エネルギー・環境教育

電磁誘導ってコイルでしかできないの?
渦電流

電磁誘導ってコイルでしかできないの?

ここ>で説明した電磁誘導(でんじうゆどう)のポイントは、次のようにいうこともできます。

「金属の近くで磁石を動かすと、電流が流れて、
磁石の動きを打ち消そうとする力がはたらく」

たとえば、ここに金属(きんぞく)の板があるとします。この金属の板から少しはなして磁石を置きます。この状態で磁石を横に動かすとどうなるでしょう。初めの磁石の位置から磁石が近づいた部分は、電磁誘導で説明した、磁石がコイルに近づいてきたのと近い状況になります。するとそこには、あたかもコイルがあるかのように電流が流れ、磁石に反発する力が生まれます(磁石のN極を近づけて動かした場合、金属板にはその電流によって、N極が生まれる)。
反対に、磁石が遠ざかった部分は、コイルから磁石がはなれていくのと近い状況です。ここにも、コイルがあるかのように電流が流れ、磁石を引き寄せようとする力が生まれます(金属板にはS極が生まれる)。これらの電流はそれぞれ渦(うず)のようにまるく流れるので「渦(うず)電流」といいます。
例えば、軽い金属板の上で磁石を近づけて横に動かすと、渦電流で金属板に生じた磁力によって、金属板は、磁石を動かした方向につられて動きます。下の図をよく見てください。

さて、「マグネットスピン」では、とうめいな台の下に2つのコイルが取り付けられています。このコイルに電流を流すと、コイルは電磁石になります。コイルに流れる電流は家庭でも使われている「交流」で、西日本では1秒間に60回、すごい早さで電流の向きを変えています。ようするに、台の下では、磁石を非常にすばやく動かしているのと同じような状態になるわけです。

この状態で「マグネットスピン」の上に折り曲げたクリップなど、電気を通すアイテムを置くと、変化する磁界の影響(えいきょう)を受けて、クルクルと動き出します。同じようにアルミなどの磁石にくっつかない金属の破片(はへん)を少量だけ置くとどうなるでしょう? やっぱり、クルクル動き出します。アルミ自体は磁石にはくっつきませんが、その破片の中で渦(うず)電流が生まれているからです。この渦(うず)電流で金属の破片(はへん)にも磁力がうまれ、コイルの磁界に反応するわけです。

IHクッキングヒーター

IHクッキングヒーターで物が温まるのはどうして?

渦電流(うずでんりゅう)のしくみを利用したのが、IHクッキングヒーターです。IHクッキングヒーターの下には、たくさんのコイルが並んでいます。コイルに電流を流すと磁力が生まれ、磁力線はなべの底を通り抜けるような状態になります。すると、なべの底には、<ここ>で説明したような渦電流が発生します。

渦電流の説明では金属の板を動かしましたが、IHクッキングヒーターでは、
<交流>の電気が流れることでコイルの磁力が変化するので、 磁石が動いているのと同じ状態になります。お互いの位置が絶えず変わっている点では、金属の板(ここではなべの底)を動かしているのと同じですね。渦電流が金属に生じると、そこには、熱が発生します。これにより、なべが温まるというわけです。
IHクッキングヒーターでは、このようになべに熱を直に発生させるので、火で温める場合のように熱を逃がさず、むだがありません。