原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2007年5月9日



第8回 原子力保全改革検証委員会



 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止に係る具体的方策の実施について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、「原子力保全改革検証委員会」を設けております。
 前回の第7回検証委員会では「関西電力の高経年化対策は、長期的な視点で技術基盤の整備を進めるとともに最新の知見を反映させながら対策を着実に実施していることを確認した。これらの取組みについて地域の皆さまとのコミュニケーションを進展させ、更なる安心につなげていくことを期待する」との評価をいただきました。今回の第8回検証委員会では重点検証テーマである「地域の信頼」、定検工事における再発防止対策の実施状況、並びに、これまでの再発防止対策の実施状況の総括評価について検証するとともに、平成19年度の検証委員会の進め方についても審議いたしました。なお、検証委員会の開催に先立ち、3月30日には社外委員による美浜発電所の現地検証を実施しており、この結果も踏まえて検証を行いました。その結果についてお知らせいたします。

1.日 時 平成19年4月24日(火) 14時00分~16時46分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 大森 政輔 (弁護士)
副委員長  【社 外】 
慶次 (大阪大学名誉教授)
委員  【社 外】 黒田 (日本ヒューマンファクター研究所 所長)
   【社 外】 
由紀子 (都市生活研究所 所長)
   【社 外】 政野 澄子 (福井県女性エネの会 会長)
   【社 外】  宮村 鐵夫 (中央大学教授)
   【社 外】 向殿 政男 (明治大学教授)
   常務取締役   篠丸 康夫  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶
  【大森委員長挨拶骨子】
    美浜発電所3号機は、2月7日に本格運転を再開し、その後順調に運転を続けたうえ、今月4日には、計画通り定期検査に入った。
    しかし、一方では、依然としてトラブルが絶えず、さらには、発電所総点検の結果では、種々の隠蔽事象が発覚している。信頼の回復は、これからが正念場であると言える。関西電力においては、発電所の安全運転を続けることを通じて、地域の信頼を取り戻し、安全文化を、一日でも早く再構築することを祈念する。
    本日は、「地域の信頼回復に向けた取組み」と、「美浜発電所1号機の定検工事における再発防止対策の実施状況」について検証を行う。
    本委員会に先がけ、美浜発電所において、トラブル防止への取組みや、地元に密着したコミュニケーション活動等について説明を受けており、その内容も踏まえ、充実した審議をお願いする。
    さらに、再発防止対策が策定されてから約2年を経過することから、その間の実施状況の総括についても審議をお願いする。各委員それぞれ専門の立場から忌憚のない意見をいただきたい。
       
5.議事概要
    5-1.第7回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第7回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、報告・審議し、了承。
    5-2.再発防止対策の実施状況の検証について
    (1) 地域の信頼の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、地域の信頼の取組み状況について、また経営監査室から、同取組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
地域共生本部は、各発電所と連携をとりながら、広聴活動で地域の声を把握し、確実に社内の関係箇所に伝え、広報活動に反映させる仕組みを作るなど、地域の視点に立った地域共生広報活動を行っている。また、広聴・広報活動に関する社内規定の中に地域の皆さまの声を反映するルールを統合し、日常業務の中に定着させる取組みが見られた。
技術系社員が参画した各戸訪問や地元CATVを活用した情報発信、地域ボランティア活動など、地元に密着した活動を通し、コミュニケーションの充実を図っていることを、美浜発電所の現地検証において確認した。
また、福井県エネルギー研究開発拠点化計画への協力は、推進体制を強化し、医療振興財団の設立など、地域の方々の目に見える形で、具体的に動き出し、着実に実績を積み重ねている。
以上のことから、関西電力は、地域の信頼回復につなげる活動に、地域の声を反映させながら、着実に取組んでいることを確認した。しかしながら、地域からの信頼を築きあげるためには長期的な取組みが必要であり、福井県に原子力発電所があることを誇りに思っていただけるように、今後も、これらの活動を継続的に改善を加えながら進めていくことを期待する。
   
<意見>  
地域の信頼回復のために、美浜町の女性の生の声を聞くことが大切である。各集落の集会所に集まってもらうなどして、女性の声を取り上げるようにしてほしい。(政野委員)
「越前若狭のふれあい」のアンケート結果によれば、アンケート回答者の80%の人がよい印象をお持ちとのことで立派な取組みである。嶺北への配布拡大により、嶺北の方々と嶺南の方々との間でどのような共通の理解が得られるようになったか分かれば、一層活動の励みになるのではないか。(宮村委員)
発電所、協力会社、地域の関係について、INSSの協力も得て、整理整頓したうえで、皆さんの活動を地域の方々にお伝えして理解につなげてほしい。(宮村委員)
福井県エネルギー研究開拠点化計画への取組みは、地域の誇りにつながるものと認識しているので、関電の取組みを消費地も含めて広報すれば、地域の信頼につながるのではないか。(篠委員)
    (2) 定検工事における再発防止対策の実施状況と監査結果
       原子力保全改革委員会事務局から、定検工事における再発防止対策の取組み状況について、また経営監査室から、同取組みの監査結果について、報告・審議。
     
