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おおい町の語り部たち

鹿 野

  鹿野六斎念仏
  (県指定無形民俗文化財)
中川忠彦さん
語り部
中川 忠彦 さん
 お盆は集落各戸を回って門念仏

 鹿野六斎念仏は、全戸あるいは念仏講員が行うもので、1月16日の正月法要始めと、8月14日のお盆、そして8月15日の施餓鬼(せがき)法要の後に、仏燈寺本堂で行われます。戦前までは、本郷を除く多くの集落で行われていた六斎念仏も、現在では、この鹿野と父子に残っているだけ。ちなみに以前は、葬儀の場合も、希望に応じて埋葬時と喪家へ帰った時に行っていましたが、現在は、「しへん」という曲を打つ者が少なくなったため、鹿野ではほとんど行われなくなったそうです。
 「お盆には集落各戸を回って門念仏を行います。子供の頃は、鉦(かね)と太鼓が聞こえると、ああ、盆が来たなと、実感したもんです。今では鹿野最大の行事ですな。門念仏に来てもらった家ではお布施を包んで渡します。これがその日の費用に充てられるわけです。鉦2つ、太鼓6つで回りますが、鉦を叩く人が2人しかいませんので、1班だけで回っており、丸1日かかります。大変なんですよ」と語る区長の中川忠彦さんは、鹿野六斎念仏保存会のメンバーであり、自らは太鼓を担当しています。

鉦
六斎念仏の演奏をリードする鉦。
後継者の育成が今後の課題です。

 お盆の門念仏は、各家から講員が1名ずつ参加し、朝の8時に出発。鉦の一人が座敷に上げてもらい、仏壇の前に座って鳴らし、もう一つの鉦は、太鼓とともに縁側に並んで打ちます。太鼓は自由参加なので、参加者が交替で叩きます。こうして全戸を夕方までに回り、最後に、区の中央にある集落センターの観音堂で念仏を奉納。念仏が終了すると、盛大に反省会を行います。
 「今日まで六斎念仏が続いたのは、熱心な人がいてくれたお陰。一時は、後継者問題に悩んでいましてね。お盆の前に太鼓の練習をしますが、集まりが悪い。中年層で構成されている懇話会で、もうやめようかと話すと、やるとこまでやりたいという返事だった。それから練習する人が一挙に増えて、符も練習しやすいように工夫してくれました。若い人がいるから、当面安泰ですよ」。中川さんの赤銅色に焼けた精悍な顔に、安堵の表情が浮かんでいました。
門念仏
門念仏では、座敷と縁側に分かれて
鉦と太鼓を叩きます。

鹿野六斎念仏
引き継ぐ人
石倉 治寿さん
祖父の葬式で六斎念仏を受け、
「ありがたいな」と感じました。

お盆には六斎念仏がつきもので、小さい頃から聞きながら育ちました。また、私が30歳の頃、名古屋から大飯町に帰ってきた頃に祖父の葬式があり、六斎念仏を唱えてもらいました。そのとき「ありがたいな」と感じたのが、いま私が六斎念仏で太鼓をやらせてもらっている一番の動機です。せっかく今まで伝承されてきたものですから、これからも続けていきたいですね。
石倉 治寿 さん
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