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おおい町の語り部たち

河 村

  二ソ講祀り(まつり)
  (瓜生の杜を訪ねて)
川口茂さん
語り部
川口 茂 さん
 半島を切り開いた先祖へ畏敬の念

 大島半島には、この地を開拓した先祖をまつる「ニソの杜(もり)」があります。言い伝えによると、大島には最初24名(みょう)と呼ばれる開拓区があったとされ、その草分けからだんだん分かれて、今日の大島に発展し、その草分けを祀ったのが、ニソの杜であると言われています。現在、ニソの杜の数は30ヵ所余りに増えていますが、増加の理由は、のちに入植した人のものか、その他の神社とニソの杜とが混同されたものと考えられます。ニソの杜には、それぞれ「瓜生(うりょ)の杜」とか「浜祢(はまね)の杜」などの名前がついています。
お詣り
日が暮れるまでに、
夫婦でニソの杜にお詣りをします。

   このニソの杜の祀りが、毎年11月22日夜から翌未明にかけて行われます。大島ではニソ講と呼ばれる本家分家筋の講仲間があり、毎年ニソの杜の世話をします。例えば「瓜生の杜」の場合は、現在、7家族が世話をしており、昨年、当番に当たったのが川口茂さんでした。瓜生の杜は、県道から少し山に入った所にあり、現地には、高さ1mほどの祠が安置され、隣には入り組んだ枝をつけた樹齢数百年のタモの木がそびえています。儀式では、川口さんが、わらの束の上に赤飯と団子を載せたものを祠に供え、玉砂利で周辺を清めた後、信心深く手を合わせます。
 「昔は夜中や夜明け前に提灯をもってお詣りにいきましたが、最近は、日が暮れる前の夕方に済ませます。また、瓜生の杜には、およねの狐がおって、その白狐に化かされるから、一人で杜に来たらあかんといわれておった。だから必ず婆さんと2人でお詣りしたものです。翌日は直会(なおらい)で賑やかな宴席を設けていましたが、うちの講では今はありません。昔に比べると、ずいぶんと簡素化されました」と川口さん。
 「杜の木を切るとたたりがあるからね」「どこの森でも拝むと、体が丈夫になりますよ」「お参りすると、気持ちがしんとなります」「杜に祭られているのは、私たちの大先輩。大切にしなくては」・・・・・・川口夫妻から聞かされる言葉から、この大島の人々には、森への信仰と、遠い祖先への感謝の念が、今も脈々と生き続けていることが実感できます。   祠
祠のしめ縄を新しくして、
赤飯や団子を供えます。

  ニソ講祀り
引き継ぐ人
川端 重夫さん
ニソの杜は廃れずに、
ずっと続くと思う。

うちの家は「瓜生の杜」を祀る7軒のうちの1軒で、川口さんの次に当番が回ってきます。7年に1度しか回ってこないのだから、一生懸命やらないといかんと思っています。それとうちには川端家だけの杜があり、こちらは1軒だけなので、毎年祀っています。杜によって飾り方も少しずつ違いますが、共通しているのは、これからも杜を守って行こうという気持ち。二ソの杜は廃れずに、ずっと続くと思いますよ。
川端 重夫 さん
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