<審議結果>  
美浜発電所1号機第22回定期検査において、労働安全衛生マネジメントシステムの取組みを通じた作業者の安全・安心の確保、TBM(ツール・ボックス・ミーティング)や作業計画書の読み合わせを活用した協力会社との対話活動活性化など、再発防止対策が現場第一線において自律的に実現されていることを確認した。
また、現場の作業リーダとの対話による危険要因の把握や、社内TVを用いた従業員・協力会社への迅速な情報発信など、再発防止対策を支える独自の取組みが図られていることを現地検証において確認した。
以上のことから、定検工事における再発防止対策は、美浜発電所において現場第一線まで浸透し、継続的改善が自律的に進められていると言える。
更に、これらの取組みは、他発電所においても同様に進んでおり、再発防止対策は、現場第一線に浸透していることを確認した。しかし、安全文化再構築への取組みは、類似トラブルが見られるなど、未だ道半ばであり、検証委員会は、再発防止対策が継続的な改善を加えながら日常業務の中に定着することを引き続き検証していくこととする。
   
<意見>  
各発電所独自の活動で、他発電所でも活用できるものがあれば、再発防止対策だけに限らず、水平展開を考えていただきたい。(大森委員長)
CSR全体の中で、労働安全衛生マネジメントシステムをどう原子力に適用するかという良き先例を作ってほしい。(宮副委員長)
縦割りに課題設定された多様な活動を展開しているなかで、現場から見たときに一番困るのは、組織としての考え方が整理・整頓して降りてこないときである。現場への活動の展開に際しては、上からの指示により、時と場合によって考え方が変にぶれないように、類似した重複した活動にならないように、コア(変えてはいけない部分)を明確にして進むべき方向に矛盾がないように、さらに、組織としての考え方と現場での業務との関係がすぐ理解できるように、分かりやすい現場での言葉に置き換えていく努力が重要である。(宮村委員)
有能なパイロットにとっては1秒というのは非常に長いから、操作は余裕を持って考えて実行できると言われている。そういう風に余裕というのは能力によって変わってくることなどを踏まえ、余裕の意味を改めてはっきり定義して改善をしていくということも重要ではないかと思う。 (宮村委員)
協力会社の方々の若い世代への交代を考え、これまでの常識にとらわれず、例えば、ツールボックスミーティングなどでは、ビジュアルでわかりやすいコミュニケーションツールを活用したり、安全のための余力を持つため機械でサポートできることはサポートすることも考えてほしい。(篠委員)
労働安全衛生マネジメントシステムを取入れて努力しておられるのを感心している。原子力発電所で本格的に取り入れたのはここが初めてであろう。 (黒田委員)
労働安全に関する取組みの効果を把握するため、協力会社も含めたデータを採って度数率、強度率等を用いて分析、評価することが望ましい。 (黒田委員、向殿委員)
リスクコミュニケ-ションの話が出ているが、リスクには、社会技術リスク、放射能のリスク、労働災害のリスクがあり、そのようなリスクコミュニケ-ションは、リスクに対する考え方が大元にあってできるものである。その辺を新しく築いていく安全文化の中で基本に戻って考えてほしい。(黒田委員)
リスクアセスメントが協力会社によりバラツキがあるのであれば、何故そのようなバラツキが生じているのか分析して、レベルアップにつなげてほしい。(宮村委員)
    (3) 再発防止対策の総括評価
       原子力保全改革委員会事務局から、再発防止対策の総括評価について、報告・審議。
     
<審議結果>  
検証委員会は、平成17年度末に美浜3号機事故の再発防止対策について「継続的改善が自律的に進む程度の段階に至っている」と評価し、18年度は特に重要であるとした検証テーマと各発電所での定検工事等への浸透状況について、現地検証を含め検証を行ってきた。
重要な検証テーマである「労働安全活動」、「保守管理の継続的改善」、「高経年化対策」および今回重点的に検証を行った「地域の信頼」への取組みでは、いわゆるPDCAのサイクルを廻し、施策が進められていた。また、今回現地検証を行った美浜発電所を初め、各発電所で、再発防止対策が浸透して、自律的な取組みがなされていた。そのことは、協力会社や外部の受け止め等を踏まえた、社長をトップとするマネジメントレビューによっても確認されている。
以上から、再発防止対策が発電所に浸透し、継続的改善が自律的に進められていることを確認した。
しかしながら、トラブルやコンプライアンスに関わる不適切な事象により、これまで再発防止対策の取組みによって回復しつつあった社会からの信頼を、再び損なうこととなった。検証委員会は、関西電力の再発防止対策の継続的改善とその水平展開を通じた安全文化の再構築状況について、引続き検証していくこととする。
   
