原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

第15回 原子力安全検証委員会

 第15回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況」や「高浜2号機クレーン事故再発防止対策の取組状況」、「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」等について審議が行われましたので、その結果をお知らせいたします。

※平成29年度上期の進捗状況については、平成29年11月7日にお知らせ済み。

1.日 時
平成29年11月24日(金) 13時30分から16時30分
2.場 所
関西電力株式会社 本店(大阪市北区中之島)
3.出席者(敬称略)
(委員長) 【社 外】 渡邉 一弘わたなべ かずひろ (弁護士)  
(副委員長) 【社 外】 山口 彰やまぐち あきら (東京大学教授)
(委 員)   【社 外】 荒木 孝治あらき たかはる (関西大学教授)  
【社 外】 小澤 守おざわ まもる (関西大学教授)  
【社 外】  田中 嘉久たなか よしひさ (元福井県中小企業団体中央会専務理事)
【社 外】 松本 真由美まつもと まゆみ (東京大学客員准教授)  
取締役副社長
執行役員
土井 義宏どい よしひろ
常務執行役員 月山 將つきやま すすむ
(幹 事) 執行役員
経営監査室長
小槻 百典おおづく ももすけ

4.冒頭挨拶

 渡邉委員長挨拶骨子
  • ○本日は、4名の新たな委員をお迎えして初めての検証委員会であるので、当委員会の目的を改めて申し上げたい。
    平成16年8月9日、関西電力は美浜発電所3号機の2次系配管が破損し、5名の方が亡くなられ、6名の方が負傷されるという事故を起こした。このことを踏まえ、社外の見識による独立的な立場から、事故の再発防止策の有効性を検証すること、原子力の安全文化醸成活動、さらには、福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みについても助言を行い、これらの継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的に、当委員会は設置され、審議を続けてきた。現在、関西電力の原子力発電事業を取り巻く環境は大きく激動しているが、当委員会の目的、役割は、いささかも変わりはない。
  • ○本日は、検証テーマ「原子力発電の安全性向上に向けた取組状況」に基づき、「美浜発電所3号機事故の再発防止対策」の取組状況、「ロードマップ」の取組状況などについて審議する。このように、当委員会の根幹部分は変わらない一方、環境変化に伴って具体的な課題は変化してきており、それに合わせて具体的な検証事項にも取組んで参りたい。例えば、今年度の安全文化醸成活動については、協力会社アンケート評価結果に対する改善の取組み、高浜2号機クレーン倒壊事故に対する再発防止対策、さらには働き方改革や健康経営の観点から、社員の健康維持・管理の取組みなどについて報告を受け、審議する予定である。
  • ○本日の検証委員会における審議を踏まえ、関西電力が行う原子力発電の安全性向上に向けた活動がより一層改善され、社会の理解が深められることを期待する。併せて、わが国における原子力に対する理解の向上にも資することを心から願っている。各委員からは専門分野の眼から、また、社会一般の眼から、活発かつ忌憚の無いご意見、ご助言を頂きたい。

5.議事概要

5-1.美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況

美浜発電所3号機事故の再発防止対策の取組状況について、原子力事業本部から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
(検証委員会意見の対策への反映)
  • ○美浜発電所3号機事故の再発防止に向けた活動に関して、ポイントを押さえた活動に進化させることは可能である。検証委員会で出た意見等に基づき、アクションプランに反映して、重要なところに焦点を絞った活動に進化させるように検討されたい。(山口副委員長)
(モチベーションの把握と維持)
  • ○廃炉になる発電所、再稼動する発電所、審査中の発電所等があり、それぞれの所員のモチベーションには差異があるのではないか。これを十分把握し、理解することが大切である。 他方、また、どのような状況であれ、所員の安全文化や安全性向上に向けた意識に差異があってはならず、等しくその意識を持たせるよう取組むことが必要である。(渡邉委員長)
  • ○原子力発電所の所員のモチベーションを継続的に把握しておくことが大切である。特に、停止を余儀なくされたような上手く行かない時に、所員のモチベーションを上げる工夫が非常に大事である。そのための取組みを根気よく続けなければならない。(小澤委員)
(技術伝承について)
  • ○技術伝承に関して、定年延長の方に技術指導をしていただいているという、個人の技術力のみに頼って維持しているのではなく、システムとしてやっているのがポイントである。そこは制度的にしっかりさせています、という点を明確に述べるべきではないか。(山口副委員長)
(コミュニケーションについて)
  • ○読んでいただく相手の立場やレベルを意識して、チラシ等を作成することが大事であり、例えば、見出しだけを読まれた人でも正しく理解してもらえるよう、作成する側がそこまで配慮した工夫をすることが必要である。(渡邉委員長)
  • ○40年超運転に関して、40年間、全ての機械や配管等を交換せずずっと使用していると一般市民は誤解しているのではないか。定期的に点検し、必要に応じて交換していることを、身近な例を用いてきちっと説明する必要がある。(小澤委員)
  • ○チラシに関して、例えば、A3ぐらいの大きさで、写真等を多用するなど、これまでの安全性向上を目的とした設備更新実績等の全体像がわかるものを作成した方が、一般の方にはわかりやすいため、工夫されたい。(松本委員)
  • ○アンケートの自由記述も大事だが、バス見学会のとき、サイエンスカフェのようなリラックスした雰囲気の意見交換の場を作れば、様々な意見を得ることができるため、検討されたい。(松本委員)
  • ○立地地域である福井県でコミュニケーションをしっかり行っていることは理解できるが、安全対策に対する取組みは、消費地でも理解が得られるようしっかりとコミュニケーション活動されることが重要である。(田中委員)

