外部電源異常検知システムの概要
1.1相開放故障事象(OPC)の概要について
OPC(Open Phase Condition)の概要(米国におけるOPC発生事例より)
・2012年1月30日、米国Byron2号機において定格出力運転中、以下の事象が発生した。
- 起動用変圧器につながる架線の碍子の破損により、3相交流電源の1相が開放状態となり、起動用変圧器から給電されていた常用母線のRCPが低電圧リレー動作でトリップ、さらに原子炉がトリップした。
- 一方、当該起動変圧器から同時に給電されていた非常用母線については、低電圧リレーが動作せず、3相交流電圧が不平衡のまま外部電源への接続が維持された。
- 原子炉トリップ後に起動した安全系補機類が、非常用母線の電圧不平衡に起因する過電流等により連続的にトリップしたが、運転員は事象発生当初、その原因を特定することができなかった。
- その後、運転員が1相開放故障状態に気付き、外部電源の遮断器を手動で動作させることにより、外部電源系から非常用母線が開放され、非常用ディーゼル発電機が自動起動し、電源を回復した。

- 上記のようにOPCは主に架線部で発生し、地絡を伴わない場合や非常用母線の電圧低下が小さい場合は、既設の保護リレー等で検出できない事象である。設備の構造や設置環境から、架線部以外ではOPCの発生は考えにくく、仮に発生しても、地絡を伴うため、検知可能である。
2.国内におけるこれまでの取組みと今後の計画
- 国内では、これまで海外情報等の収集を行いながら、OPC自動検知システムの開発・検証及び実機導入について検討し、設置計画の策定まで実施済である。
- その後、設置計画に基づき、代表プラントとして高浜発電所予備変圧器にOPC自動検知システムを設置し、試運用・現地検証を実施した。今後、各プラントへの実機導入を進めていく。

3.高浜発電所に設置した検知システムの構成
- 【検知システム概要】
-
-
<検知方法>
本システムは、変圧器高圧側電流及び対称成分の大きさから欠相を検知。
-
<機器構成>
検出器:変圧器励磁電流(約0.1A)を測定可能な光CTを採用。
検知器:光信号を入力可能なデジタルリレーを採用。 -
<発信信号>
検出器からの信号を検知器に入力し、検知器から欠相検知・警報信号等を発信。
-
<検知方法>

4.検知システムの設置概要
-
対象変圧器
高浜発電所 予備変圧器
-
工事期間
2020年9月~2021年3月(現地施工は2021年2月~2021年3月)
-
工事内容
OPC検出器(光CT)及び自動検知盤を現場に設置し、OPC警報発信機能を追加。

5.検知システムの試運用・現地検証結果
-
現地検証の目的
以下の項目を確認することを目的に現地検証を実施した。
①これまでの開発において前提としてきた実機環境に大きな相違がないこと。
②現地での誤検知の有無等。
-
検証期間
2021年3月度に現地設置を完了し、2021年3月~2022年3月の約1年間を検証期間とした。
現地検証期間中は、検知システム動作時の要因調査のために記録装置を設置した。 -
検証内容
- (1)システム設計の妥当性に関する検証
-
①現地試験による動作検証
実機環境において実施する可能性がある運転操作を行い、警報発信(不要動作)の有無を確認し、システム設計への反映の必要性を検討した。
②通常運用状態における動作検証実機環境での通常運用状態において、警報発信(不要動作)の有無を確認し、システム設計への反映の必要性を検討した。
- (2)システムの監視性や運転操作に関する検証
- 通常運用状態及び誤検知等による監視性や運転業務への影響を聞き取り等により確認した。
-
検証結果
検証の結果、システム設計に反映が必要な事項は確認されなかったため、運用上問題はないと判断した。