原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

これまでの「美浜発電所3号機事故再発防止対策」、「安全文化醸成活動」に加え、「自主的・継続的な安全への取り組み」についても確認・助言することから、これらを「原子力安全」と簡潔に表現し、名称を「原子力安全検証委員会」に変更いたしました。至近の取組みについては「原子力安全検証委員会」をご覧ください。
2012年6月13日



第18回 原子力保全改革検証委員会


 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 第17回の委員会では、平成23年度安全文化中間状況確認結果および、重点施策である若手社員育成策の充実・強化について検証していただきました。平成23年度安全文化醸成活動については、「『プラント安全』、『労働安全』、『社会の信頼』の中間状況の確認結果において、特に新たに取り組むべき課題が見受けられないことから、引き続き、これまでの重点施策に取り組まれたい。」、また、若手社員育成策の充実・強化については、「平成20年度から継続して取り組まれ、指導員を指名し、OJTにより育成するペアリング等の各種施策が、各発電所で効果を発揮しつつある。検証委員会としても、9月の高浜発電所視察時に育成担当等との懇談を実施し、熱心に指導方法を工夫している様を確認した」旨の評価をいただきました。
 今回の第18回検証委員会では、美浜発電所3号機事故再発防止対策、また、福島第一原子力発電所事故からの教訓を取り入れた平成23年度の安全文化評価結果および重点施策の実施状況について、検証が行われました。その結果をお知らせいたします。


1.日 時 平成24年5月18日(金) 13時30分~17時00分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長  【社 外】 佐藤 信昭 (弁護士)
副委員長  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
委員  【社 外】 小松原 明哲 (早稲田大学教授)
   【社 外】  田中 健次 (電気通信大学教授)
   【社 外】 増田 仁視 (公認会計士)
   取締役副社長  井狩 雅文  
   取締役副社長 生駒 昌夫  
     
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶等
    4-1.佐藤委員長挨拶骨子
     
本委員会では、平成20年以降、美浜発電所3号機事故再発防止対策の定着状況、安全文化の醸成状況について審議し、必要な助言を行ってきた。
また、昨年3月の福島第一原子力発電所事故後は、関西電力の緊急安全対策等について報告をしてもらい、前回の委員会では、この福島第一原子力発電所事故の教訓等がどのように関西電力の安全文化醸成活動に取り入れられていくか、そのプロセスについて、今後委員会として着目していくこととしていた。
その後、全国の原子力発電所が次々に定期検査入りし、すべての原子力発電所が停止する事態となり、それらの発電所の再稼動を認めるべきかについて、国民的議論がなされている。
当委員会の目的は、美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況の検証と原子力の安全文化醸成に関する事項についての助言を行い、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとしていくことであり、その役割を果たしてまいりたいと考えている。
本日の委員会では、美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況、安全文化醸成活動の実施状況に加えて、福島第一原子力発電所事故を踏まえた関西電力の対応状況についても報告を受け、その上で、平成24年度の検証委員会の進め方について提案をしてもらうこととしている。
各委員においては、それぞれの専門的な立場から忌憚のないご意見をいただき、活発な議論をしたい。
     
5.議事概要
    5-1.第17回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第17回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力保全改革委員会事務局から報告し、審議・了承。
<意見等>
「世界最高水準の安全性を目指す」という言葉が使われているが、現在の水準が世界に比べて特に低いというように取られないように、使い方には留意してほしい。(東副委員長)
世界最高水準や一番という言葉が使われがちだが、その意味は漠然としがちで掛け声だけに終わりがちである。安全について、世界の原子力事業者からお手本とされる会社を目指す、というような意識を持ってほしい。(小松原委員)
    5-2.美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について
        美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について、原子力保全改革委員会事務局、経営監査室から報告し、審議。
 
<審議結果>
平成23年度の美浜発電所3号機事故再発防止対策の取り組みについては、日常業務の中で定着し、対策項目の経緯や目的が理解され、確実に実施されていることを確認したことから、風化の兆しは認められないと評価される。
再発防止対策の取り組みは自律的に継続されているが、本委員会としても、風化せず、定着しているかを今後も引き続き確認していく。
<意見等>
監査において、対策に従事している者から、直接、対策項目の経緯や目的を述べさせて確認していることは、形式的な確認になっておらず、良い手法である。(田中委員)
再発防止対策の取り組みを続けていくことが、原子力全体の安全への意識にもつながっていくものだと思う。8年経っても、きちんと継続して実施しているという姿勢が大事である。(増田委員)
長期停止により、通常の定検~運転というサイクルが崩れることで、協力会社の支援体制などへの影響も考慮すべきである。(増田委員)
    5-3.安全文化醸成活動の実施状況および監査結果について
   安全文化評価結果および重点施策の実施結果について、原子力保全改革委員会事務局から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
     
