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下水再生水の複合利用、V2XによるVPP
イオンと関電で取り組む持続可能なまちづくり

大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町

2016年3月にオープンしたイオンモール堺鉄砲町では、次世代型エコストア「スマートイオン」の一つとして挑戦的かつ実用的な取り組みが行われています。
下水再生水を熱源および水源として有効活用する「下水再生水複合利用事業」、V2Xを活用した「VPPと環境価値取引の実証」を通じ、関西電力グループとイオングループという、異なる2社が協業して持続可能なまちづくりに取り組んでいます。

大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町
大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町
CASE 1

下水再生水を熱源・水源に複合利用
スマートで魅力あるまちづくり

イオンモール堺鉄砲町からほど近い場所に位置する三宝水再生センター。ここで処理された下水再生水を熱源および水源として有効活用する「下水再生水複合利用事業」をイオンモール施設内で運用しています。
下水再生水を一つの施設内で給湯と空調の熱源として利用する事例、下水再生水を熱源・水源に複合利用する事例は、いずれも全国初の事業となりました。

下水再生水をイオンモール施設内の熱源に有効活用

大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町

下水再生水は、「夏季は冷たく、冬季は温かい」という井戸水と似た特性があります。この特性を活かし、従来、エネルギーとして利用していなかった下水再生水をイオンモール施設内の熱源として活用。
例えば、夏季は給湯器等の熱源に利用して水温を下げた後、空調熱源(冷房)で再度利用します。これらの運転により、年間で3.5%の省エネ効果と7.5tのCO2削減効果が見込めます。

熱利用後は水源としてイオンモールと周辺環境を潤す役割を

熱利用後の下水再生水は、イオンモール施設内で膜処理装置による浄化処理を行い、「憩いの場せせらぎ」やトイレ洗浄水として活用します。
また施設外の、内川緑地せせらぎ水路の水源としても活用した後、内川に流し込みます。これにより、堺市の「第2次堺市環境モデル都市行動計画」や「仁徳陵・内川水環境再生プラン」、環濠都市堺の再生に向けた取組みにも貢献しています。

大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町
大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町

下水再生水の複合利用を通じてイオンモールと周辺地域の環境に貢献し、より魅力的なまちをつくる

環境への配慮に加え、エネルギーの効率的な利用や防災対応など、「まちぐるみ」の視点を取り入れた次世代型エコストア「スマートイオン」であるイオンモール堺鉄砲町。
この施設を中心に、下水再生水のような未利用の地域資源を活用し、「快適な暮らし」と「まちの賑わい」が持続する「クールシティ・堺」の実現や、室町時代後半から江戸時代初期にかけて「黄金の日日」を迎えた「歴史文化のまち堺」の魅力発信のため、関係する事業者一体となって取り組んでいます。

水循環創出のしくみ図

水循環創出のしくみ図

【事業者】
堺市/イオンモール株式会社/株式会社関電エネルギーソリューション/関西電力株式会社
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2016/0314_1j.html

CASE 2

貯めた電気をWAONポイントに変換
V2XによるVPPと環境価値取引の実証

EV(電気自動車)は地球温暖化や省エネルギー、さらには防災の観点から「走る蓄電池」として注目を集めています。2019年7月〜2020年3月にかけて、イオンモール堺鉄砲町では、モニターの方々にEVで貯めた電気を調整力※1として提供いただき、報酬としてWAONポイント※2を付与するという「V2XによるVPP※3」を実施。また、BC(Blockchain:ブロックチェーン)技術を活用し、環境価値取引を行うための各種データ(PV発電量、EV充電量、EV放電量など)の記録が正しく行われているかについてもあわせて実証しました。

※1 周波数制御や需給バランス調整など、電力供給を制御するシステムの能力のこと。たとえば、猛暑による需給ひっ迫時に需給バランス調整に活用できる「電源Ⅰ’」など
※2 イオンの電子マネー「WAON」による支払いを行った際にたまるポイント。WAONポイントを、イオンの電子マネー「WAON」に交換することで、イオンの店舗などで利用できる
※3 バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)、仮想発電所のこと。蓄電池やEVなど企業や家庭が持つさまざまなエネルギーリソースをIoTで管理・制御することで、あたかも一つの発電所のように機能させる取組み

次世代インフラのカギV2X技術でEVが電気を運ぶ時代に

大阪府 堺市 イオンモール堺鉄砲町

V2Xとは「Vehicle to X」を意味し、クルマと何か(クルマ、歩行者、インフラ、ネットワークなど)との接続や相互連携により価値を生み出す技術全般を指します。次世代のエネルギーインフラのカギを握るとして、注目されている技術です。
関西電力では、VPPのリソースとして「V2H(Vehicle to Home)」を活用することで、一般のお客さまにもEVを使ってVPPに参入できるよう、システム構築に取り組んできました。
今回は、イオンモール堺鉄砲町の駐車場を提供いただくことで、全国初となる「公共充電場所でのVPP」を実証。まとまった電力消費があり、クルマでの利用客が多いイオンモール堺鉄砲町だからこそできた取組みです。

4企業+自治体で共同実証イオンモールでVPP報酬を付与するしくみづくり

具体的には当社、イオン株式会社、イオンモール株式会社、株式会社エネゲート、堺市によって今回の実証を実施。
当社はプロジェクトマネージャーとして、VPP統合サーバの提供など技術面での調整を担当。イオン株式会社・イオンモール株式会社は、VPPのためのフィールドを用意するとともに現場調整を実施しました。株式会社エネゲートはV2H機器とEV(電気自動車)充電器をイオンモール施設内に設置し、リソースアグリゲーターとして遠隔制御するとともに、社有のEVも提供しました。また、堺市からもEVが提供され、実証のモニターを市民からも募ることで共同実証が実現しました。

V2XによるVPP実証の構造図

V2XによるVPP実証の構造図

手順としては、まずモニターの方々には普段の生活を通じ、各戸でEVを充電していただきます。スマホアプリからVPPの要請を受け取った際、そのEVを使ってイオンモールで充放電を行います。充放電に協力していただいたモニターの方々へはWAONポイントが報酬として付与されます。モニターの方々のEVからの充放電により、イオンモールがVPPで需給調整に貢献できるというしくみです。

環境価値取引を普及させるため運用管理にBC技術を活用

この実証ではWAONポイントを報酬としましたが、現行制度や技術で環境価値をマネタイズするのは難しく、取引を普及させるにはまだ課題が残ります。そこで2019年度はVPP実証に加えて、環境価値取引のための記録が正しく行われているかどうか、当社技術研究所巽実験センター内の設備を一般家庭と模擬してBC(Blockchain)技術による検証も実施しました。また、2020年度は実際に一般家庭にもご協力いただいて検証を継続しています。
BC技術とは「分散型台帳技術」とも呼ばれ、記録の改ざん耐性を高めたデータベースを構築できることが特徴です。これを活かし、モニターのEV充放電量の情報をBCプラットフォーム上で実績(履歴)管理。正しくモニターの実績が把握でき、環境価値取引のビジネス展開に一定の確証を得ました。
当社グループの知見と技術、イオングループのフィールドとサービス力、異なる2つをかけ合わせることによって生まれる新しい価値提供を通し、これからも持続可能なまちづくりに取り組んでいきます。

BC管理よる環境価値取引の構造図

BC管理よる環境価値取引の構造図

【事業者】
堺市/イオン株式会社/イオンモール株式会社/株式会社関電エネルギーソリューション/関西電力株式会社
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/0725_1j.html