プレスリリース

2007年1月5日
関西電力株式会社

美浜発電所3号機の原子炉起動および調整運転の開始について

美浜発電所3号機 第21回定期検査の概要

1. 今回の定期検査を利用して実施した主要な工事
 (1)原子炉容器供用期間中検査 (図1−1参照)
   原子炉容器供用期間中検査として、原子炉容器の溶接部等の超音波探傷検査を行い、異常がないことを確認しました。

 (2)原子炉容器管台溶接部等の応力腐食割れに係る点検・予防保全工事
(図1−2参照)
   国内外PWRプラントにおける600系ニッケル基合金溶接部の応力腐食割れ事例に鑑み、溶接部に600系ニッケル基合金が使用されている原子炉容器冷却材出入口管台、加圧器サージ管台等について、外観目視点検や超音波探傷検査を実施し、異常がないことを確認しました。
 また、予防保全として配管表面の残留応力を低減させるため、原子炉容器炉内計装筒管台の内表面について、ウォータージェットピーニング※1を施工しました。
 
※1: ウォータージェットピーニング
 水中で高圧ジェット水を噴射すると気泡群が発生し、この気泡群が金属表面近傍で崩壊する時の衝撃力で金属表面近傍の残留応力を圧縮応力に改善する。

 (3)原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事 (図1−3参照)
   海外プラントでの損傷事例を踏まえ、溶存酸素濃度が高く応力腐食割れの可能性がある化学体積制御系統等の配管分岐部を、耐食性に優れた材料で、応力集中の小さい溶接形状のものに取り替えました。

 (4)安全注入系統設備小口径配管継手部取替工事 (図1−4参照)
   信頼性向上の観点から、安全注入系統の通水時に生じる母管の振動と共振する可能性のある小口径分岐配管の溶接継手部を、応力集中の小さい溶接形状のものに取り替えました。

 (5)主蒸気・主給水管ベローズ他取替工事 (図1−5参照)
   第20回定期検査(平成15年度)において、主蒸気管・主給水管ベローズの外表面に軽微な錆が確認されたことから、当該ベローズを取り替えました。
 また、第17回定期検査(平成11年度)に発生した水撃現象(ウォーターハンマー現象)の影響が考えられるA−主蒸気系統配管の一部についても取り替えました。

 (6)発電機負荷開閉装置設置工事 (図1−6参照)
   発電機停止中において、所内電源(常用母線、非常用母線)の電源供給ラインを多重化するため、発電機と変圧器との間に発電機負荷開閉装置を設置するとともに、非常用母線への電源供給ラインを、常用母線から所内変圧器へ変更しました。

 (7)2次系熱交換器他取替工事 (図1−7参照)
   2次系の水質向上対策として、蒸気発生器への不純物持込み低減を図るため、給水加熱器等の伝熱管を銅合金製からステンレス製に取り替えました。また、復水器伝熱管からの海水漏えいを防止するため、伝熱管を銅合金製から耐食性に優れたチタン製に取り替えました。


2. 今定期検査中に実施した保全対策について
 (1)高サイクル熱疲労割れに係る点検 (図2参照)
   国内PWRプラントでの高温水と低温水の混合による温度ゆらぎを主要因とする高サイクル熱疲労割れ事象に鑑み、同様の熱疲労割れが発生する可能性のある余熱除去ポンプ入口ミニマムフローライン接続部等について、超音波探傷検査を実施し、異常がないことを確認しました。
 また、第18回定期検査(平成12年)時に実施した点検で製作時の加工痕・へこみ等が確認された再生熱交換器の連絡管について、今後の継続的な検査に伴う作業員の被ばく等を考慮し、同仕様のものに取り替えました。

 (2)余熱除去系統配管の点検
   国内PWRプラントでのステンレス配管に貼り付けられた塩化ビニールテープを原因とする応力腐食割れ事例に鑑み、余熱除去系統等の配管について点検を行い、塩化ビニールテープの貼り付け跡が確認された箇所について、浸透探傷検査を実施し、異常がないことを確認しました。


3. 2次系配管破損事故の対策工事
 (1)2次系配管点検・取替工事
       
  1 技術基準適合命令範囲の配管 (図3−1参照)
     原子力安全・保安院から技術基準適合命令を受けた第4低圧給水ヒータ出口弁から脱気器までの主復水配管については、炭素鋼配管部で28箇所(A系およびB系のオリフィス下流部2箇所を除く)とステンレス鋼配管部にある8箇所の合計36箇所について超音波検査(肉厚測定)を実施した結果、計算必要厚さを下回る部位および次回定期検査までに計算必要厚さを下回る可能性があると評価された部位はありませんでした。炭素鋼配管部30箇所については、技術基準に適合するよう、耐食性に優れたステンレス鋼配管に取り替えました。
平成17年12月19日 お知らせ済み]
       
  2 それ以外の配管 (図3−2参照)
     2次系配管肉厚管理指針の点検対象部位4,233箇所に加え、知見拡充の観点から1,696箇所、既に確認された減肉事象の水平展開として303箇所、合計6,232箇所について超音波検査(肉厚測定)を実施した結果、計算必要厚さを下回る部位が34箇所、次回定期検査までに計算必要厚さを下回る可能性があると評価された部位が6箇所確認されました。
 これら40箇所に加え、次回定期検査時に余寿命5年未満となる部位のうち、計算必要厚さを下回る部位の類似箇所など38箇所の合計78箇所の配管を取り替えました。
       