5-2.高浜2号機クレーン事故再発防止対策の取組状況

高浜2号機クレーン事故再発防止対策の取組状況について、原子力事業本部から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
  • ○トップの方によるプラントウォークダウンや訓示、安全文化に関する教育などが実施されていることは評価できる。IAEAの基本安全原則3「安全のためのリーダーシップとマネジメント」にあるように、トップのリーダーシップとマネジメントシステムと安全文化は相互に関係している。従って、それらがまとまりのある一連の取組みとなるよう、推進されたい。(山口副委員長)
  • ○未然防止の視点から、他産業の工事現場で起きている事故の教訓を有効に活用する仕組みを検討されたい。(荒木委員)
  • ○教育や共有サイトの効果の把握に努め、その有効性を高める仕組みや、効果として役立った例示なども、今後示していってほしい。(荒木委員)
  • ○現場作業員のリスク感受性を高めるためには、現場での実務に即した問いかけ等を行う必要があるのではないか。そのリスク感受性が定着しているかについては、アンケートだけでは十分ではなく、他の方法でも把握する必要があるのではないか。(小澤委員)
  • ○高浜2号機クレーン事故の再発防止対策について、技術的な設備に関する対策は、風速計や24時間気象予報システム等の写真等を使用してビジュアル化すれば、わかりやすいため、工夫されたい。(松本委員)

5-3.「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の取組状況および監査結果

「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の平成29年度上期の取組状況について、経営企画室から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。

<報告内容等>
<意見>
(ロードマップの指標)
  • ○ロードマップの指標については、今後どのように評価し、公表していくのか検討する必要があるのではないか。(荒木委員)
(ロードマップのわかりやすさの向上)
  • ○ロードマップの記述について、それぞれの項目において、語るべきことをすべて1ページの中に収めようとされた努力は理解できるが、そのため沢山のことが1ページに入り過ぎている。それに加えて、太字や下線等の強調を多用したことが、読む人には、かえって内容をひと眼ではわかりにくい部分を残している。イメージがわからないため、ページが増えても構わないので、さらに、見やすく、わかりやすくなるようもうひと工夫されたい。(渡邉委員長)
  • ○ロードマップのリード文と説明との対応関係がわかりにくいので整理されたい。(荒木委員)
  • ○原子力安全に精通した方が、資料を作成した後、例えば、事務に携わっている社員に分かるか、聞いて、作成した方が、理解されやすい資料になるのではないか。(小澤委員)
  • ○可搬型代替低圧注水ポンプのアタッチメントの開発や、独立オーバーサイトの試行等、複数の電力会社で協力して実施している取組みは、電力会社相互のレベルアップ、品質の一定化等につながり、一般の方の安心につながるため、どのような体制で実施しているかも含めて、整理して出されると意義があるのではないか。(山口副委員長)
  • ○安全性向上対策の工事や防災訓練は、立地地域の住民や一般市民の方の関心が高いため、わかりやすく示してほしい。例えば、安全性向上対策の工事は、発電所の全景に矢印をつけ、対策工事の写真や計画している工事のイラストを入れるなど、一覧にして全体像がわかるように作成してほしい。防災訓練についても、訓練風景の中に人の姿も入れる等、どのような訓練をしているのかをわかりやすくする工夫により、信頼の回復につながると思う。(松本委員)
(防災訓練について)
  • ○防災訓練の実施結果について、国から良い評価を得ることが目標ではなく、問題点を洗い出すことが目的であることを忘れないでもらいたい。(小澤委員)
(監査結果について)
  • ○監査結果について、「気づき」とすると、監査を受けた者は、改善が必要であるとの認識が低くなる可能性があり、より良くしていくためには、「改善要望」として出した方が良い。(山口副委員長)

5-4.原子力安全検証委員からいただいたご意見を踏まえた取組状況

原子力安全検証委員からいただいたご意見に対する取組状況について報告し、審議・了承。

<報告内容等>
<意見>
(監査について)
  • ○監査に関して、ロードマップのありたい姿のワンワード毎について、きちんと実現されているか、レビューするという視点で監査することが重要である。実施側は、ありたい姿を作成した次のステップとして、総合的にレベルアップするにはどうすれば良いかについて、監査の結果などを比較レビューしながら、ありたい姿に向かっているのか、確認されたい。(山口副委員長)
  • ○安全文化は、IAEAの定義では、氷山のように見えないところが大きいものであり、安全の意識やPDCAがまわっていることだけで、安全文化は測れるものではなく、監査をするときもそれを念頭に、別会社を監査している意識で監査してもらいたい。(小澤委員)
(マネジメントの充実)
  • ○安全対策を講じても、カバーできない部分がある。このため、現場が非常時でもマネジメントできるか、ということが一番の安全対策である。その点を踏まえて、例えば、もし真っ暗になったら懐中電灯で本当に見えるのかどうかなど、残余リスクを考えさせるようなマネジメントの充実に取組まれたい。(小澤委員)

以 上

渡邉委員長と山口副委員長
渡邉委員長と山口副委員長

第15回原子力安全検証委員会の様子
第15回原子力安全検証委員会の様子

用語解説

事業概要