地域・社会貢献活動

10周年記念作品集に寄せて

  • 見たことのないものとの出会い
  • 美術家、成安造形大学教授  今井 祝雄

10周年記念

絵を描かない子どもはいません。かつて児童画教室を開いていた私は、成長期の子どもたちにとって何かを表現することがいかに大切なことかを体験しました。そうしたアートの効能とは何でしょうか?それは表現する人だけでなく見る人にも、生活に安らぎと彩りをもたらし、生きていくうえでの希望と勇気や心の豊かさを生み、しなやかで穏やかな感性を育みます。

近年注目される障がいのある人たちのアートも児童画と同様、上手い、下手を超えた生きる証しにほかなりません。上手い下手を超え、ときに下手だからこそのパワーを持つ造形も少なくありません。

昔から人は何かを表現しようとしてきました。それは今も変わらず、これからも変わることはないでしょう。なぜ絵を描くのでしょうか?モノをつくるのでしょうか?

誰に頼まれたわけでもなく、ただ「つくりたいからつくる」人もいれば、なかには「描かずにはいられない」「つくらずにはいられない」という人もいるでしょう。

私もそんな一人ですが、自作はともかく、惹かれる作品は、「描きたい」「つくりたい」という飽くことのない衝動から、表現しないではいられない作者の気持ちが伝わってくる作品であったり、既成の常識や概念をリセットして生みだされる、何ものにもとらわれることのない自由な表現です。そこに人がモノを作る原点を伺うことができます。

アートに垣根(ボーダー)はありません。表現の根源的なところでは障がいの有無は関係ありません。作者の年齢や背景、作品の形式、素材や手法にもこだわらないユニークな創作を応援する「かんでんコラボ・アート21」にかかわるようになって、改めて人がものを創造することの不思議を感じるようになりました。審査にあたっては、「よく描けている」「上手くつくっている」ことも大切ですが、何よりも「見たことのないもの」の独自性を優先しています。毎回、そんな作品に出会うのが楽しみです。