原子力発電所では、東京電力福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさないために、何重もの安全対策を行っています。 今回は、高浜発電所における安全対策についてご説明いたします
関西電力からのお知らせ 2021年2月28日発行
原子力発電所では、東京電力福島第一原子力発電所のような事故を
二度と起こさないために、何重もの安全対策を行っています。
今回は、高浜発電所における安全対策についてご説明いたします。
▲最初に、福島第一原子力発電所事故の原因をご説明いたします。
福島第一原子力発電所事故の原因について
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原子力発電所では、原子炉容器内の核燃料が核分裂する際に発生する熱を利用して蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電しています。また、原子力発電所は、核分裂を「止める」、燃料を「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」という考え方で設計されています。しかし、福島第一原子力発電所では、地震に伴い発生した津波によって、全ての電源を失い、「冷やす」「閉じ込める」の機能が働かなくなり、重大事故に至りました。
止める 制御棒※を挿入し、直ちに燃料の核分裂を止めます。
※原子炉の出力(核分裂の割合)を調節する役目を持つもの
冷やす 電動ポンプ等を使い、原子炉容器内の燃 料を冷やします。 閉じ込める 原子炉容器や原子炉格納容器等により、放射性物質を閉じ込めます。
▲次に、事故を教訓として取り組んでいる具体的な安全対策をご説明いたします。
原子力発電所の安全確保について(その1)
- 上記の事故を教訓として、事故を起こさない、起こったとしても進展・拡大を防ぐため、何重もの安全対策を行っています。
原子力発電所の安全確保について(その2)
- 事故の進展を食い止めるためには、「機器や計器を動かす電源」と「原子炉を冷やし続ける水」を確保する必要があります。そのため、電源や給水手段について何重もの対策(多重化・多様化)を行っています。
- また、万が一重大事故が発生した場合の対策として、原子炉格納容器の水素爆発を防ぐ対策等を行っており、さらにテロ等のあらゆる事態への備えとして、意図的な航空機衝突等に対処するための施設の設置も進めています。
- さらに、自主的な安全性向上対策として、中央制御盤の取替え(アナログ式からディスプレイ〔タッチパネル〕や大型の表示装置での操作や監視ができるデジタル式に更新)や、免震事務棟(重大事故等の対応要員が待機等で使用する建物)の設置等も行っています。
●安全性向上対策の詳細については、こちらからもご覧いただけます。
事故が発生した場合の対応能力の向上について
- 万が一の事故に備え、発電所構内に、速やかに対応できる要員100名が24時間常駐しており、加えて、事故発生から6時間以内に、28名以上の対応要員を召集する体制を構築しています。
さらに、協力会社やプラントメーカ、建設会社による発電所支援により、合計700名以上が事故収束に注力することになっています。
また、教育・訓練の充実・強化や防災訓練の実施により、事故時の対応能力の向上を図っています。
▲続いて、運転期間が40年を超える高浜発電所1、2号機の安全性について
ご説明いたします。
原子力発電所の運転期間について
- 福島第一原子力発電所の事故後、法律(原子炉等規制法)の改正により、原子力発電所の運転期間が40年とされるとともに、原子力規制委員会の認可を受ければ、1回に限り20年延長(最長60年運転)できるしくみとなりました。高浜発電所1、2号機は、60年までの運転期間延長について、原子力規制委員会から認可をいただいています。
大型機器等の取替え
- 高浜発電所1、2号機では、全ての設備や機器に対して計画的にメンテナンスを行い、大型機器や配管等、取り替えられるものは積極的に新しいものに取り替え、事故の未然防止に努めています。
取替えが難しい設備への対応
- 運転開始から40年を迎えるにあたって、取替えが難しい「原子炉容器」、「原子炉格納容器」、「コンクリート構造物」については、通常のメンテナンスに加え、設備の状況を詳細に把握するために、詳細な点検(特別点検)を行いました。その結果、いずれの設備にも異常がないことを確認しています。
さらに、高浜1、2号機それぞれ約3,000以上ある重要な設備を、部品レベルに仕分けて評価を行い、60年運転時点の設備の状態を想定しても、運転を安全に行うことができることを確認しています。
●40年を超える原子力発電所の安全性については、こちらからもご覧いただけます。
60年間運転した時点での原子炉容器の安全性について
- 金属は中性子線(核分裂で発生する放射線の一種)を浴び続けると、その材料が元々持っているねばり強さ(外から加わる力に対して抵抗する力)が徐々に低下します。原子炉容器は、核燃料を収納している金属製の容器で、燃料から放出される中性子線によって、原子炉容器の金属(燃料に近い部分)もねばり強さが、運転とともに徐々に低下しますが、60年運転した場合でも原子炉容器の安全性に問題がないことを確認しています。
測定方法
原子炉容器のねばり強さがどれだけ低下しているのかを測定するために、建設時に、原子炉容器と同じ材料の金属をカプセル(8体)に入れ、原子炉容器より燃料に近く、多くの中性子線を受ける位置に設置しています。そのカプセルを調べることで、原子炉容器の将来の状態を確認することができます。
→既に4体のカプセルを計画的に取り出しており、約50年運転した時点での原子炉容器のねばり強さがどれだけ低下しているかを事前に確認できています。今後も計画的にカプセルを取り出し、最終的には60年間運転した時点でのねばり強さを測定していきます。確認結果
- ○特別点検により、原子炉容器に傷がないことを確認しました。
- ○実験(監視試験)により、ねばり強さがどれだけ低下しているかを測定した結果、ルールで定められた傾向と同様であり、ねばり強さの低下が予想の範囲内であることを確認しました。
- ○60年間運転した時点での原子炉容器のねばり強さと、その際に事故が発生した場合に生じる力(破壊力)を比較した結果、ねばり強さが十分にあり、原子炉容器が壊れないことを確認しました。
- ※より厳しく評価するため、破壊力はあえて大きな力を想定し、比較しています。
原子力発電の必要性について
- 各発電方法には、安定供給・経済効率・環境適合といったそれぞれの側面で、さまざまな長所や短所があり、エネルギー資源に乏しい日本では、さまざまな発電方法をバランスよく組み合わせることが重要です。
政府は、2030年度時点のあるべき発電方法の組み合わせとして、原子力発電の比率を20~22%としていますが、もし原子力発電所が40年を超えて運転せず、今後、国内の原子力発電所の新増設がない場合、2030年度での比率は20~22%に届きません。これにより、不足した電力を火力発電等で補うことになれば、CO2排出量の増加等を招く可能性があります。安全確保を大前提に、国内の原子力発電所を最大限活用することとしています。