<審議結果>
平成23年度原子力安全文化評価においては、福島第一原子力発電所事故に関して公表された報告書等からの教訓を安全文化評価の枠組みに取り入れ、事故の教訓を踏まえた評価が実施されていた。
また、「協力会社作業員の安全意識の更なる向上」や「若手社員育成策の充実、強化」などの重点施策については、有効に機能し、活動が定着していることから、日常業務として継続されるが、今後も実効ある活動を期待したい。
平成24年度は、引き続き公表される事故報告書等からの教訓を安全文化評価の枠組みに取り入れることとしており、これらのプロセスと活動を本委員会でも確認していく。
<意見等>
[福島第一原子力発電所事故の教訓の反映]
(教訓反映のスキーム・考え方)
福島第一原子力発電所事故からは、直接的な教訓だけではなく、その問題の本質的な部分に目を向けた教訓も得て欲しい。その教訓を生かせば福島第一原子力発電所のような事故は起こらなかったはずだ、というような、しっかりした教訓を得るべく、取り組んでいただきたい。また、関西電力として、得た教訓をどのように安全文化醸成活動に反映していくのか、また安全文化としては反映されなかった教訓はどのように取り扱ったのかなどの、関西電力として教訓を生かすための活動の、全体スキームを明らかにすべきと思う。(小松原委員)
福島第一原子力発電所事故の教訓をどのように安全文化醸成活動に反映するかの基本的な考え方を整理しておくべきだと思う。(増田委員)
福島第一原子力発電所の事故から得られる教訓には、直接的な教訓と、その背景にある安全文化に関わる教訓があり、両方に目を向けることが必要だと思う。これらの教訓を整理して、安全文化と関係するポイントを抜き出し、関西電力の安全文化とどのように関係しているかを確認するプロセスが必要だと思う。(田中委員)
たくさんの教訓が出てきたのは良いことであり、教訓の中で当社が対応できていない部分については当然、順次、対応していかなくてはいけない。一方、逆に、今回の震災においてどうしてこんなにたくさんの教訓が出てきてしまったのか、率直な議論が必要ではないか。
安全文化については、「劣化の兆候」があれば対応するといった現在時点よりレベルを落とさないという考え方も一つかもしれないが、むしろ、「自分自身の健康のため、自分なりの健康増進策を考える」というような安全文化の増進の考え方にたち、不断のレベルアップを求めていっていただきたいと思う。(小松原委員)
(教訓を活かしていく体制)
福島第一原子力発電所事故の情報を、関西電力の発電所の安全確保にどうつなげるかについては、教訓等の情報が時間とともに忘れられたり、抜けが生じたりしないように、特定の部署が交通整理して共有し、その活用をモニタリングしていくような仕組みが必要だと思う。(小松原委員)
福島第一原子力発電所事故の教訓を反映すると同時に、自ら積極的にここは大丈夫かと働きかけていくことが必要であり、責任を持ってそうした取組みを行う部署が必要だと思う。そのような活動の状況を関西電力の安全文化醸成活動の中で確認していくものかと思う。(増田委員)
(教訓例)
事故時や緊急時といった輻輳した事態にあっては、コミュニケーションがとりにくくなることが考えられるが、そのような事態でも正確な情報が伝わるように努力するということが教訓だと思う。(東副委員長)
福島第一原子力発電所事故対応時における官邸と事業者の情報伝達というような問題については、本質の問題は何かという分析をしていかなければならない。問題を掘り下げて原因や理由を考え、同じ問題が起きる可能性がどこにあるのかなどを洗い出すと、誰がどのように展開していくのかという具体的な対応が見えてくると思う。(田中委員)
安全文化で抽出された教訓のうち、事故に関する情報提供については、不確定な情報をどのように出すかといった研究が足りなかったことも福島事故の教訓だと思う。(東副委員長)
福島第一原子力発電所事故からの教訓抽出には、その背景にある本当の問題について、皆で考え、絞り出さないといけないと思う。
一例として、安全に関して現場の方が問題点を言おうとした時に、本当に躊躇したことはなかったのかというところが安全文化の大きなポイントだと思う。(田中委員)
規制が要求すること以上に安全を確保していくということは今さら言うまでもないことである。むしろ全ての外部電源喪失が長時間続くということを想定し、対応してこなかったということが反省事項ではないか。(東副委員長)
[安全文化全般]
(重点施策)
今後、諸外国の情報収集や活用等をしっかり行っていくためには、どのような人がどのような方法で実施するのかに留意してほしい。(東副委員長)
H24年度新規重点施策「広い視野から規制の枠組みにとらわれない原子力安全の更なる確保」では、まず、どういうスタンスで原子力安全を捉えていくのか、規制の枠組みをどのように捉えるのかを最初に考えて、その後に具体論を検討する方が良い。(田中委員)
(全般)
プラント停止が長く続き、従来、やってきたことが途切れれば、ハード面、コミュニケーションを含めたソフト面で何か起こらないか心配であるので、どのような影響があるか評価しておくべきである。(東副委員長)
原子力発電の将来の見通しがつきにくい状況においては、経営側からの社内へのぶれのないコミュニケーションが一層、重要となる。それにより、社員のモチベーションの維持・向上につなげてほしい。(小松原委員)
社外の方が調べればわかるような情報は、相手に調べさせるのではなく、基本的なところからむしろ積極的に出していくべきである。また情報を発信するときには、情報を受ける相手の立場に立ち、形式に流れない発信が必要である。(小松原委員)
地域対応については、地域が何を望んでいるかを想像して対応することが、リスクコミュニケーションになると思う。地域だけでなく、社会の視点から自分達を見つめること(立場を変えた想像力)、社会が自分たちに何を望んでいるかを考えることが大事であり、立場を変えた想像力は、あらゆる場面で必要となってくる。(小松原委員)
美浜発電所3号機事故以降、「関電としてやらなければいけないことを素直に、自主的にやる」という体制が出来つつあると思う。その実績もある会社であり、そのイメージをアピールしていくことも必要である。(増田委員)
    5-4.福島第一原子力発電所事故にかかる当社の対応状況について
       原子力事業本部から、「原子力発電所における安全性・信頼性向上の取り組みについて」、原子力保全改革委員会事務局から、「福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力保全改革委員会の進め方について」報告。
     
