高浜発電所の使用済燃料乾式貯蔵施設(第一期)の設置計画について、運転開始から40年を超える原子力発電所の取組みについて
関西電力からのお知らせ 2025年9月15日発行
高浜発電所の使用済燃料乾式貯蔵施設(第一期)の設置計画について
当社は、高浜発電所構内における本設置計画について、本年5月28日に原子力規制委員会から原子炉設置変更許可をいただきました。今回は、その内容についてお知らせいたします。
使用済燃料乾式貯蔵施設とは
原子力発電所で保管している使用済燃料を中間貯蔵施設へより円滑に搬出できるよう、輸送にも使用できる「キャスク」と呼ばれる金属製の頑丈な容器に収納し、搬出までの間、電源を使用せずに安全性の高い方式で、発電所の構内に一時的に保管するための施設です。
乾式貯蔵施設設置後も発電所敷地内における使用済燃料の貯蔵容量は、原則増やしません。
※1:原子燃料サイクルとは
原子力発電で使った使用済燃料の中には、利用可能な資源が残っており、再処理工場でこれらを取り出し、再び燃料として利用することをいいます。
これにより資源を有効利用するとともに、高レベル放射性廃棄物の体積を減らし、有害度の低減にも寄与することから、我が国では原子燃料サイクルの推進を基本方針としています。
<高浜発電所 使用済燃料乾式貯蔵施設の設置計画の概要>
第一期 | 参考:第二期※2 | |
対象プラント | 高浜発電所1号、2号、3号および4号機共用 | 同左 |
容 量 | 輸送・貯蔵兼用キャスク 最大22基、使用済燃料 約240t |
輸送・貯蔵兼用キャスク 最大10基、使用済燃料 約110t |
工 期 | 2025年~2027年頃 | 2026年~2030年頃 |
(2025年6月13日に申請)
乾式貯蔵施設で使用するキャスクの安全機能
- キャスクは、使用済燃料を安全に貯蔵するために、法令等に基づき「除熱」「閉じ込め」「遮へい」「臨界防止」の4つの安全機能を有しており、地震、竜巻、森林火災等に対しても安全性が維持される設計です。
安全機能 備 考 除熱機能 発生する熱を伝熱フィン等でキャスクの
表面に伝え、外気で冷却キャスク表面の温度は人が近づいても
問題ない温かさ閉じ込め機能 二重の蓋で密封して放射性物質を
閉じ込め気密性を確保 遮へい機能 金属製の胴・蓋や中性子遮へい材等により
放射線を遮へい放射線は周辺で作業しても
問題ないレベルまで低下臨界防止機能 バスケットにより使用済燃料の間隔を保ち
臨界を防止臨界…核分裂の連鎖反応が維持される状態 このキャスクは輸送にも使用することから、輸送中に想定されるさまざまなトラブルに対しても安全機能が損なわれない頑丈な設計となっています。
キャスクの格納方法(個別格納方式)
- キャスクは、個別に格納する方式を採用します。
キャスク自体の安全性と合わせ、地震や津波などの自然災害を含め、様々なリスクに対しキャスクの安全機能が損なわれないように設計します。なお、貯蔵期間中は定期的に監視を行い、しっかりと管理します。
乾式貯蔵施設設置による放射線量への影響
- 発電所敷地境界外で受ける放射線量は、原子炉施設本体等からの線量を含めても、日本人が1年間に自然界から受ける放射線量に比べて十分に低く、胸部エックス線1回あたりの線量を下回るレベルです。
- 発電所の敷地境界外で原子炉施設本体や乾式貯蔵施設から1年間に受ける放射線の量 ........ 0.05ミリシーベルトを十分下回る
【参考】日本人が1年間に自然界から受ける放射線の量 ............ 2.1ミリシーベルト
胸のエックス線集団検診1回あたりの放射線の量 ........ 0.06ミリシーベルト
続いて、運転開始から40年を超える原子力発電所の取組みについて
ご説明します。
高浜発電所1~4号機など40年を超える原子力発電所の運転にあたっては、日々のメンテナンスや定期検査、積極的な機器の取替えのほか、取替えが難しいものは劣化状況を把握するための特別点検などを行っています。
その上で、安全上重要な機器・構造物について設備の劣化状況評価を行い、60年までの運転を想定しても問題がないことを確認しています。
日常の点検やメンテナンス
日々の点検等では、目視で確認できる大きな変化だけでなく、発熱や振動など、目に見えない小さな変化も察知するため、さまざまな診断技術を活用し異常の早期発見に努め、必要に応じてメンテナンスを実施しています。約1年ごとの定期検査では重要な機器は分解し、部品の細部まで確認しています。
加えて、長期的な信頼性を確保する観点から、使用材料等の改良も踏まえた、大型機器やポンプ、配管等の取替えも積極的に実施しており、発電所全体の安全性を高い水準に維持しています。
40年を超える原子力発電所の取組み
- ○特別点検
- 取替えが難しい「原子炉容器」、「原子炉格納容器」、「コンクリート構造物」については、通常のメンテナンスに加え、運転開始から40年を迎える前に設備の状況を詳細に把握するための特別点検を行い、いずれの設備にも異常がないことを確認しています。
- ○劣化状況評価
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高浜発電所では1基あたり約3,000~4,000の設備について、部品レベルで想定される経年劣化事象を抽出し、運転開始後60年までの評価を行い、長期的な安全性が確保されることを確認しています。
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特別点検、劣化状況評価の結果を踏まえ、蒸気発生器の取替え等、実施すべき保全活動(追加保全策)を定め、劣化管理に取り組んでいます。
長期的な信頼性を確保する観点から高浜3、4号機の蒸気発生器の取替えを計画しています
高浜3、4号機は、これまでの定期検査で蒸気発生器伝熱管の損傷等を確認した都度、施栓により健全性を確保してきましたが、長期的な信頼性を確保するという観点から、予防保全対策として蒸気発生器一式を取り替えます。
- ①伝熱管の材質変更
- 伝熱管に応力腐食割れ※が発生しにくいことが確認されている材質を採用する等、応力腐食割れの発生リスクの低減を図ります。
※環境、応力、材料の3要因によって発生する割れ
- ②振止め金具の改良
- 振止め金具の組数を増やすことで伝熱管の振動を小さくし、摩耗等による損傷を防止します。
高浜1号機は1996年、2号機は1994年に、蒸気発生器の取替えを実施しています。