原点に立ち返り、「安全最優先」の考え方に基づき取組まれているか』

  1. (1)美浜発電所3号機事故再発防止対策
  2. (2)当社ロードマップ(注2)の取組み
(注1)

「ロードマップの各項目」とは、次の5項目を意味する。

  1. 1.安全最優先の理念の浸透および定着
  2. 2.安全性向上に関する基盤整備
  3. 3.安全性向上に関する活動の実施
  4. 4.リスクマネジメントをはじめとするマネジメントシステムの確立・改善
  5. 5.コミュニケーションの充実等
(注2)
「当社ロードマップ」とは、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実」を意味する。

5-5.平成28年度原子力安全検証委員会の審議結果

「平成28年度原子力安全検証委員会の審議結果」について提案し、審議、了承。

平成28年度 原子力安全検証委員会の審議結果 [PDF 235.13KB] 

以 上

<参考資料>
越前若狭のふれあい特別号No.40[PDF 3.89MB] 41[PDF 1.38MB] 42[PDF 3.15MB] 

渡邉委員長と山口副委員長
渡邉委員長と山口副委員長

第14回原子力安全検証委員会の様子
第14回原子力安全検証委員会の様子

用語解説

事業概要