地域・社会貢献活動

10周年記念作品集に寄せて

  • 障がい者アートと『かんでんコラボ・アート21』
  • 美術家、四天王寺大学名誉教授  森本 紀久子

10周年記念

2001年、関西電力の創立50周年記念事業としてスタートした「かんでんコラボ・アート21」。

当初3年間限定の予定でしたが、各種団体のご尽力、そして、何より障がい者アートの魅力とエネルギー、右肩上がりの公募数などの後押しで、2010年無事10回展を迎えることができました。そして今、10周年記念作品集が出版される運びとなった事は、審査員の一人として大変嬉しく思います。この作品集の出版はきっと次の10年への大きな礎となるにちがいありません。

「かんでんコラボ・アート21」がこの10年間に多くの障がい者アートを社会につなぐ役割を続けてきた、その成果が今、徐々に実をむすび始めています。

その一例が、先日開催された芦屋市立美術博物館での「アートピクニック・美術を楽しむ」展。この展覧会は身体的・知的・精神的に障がいのあるとされる人の作品を紹介するもので、「色・かたち・線」をテーマに選出された関西在住の14名による109点の作品が展示されていました。

なんと、選ばれた14名のうちの5名に「かんでんコラボ・アート21」への出品歴があり、とても感激しました。その5名は、2003年最優秀賞の澤井玲衣子さん、2008年最優秀賞の西岡弘治さん、同じく2008年入選の大槻修平さん、そして2009年入選の植野康幸さん、同じく2009年入選の山村晃弘さんでした。みんな胸を張って堂々と自分の作品の説明をしていました。自信に満ちた、とても良い顔になっていました。そして、会場はにぎやかな喜びであふれていました。

私は「かんでんコラボ・アート21」がつないだ実績を静かに嬉しく眺めていました。5人はそれぞれ個展を開いたり、障がい者アート以外の公募展に挑戦したり、中には作品の商品化を試みたりしながら、それぞれ社会へと出発し始めていました。

また、ここ数年の事ですが、現代アート展でも「かんでんコラボ・アート21」入選者の出品を見かけるようになっています。「かんでんコラボ・アート21」はいまや<アートで企業と社会をつなぐコラボレーション>の「試み」から、ここ10年のうちに「登竜門」の一つに定着し始めたのかも知れません。

初心に戻り、また、手さぐりな緊張感を積み重ねながら、「かんでんコラボ・アート21」は次の10年へと出発していくのでしょう。