  以上まとめると、合計6,268 箇所について超音波検査(肉厚測定)を行い、技術基準適合命令を受けた主復水配管の炭素鋼配管部を取替えるとともに、それ以外の配管で減肉傾向が認められる部位等の合計108箇所の配管を取り替えました。
平成17年7月28日 お知らせ済み]

 (2)中央制御室への蒸気浸入に係る点検 (図3−3参照)
   事故時に中央制御室につながるケーブルトレイおよび電線管の壁貫通部等のシール施工が不適切であったため中央制御室への蒸気浸入が認められたことを踏まえ、中央制御室貫通部等416箇所のシール施工状況を点検し、不適切な箇所170箇所を含む385箇所について補修を実施しました。
平成17年7月28日 お知らせ済み]

 (3)熱水や蒸気等により影響を受けた機器の補修 (図3−4参照)
   事故により発生した熱水・蒸気・衝撃力の影響を受けた機器180台について、修理または取替えを行いました。
平成17年7月28日 お知らせ済み]

 (4)タービン動補助給水ポンプ出口流量制御弁の一時的動作不具合に係る
   対策工事
(図3−5参照)
   事故時に起動したタービン動補助給水ポンプの流量調整のため、ポンプ出口側にある流量制御弁が閉止された後、ポンプを待機状態とするため、当該弁を操作したところ、出口側の流体圧力が高い状態であったため、開動作しませんでした。この事象の対策として、弁体開動作用バネをバネ力の大きいものに取り替えました。


4. 定期検査中に発生した安全協定に基づく異常事象
 (1)4−3C母線停電に伴うA非常用ディーゼル発電機の自動起動 (図4−1参照)
   平成17年4月6日、「4−3C母線電圧低」警報が発信し、A非常用ディーゼル発電機が自動起動したが、同警報は復帰せず、4−3C母線から給電されているA海水ポンプ等が停止しました。
 調査の結果、計器校正作業中に誤って充電中の回路に校正装置を接続したため、母線電圧検出回路のヒューズが溶断し、非常用ディーゼル発電機が起動したが、検出回路で正確な母線電圧を検出できず、警報が復帰しなかったものと推定されました。
 対策として、溶断したヒューズを取り替えるとともに、作業開始前の隔離養生や検電を確実に実施することを再徹底しました。
平成17年4月19日 お知らせ済み]

 (2)2次系純水系統におけるトリチウムの検出 (図4−2参照)
   平成17年8月23日、2次系純水の定期放射能濃度測定において、通常は検出限界未満であるトリチウムが微量検出されました。
 調査の結果、配管改造工事後に実施した洗浄作業の際に、トリチウムを含む1次系純水と2次系純水を同時に使用したため、1次系純水が2次系純水系統へ流れ込んだものと推定されました。
 対策として、1次系機器の洗浄作業において、1次系純水と2次系純水を同時に使用しないことを社内マニュアルに定め、関係者に周知徹底を図りました。
平成17年9月6日 お知らせ済み]

 (3)補助蒸気配管サポートの損傷 (図4−3参照)
   平成17年9月16日、原子炉補助建屋へ補助蒸気の供給を開始したところ、水撃現象(ウォーターハンマー現象)が発生し、補助蒸気配管サポートなどが損傷しました。
 調査の結果、蒸気通気前に行ったドレン水の排水が不十分で、配管内が満水状態であったことから、蒸気通気により水撃現象が発生したものと推定されました。
 対策として、損傷したサポートなどを新品に取り替えるとともに、蒸気供給前にはドレン水を完全に排出するよう、社内マニュアルに定めました。
平成17年9月28日 お知らせ済み]

 (4)格納容器内での水漏れ (図4−4参照)
   平成18年5月16日、「原子炉格納容器サンプ水位上昇率高」警報が発信したため、現場を確認したところ、仮設キャビティ浄化装置のホースから漏えいを確認しました。
 調査の結果、作業要領書にホースを取り外す前には浄化装置を停止する旨の記載がなく、作業責任者からもその旨の注意がなかったため、浄化装置が運転中であるとの認識がない状態で作業員がホースを取り外したことから、漏えいが発生したものと推定されました。
 対策として、ホースを取り外す前には浄化装置を停止することを作業要領書等に明記するとともに、関係者に周知徹底を図りました。
平成18年5月19日 お知らせ済み]


5. 蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査(ECT)
   3台ある蒸気発生器のうち、BおよびC−蒸気発生器伝熱管全数(計6,764  本:3,382本×2台)について、健全性を確認するため渦流探傷検査(ECT) を実施した結果、有意な信号は認められませんでした。

6. 燃料集合体の取替え
   燃料集合体全数157体のうち69体を取り替えました。
 (うち52体は新燃料集合体。)
 また、燃料集合体の外観検査(16体)を実施した結果、異常は認められませんでした。

7. 次回定期検査の予定
   平成19年4月上旬

以  上



別紙:美浜発電所3号機 第21回定期検査作業工程(主要作業)
図1−1
図1−2
図1−3
図1−4
図1−5
図1−6
図1−7
図2
図3−1
図3−2
図3−3
図3−4
図3−5
図4−1
図4−2
図4−3
図4−4
美浜発電所3号機 第21回定期検査中の保全品質情報等について
美浜発電所3号機主要経緯

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