現場取材│電気のある「あたりまえ」を守りGXを実現する
かんでん Update
2025.7.31

現場取材│電気のある「あたりまえ」を守りGXを実現する

再エネの変動を補う紀の川蓄電所稼動

ソリューション本部 開発部門 蓄電池事業グループ 織田俊樹ソリューション本部 開発部門
蓄電池事業グループ 織田俊樹

和歌山県紀の川市で関西電力初の蓄電所・紀の川蓄電所が運転を開始したと聞き、現場を訪ねた。敷地には白い大きなコンテナが建ち並ぶ。コンテナ内に蓄電池が入っているという。「運転開始は2024年12月。定格出力48,000kW、定格容量113,000kWhは国内で稼働中の蓄電所で最大級」と話すのは出迎えてくれた蓄電池事業グループの織田俊樹。

関西電力は「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」としてデマンドサイド・サプライサイドの両面から脱炭素化に力を入れており、中期経営計画に掲げるVX(サービス・プロバイダーへの転換)の中核事業として蓄電所事業を位置づけている。蓄電所は系統用蓄電池を電力系統に直接接続し、充放電を行う発電所の一種。電力の余剰時に充電し不足時に放電することで電力需給の安定化を図る、いわば火力発電所と同じような調整役としての機能を果たす。脱炭素化に向け化石燃料からクリーンエネルギーへの移行が進むなか、調整力を持つ蓄電所の役割が増すと見込まれている。

「太陽光や風力といった自然由来の電源は常に出力が変動。蓄電所はそうした変動に対し素早い充放電で電力需給を安定化することができ、再エネの有効活用に貢献する」

蓄電所事業のリーディングカンパニーへ

関西電力初の蓄電所である紀の川蓄電所の事業開発は苦労の連続だった。制度について、そもそも発電設備なのか需要設備なのか議論途上にあり、電力需給調整市場も創設途上にあるなかで、技術仕様や法令申請、市場とのシステム連携など手探りで一つ一つ確認しながら進める必要があった。事業パートナーのオリックスと将来の事業性リスクや見通しをどう評価するかの調整に多くの時間を費やした。海外の蓄電池メーカーとの価格交渉は、リチウム資源の高騰や世界情勢の混乱により困難を極めた。

こうした課題をクリアしつつ、蓄電池をはじめとした各種設備の協議を重ね、着工から2年半を経て紀の川蓄電所が完成した。市場運用は関西電力グループのE-Flowが担当し、AIを活用したシステムを通じて、最適な充放電のタイミングや売電市場を選定。安全性については設備の24時間常時監視とデータに基づく安全性評価を行っている。

現在、大阪府岬町・北海道札幌市で次のプロジェクトが進んでいる関西電力の蓄電所事業。蓄電所事業のワンストップサービスを打ち出し精力的に事業を展開している。「お客さま起点に立ち、課題やニーズと向き合いながら新たな道を切り拓く精神で果敢に挑戦することで新たな価値の提供を行いたい。今後も蓄電所事業開発や運開で得た知見やノウハウを生かし、2030年代早期に100万kWへ事業を拡大していく」。織田はリーディングカンパニーとしての将来を見据えている。

紀の川蓄電所(和歌山県)紀の川蓄電所(和歌山県)
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