<意見>  
安全文化再構築の状況を判断することができる基準となるように、指標を充実させていただきたい。(大森委員長)
安全文化の指標は、ガイドライン的なものはあるが、各国においても試行錯誤の段階で、今後関西電力においても具体的にどのようにしていくかについては関西電力なりに検討しながら作成していく余地があるものとの印象を受けた。(宮副委員長)
安全文化が根付いている良い組織になるためには、その評価(診断)に基づき、どこを対策したらよいのかという治療にまで至ることが必要になってくる。安全文化の再構築を長続きさせるには、そのような評価方式を使っていくことが重要である。また、それを進めていくためには、当初安全文化の評価研究の中心であった原子力安全システム研究所の知見をも活用することを検討してほしい。(黒田委員)
指標の設定・運用が過大な負担にならないように、最初はよく考えて少なめに設定し徐々に展開していくのが理想的である。また、異常があれば具体的なアクションに結び付けられるよう、仮説を立てた上で設計するなど、マネジメントにつなげる工夫をしてほしい。さらに、実際の事例をうまく取り入れた形で指標の妥当性を検証できるような進め方をしておくと、更なる改善に結び付けることができる。(宮村委員)
安全文化の構築状況を評価するには、安全文化をポートフォリオのように機能分割し、各々の機能についてカウンタブルな指標を設定し、その数値の分布具合やファクターを見て安全文化全体の状況を推測していくことになるのではないか。そのためには、数値を見て良くなったか、悪くなったかがわかるようなものとなるよう努力していただきたい。(向殿委員)
       
    5-3.前回検証委員会以降の動向等について
   原子力事業本部から、原子力発電設備に係る点検結果に基づく再発防止対策について報告。
 
<意見>  
BWRの制御棒の問題は、他山の石としてほしい。是非、関連企業、特にメーカとの情報共有を密にしてほしい。(宮副委員長)
美浜3号機が運転再開して、ゆとりが緩みや油断につながらないよう、今後も発電所のマネジメント層は緩急、めりはりのつけ方を考えてほしい。(篠委員)
この1年間、美浜・高浜・大飯発電所の現地検証を行ってきて、各発電所がそれぞれ工夫を加えながら取組んでいることが分かったが、今後は各発電所間の連携をより強化し、類似トラブルを起こさないようにしてほしい。(政野委員)
不正を生じさせず、情報公開を徹底させるためには、ミスや小さなトラブルが発生しても、そんなこともあるという風に周りの者は考えて、許すことも必要ではないか。(向殿委員)
     
    5-4.平成19年度の検証の進め方について
       経営監査室から平成19年度の検証の基本的考え方と上半期の検証テーマについて提案・審議。
      <審議結果>
平成19年度上半期の検証テーマについては、次のとおりとすることで了承。
       
     
検証テーマ
視  点
重点課題の実施状況
 
 
・経営トップによる安全最優先の徹底
経営層の思いが現場に共有されているか。
 
・法令順守に係る現場第一線への支援策の充実
現場の視点で、支援策が検討されているか。
 
・膝詰め対話、協力会社対話など現場との対話活動
現場、協力会社の生の声を把握しているか。
安全文化指標の試行状況
指標の試運用状況を適切に分析しているか。
     
    5-5.原子力保全改革検証委員会規則の見直しについて
       経営監査室から原子力保全改革検証委員会規則改正案について提案。審議の結果、規則の文言については、委員長一任とすることで了承。

<配付資料>
・ 第7回原子力保全改革検証委員会で頂いた意見への対応状況
・ 地域の信頼
・ 定検工事における再発防止対策の実施状況
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策実施状況について
・ 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施計画(平成18年度実績と平成19年度計画)
・ 発電設備の点検結果にかかる再発防止対策

黒田委員、篠崎委員、政野委員、宮村委員、向殿委員(左から) 宮崎副委員長、大森委員長(左から)
黒田委員、篠委員、政野委員、
宮村委員、向殿委員、(左から)
副委員長、大森委員長(左から)
第8回原子力保全改革検証委員会
第8回 原子力保全改革検証委員会
前のページへ
次のページへ

用語解説

事業概要