原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第17回 原子力安全検証委員会

 第17回原子力安全検証委員会では「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」および「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※2018年度上期の進捗状況については、2018年11月16日にお知らせ済み。

1.日 時
2018年11月26日(月)13時30分~16時00分
2.場 所
関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) [社 外] 渡邉 一弘わたなべ かずひろ (弁護士)  
(副委員長) [社 外] 山口 彰やまぐち あきら (東京大学教授)  
(委 員) [社 外] 荒木 孝治あらき たかはる (関西大学教授)  
  [社 外] 小澤 守おざわ まもる (関西大学教授)  
  [社 外]  田中 嘉久たなか よしひさ (元福井県中小企業団体中央会専務理事)  
  [社 外] 松本 真由美まつもと まゆみ (東京大学客員准教授)  
  取締役副社長
執行役員
土井 義宏どい よしひろ
  常務執行役員 月山 將つきやま すすむ
(幹 事) 経営監査室長 阿川 毅あがわ つよし
4.冒頭挨拶
渡邉委員長挨拶骨子
  • ○前回の委員会以降、わが国は、北海道胆振(いぶり)東部・大阪北部における地震をはじめ、西日本豪雨や台風21号等による暴風雨や高潮など、これまでになかったと言っても過言ではない大きな自然災害に繰り返し見舞われた。被災された皆様には、心からお見舞い申し上げる。こうした中、関西電力の各原子力発電所は大きな被害を受けることなく、夏場の安定的な重要電源として、その役割を果たされているように思う。
  • ○また、この10月からは、大飯発電所において、検査制度見直しの試行プラントとして取組みを始められており、このような原子力安全の枠組みに関する大きな変化に向けての先進的な役割にも取り組んでおられるものと理解している。
  • ○しかしながら、原子力発電に対する社会の眼には、依然として厳しいものがある。このような状況の中で、原子力発電が、社会の理解を得、評価を受けるためには、電力の安定供給はもちろんだが、その安全性への取組みがより一層高度なものになるよう不断に努め、またそのような取組みの有効性を絶え間なく確認・検証しつつ、その最適化に向けた努力を続けることが重要かつ不可欠であると思う。そして、そのような関西電力の取組みを地域・社会の方々に十分ご理解いただくための努力もまた忘れてはならない。そのような努力の積み重ねが社会的な信頼につながるということを、常に心に留めて、事業を進める必要があると思う。
  • ○本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた取組状況」に基づき、
    • 「美浜発電所3号機事故の再発防止対策」
    • 「ロードマップ」や「労働災害の撲滅」
    の取組状況などを審議する。各委員におかれては、ご専門分野の眼から、または、社会一般の眼からご覧いただき、活発かつ忌憚の無いご意見、ご助言を賜るよう、お願いする。
  • ○最後に、本日の検証委員会における審議を踏まえ、関西電力における原子力発電の安全性向上活動がより一層改善されるとともに、そのような活動に対する社会の理解が深められ、併せて、わが国における原子力に対する理解の深化にも資することを、心から願う次第である。
5.議事概要

5-1.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果
「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の2018年度上期の取組状況について、経営企画室から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>

(労働災害)

  • ○労働災害を防止する具体的な対策例としては、不安全行動を排除する観点から、例えば、構内で上司等とすれ違うとき、頭を下げる(お辞儀する)ことで視野が変化し災害を誘発することを防ぐため、頭を下げず、敬礼をしている現場もある。また、ハード面の対策として、通路を少し広めにしたり、作業ですれ違う時の退避場所を確保する例もあるので参考とされたい。(小澤委員)
  • ○高浜1号機での労働災害については、同様の事例が建設時等過去に発生していると思われるので、その際の再発防止対策を確認したほうが良い。(小澤委員)
  • ○昔と違って現在では、安全性が向上した環境下で育った世代が中心となっており、リスク感受性が落ちている。また今回は、作業をしている直下に居たことがそもそもいけないのだから、多少時間を要しても退避するように、作業監視者の配置等も必要と考える。(小澤委員)
  • ○労働災害は現実にはゼロにならないが、目標は発生件数ゼロを目指すべきである。そのためには、過去の類似事例を調べるとともに、その際に講じられた優れた再発防止対策が現在では忘れられている場合、なぜ風化したかを検討することも重要である。(渡邉委員長)
  • ○仕事をする時の基本的な考え方として、4S(整理・整頓・清掃・清潔)がある。4S自体は、ある意味メイン作業をサポートするための考え方であるが、重要ではないというわけではない。メイン作業の環境を整備するための活動であり、安全の基本である。それができていないということは、基本的な働き方が身についていないとしか言いようがない。安全文化と抽象的に言っても、基本となる整理・整頓ができない限り安全文化を確保することは難しいと判断せざるを得ない。(荒木委員)
  • ○高浜1号機での重傷災害の根本原因評価だが、危険感受性リスク抽出の問題で、メイン作業かメイン作業でないかという視点で分析されているのは少し違うと思う。KYやヒヤリハットでは、一連の作業の中でどのような危険があるか、あるいは危険を防止するためどのように注意すれば良いのかを考えるものであり、作業のカテゴリーの問題ではない。(山口副委員長)
  • ○熱中症について、今夏が災害級の猛暑だったことは理解するが、やはり発生件数ゼロを目指して欲しい。熱中症はあらゆる作業現場で深刻な問題になっており、作業環境等の整備をお願いする。(松本委員)

