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おおい町の語り部たち

父 子

  父子六斎念仏
  (県指定無形民俗文化財)
吉田清次さん
語り部
吉田 清次 さん
 聞く人の心に強く印象が残る仏教音楽

 正月の「仏法はじめ」が行われる日。海元寺に集まった父子念仏講中の人たちが賑やかに会食を行い、父子六斎念仏保存会の人たちが、祖霊供養のための六斎念仏を始めました。最初は、念仏が節をつけて唱えられ、次に鉦(かね)と太鼓がテンポよく打ち鳴らされます。やがて念仏と鉦と太鼓が重なりあって、お寺の中の雰囲気もぐ〜んと熱気で包まれ、約15分ほど続いて、六斎念仏は終わりました。
 「今回、念仏の伴奏に使われたのは、3つの鉦と6つの小鼓。昔は、符もなかったので、口伝えで見よう見真似で覚えたものです。でも続けていくためには若い人に伝えなければならないということで、国久音八さんが符をつくられまして、それから覚えやすくなりました」と説明する父子区長の吉田清次さんは、保存会では太鼓を担当しています。
 この六斎念仏は、福井県史にも、「鉦鼓に調声された詠唱のリズムに耳を傾ければ、曲目によって哀婉雅亮(あいえんがりょう)の感に沈み、或は歓喜勇躍に奮い起つような感興を引き起こす仏教音楽は、民俗芸能としては保存されねばならない大切な価値の高いものである」と記されています。
 また、区の長老、木村喜一さんの研究によると、六斎念仏の祖は、空也上人だといわれており、広く行われたのは鎌倉初期。その後、衰退していたのを、今からおよそ600年ほど前に再興。父子六斎念仏は、この再興期に力を尽くした京都・千葉山興福寺の法如上人を開祖とする千菜系に属するといわれています。
 父子では六斎念仏が、8月14日のお盆には門念仏として行われます。講員全員が父子区内の薬師堂に集合し、区内を3班に分けて、各戸へ祖霊供養のための六斎念仏を奉納するもので、父子最大の行事。この他、葬送の時にも六斎念仏が行われるため、父子の人たちには、とても身近な存在です。
 「保存会には若手の人もいますので、当分は安心です。他に、父子をもりあげる会もあって、盆踊りの時にはバザーを開いたりして、大飯町の中では活気のある地区だと思いますよ」と、ちょっぴり誇らしげに語る吉田さんでした。

 符
  符の改良により、
  鉦や太鼓の伴奏も
  わかりやすくなったそうです。

六斎念仏
会食後に六斎念仏が始まると、  
 海元寺の中が熱気で包まれます。

父子六斎念仏
引き継ぐ人
猿木 哲夫さん
太鼓を覚えるのも
最初は符もなく
大変でした。

9年前の45歳の時に父子六斎念仏保存会の方から誘われたのがきっかけで、太鼓を担当することになりました。最初は符もないから覚えるのが大変で、家でも棒をもってたたきながら覚えたものです。次は息子に伝えたいですね。
猿木 哲夫 さん
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