<意見等>
(安全対策)
どのような事象が起きても、「止める」・「冷やす」・「閉じ込める」という3つは、絶対に守らなければならないということが、今回の教訓の最大のポイントだと思う。(増田委員)
安全対策をどこまでやるかについては、規制の枠を守ることが最低限であるが、さらにここまではやらなければいけない、ハードではここまでで、それ以上のことはソフト対応、あるいは仕組みとして作っておくなど、もう一歩具体的な目標のようなあるべき姿があるとよい。(田中委員)
30項目の対策を考えた人は大事な部分を集中して考えているので、周辺の検討が落ちやすい。対策が上手く機能するためには、前提になっている条件が現実に働くか、見落とした条件はないか、それらを系統毎にまとめるなどの確認が必要だと思う。(田中委員)
(情報発信)
30項目の対策を実施していくことは当然として、また国に言われたことだけをやっていると社会に受け取られないように取組みやその発言の仕方等、考えていってほしい。(小松原委員)
社会への情報発信の仕方も大事である。会社姿勢の発信や30項目の対策の一つ一つが完了した時の発信の仕方なども考えておくべきである。(小松原委員)
情報提供において、事を小さく印象付ける説明をしようとする傾向がないか留意してほしい。(東副委員長)
福島第一原子力発電所の事故後、「原子力は危ない。全プラントとも同じである。」といった風潮があるが、PWRは事故を起こしたBWRと構造的に異なっており、事故時の対応も余裕があるということを積極的に言うべきではなかったのかと思う。(東副委員長)
(メンテナンス)
緊急時に使用する機器は、普段使用していないことから、設置後の信頼性確保、維持管理も重要である。(田中委員)
    5-5.平成24年度の検証委員会の進め方について
       平成24年度の検証委員会の進め方について経営監査室から提案し、審議。
     
<審議結果>
関西電力から、平成24年4月9日に「大飯3・4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画」 を公表し、この中で、社長は「原子力発電の自主的・継続的な安全への取り組みに向けて」決意表明を行い、全社を挙げて安全対策を推進していくとの報告があった。
今後の検証委員会の進め方については、
・  従来の美浜発電所3号機事故再発防止対策、安全文化醸成活動に加え、社長の決意表明である今後の「自主的・継続的な安全への取り組み」についても、確認・助言を行ってほしい、
・  その上で、本委員会の名称については、「美浜発電所3号機事故再発防止対策」「安全文化醸成活動」「自主的・継続的な安全への取り組み」、これらすべての活動を「原子力安全」と簡潔に表現し、「原子力安全検証委員会」に変更したい
との提案があり、提案どおり了解した。
次回検証委員会の議題は、「原子力発電の自主的・継続的な安全への取り組み状況」とすることで了承。
<意見等>
「原子力発電所における安全文化」と「会社全体で取り組む安全文化」という、2つの意味で安全文化という言葉が使われている。また、説明資料の中でも、使う場所によって微妙にニュアンスやレベルが違うように感じられる。「安全文化」とは重い言葉なので、言葉の使い方の整理、定義を再確認した方が良い。(小松原委員)
30項目の細かな設備対策の進捗状況に対して意見を述べるというのではなく、30項目以外にも必要なものがないのか、例えば支援体制はどうか、対外発信の仕方はどうかなど、大所高所から助言することが重要だと思う。(小松原委員)

<配付資料>
議事次第 [PDF 54.4KB]
第17回原子力保全改革検証委員会で頂いた意見への対応状況について [PDF 85.0KB]
美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況について [PDF 1.05MB]
安全文化評価の実施結果について [PDF 481KB]
重点施策の実施結果について [PDF 423KB]
原子力発電所における安全性・信頼性向上の取り組みについて [PDF 1.05MB]
 

第18回 原子力保全改革検証委員会 佐藤委員長、東副委員長(左から)
第18回 原子力保全改革検証委員会
佐藤委員長、東副委員長(左から)
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用語解説

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