(社員育成)

  • ○社員育成計画はプラントが長期停止する中で大変な課題であるが、早期に具体的な取組みを出していくとともに、監査でも検証していくべきではないか。(山口副委員長)

(リスクマネジメントシステム)

  • ○リーダーシップが発揮されているというのはマネジメントシステムが機能するためには重要なポイントだと思う。ロードマップの記載では、現場に比べシニアマネジメントクラスに重点が置かれていない印象がある。(山口副委員長)
  • ○RIDMの構築など新しい仕組みを導入する時に、リスクマネジメントシステムが適切に機能していくためには、リーダーがそれを理解して、リソースのアロケーションを適正に行うことが大事である。システムを確立することと、それがきちんと機能して効果を発揮しているというのは別の話であるため、仕組みが導入される過程でリーダーシップがどう発揮されているのかについて、監査の中で見ていただきたい。(山口副委員長)
  • ○ロードマップに書かれている、週間リスク情報により1週間単位でどういう作業は安全上注意しないといけないかを示す取組みは、素晴らしい活動である。週間リスク情報の活用や特性を十分理解したリスク低減の取組みというものは、全体の効率を上げる面にも必ず役立っていくはずで、そういう実績もあるので、さらに深めて様々な効果を発揮できるような仕組みに深化させていただきたいと思う。(山口副委員長)
  • ○コミュニケーション論の観点からリスクマネジメントを見ると、社内における情報伝達や対外的な情報発信が重要なポイントとなる。例えば緊急事態発生時には、記者会見での適切な状況説明などでリーダーシップが発揮される事で周囲の不安を払拭できることがある。(松本委員)

(防災訓練)

  • ○大飯、高浜の合同訓練は非常に大規模な訓練で大変だったと思うが、2015年に国際原子力機関が出した福島事故報告書の提言に対して適切に取り組まれた非常に良い訓練だったと思う。(山口副委員長)
  • ○総合防災訓練を視察したが、大容量ポンプ付属の取水ポンプの移動において坂道の登りなどかなり大変な作業と見受けた。もう少し容易に動かせるように検討すべきではないか。(小澤委員)
  • ○自然の風水害とは異なり、原子力災害では事象の進展や被害を想定するしかない。様々な過酷な状況を想定して訓練を重ねて欲しい。(田中委員)
  • ○総合防災訓練の評価結果およびその対策については、検証委員会等で報告して頂きたい。(渡邉委員長)

5-2.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況
美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について、原子力事業本部から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
  • ○ロードマップの施策の中に美浜3号機事故再発防止対策と重なる部分や引継いだ部分があり、委員会としてそれらはロードマップの中に統合することとしているが、美浜3号機事故再発防止対策の説明においても、ロードマップの施策のどこに関連するかについて少し触れていただくと理解しやすいので、次回からお願いする。(渡邉委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故を反省だけに留めず、安全文化向上に繋げている取組みは評価できる。安全最優先が第一にあって、経営上、運営上の課題があることを理解し、組織や社員一人ひとりが風化させずに深化し続けていただきたい。(田中委員)
  • ○原子力発電所では、緊急事態での適切な対応が重要となるので、高い安全最優先の意識と高度な緊急時対応スキルを有した人材の育成、そうした人材の適所、適正配置を進め、組織的対応力のさらなる向上を図っていく必要があると考える。(田中委員)

以 上

用語解説

事業概要