
ダムや河川の落差を利用して安定的に電気をつくる水力発電。CO₂排出量が極めて少ないクリーンな再生可能エネルギーとして、エネルギー安全保障と地球温暖化対策の両立に貢献する。
関西電力は水力発電を最大活用するため、木曽川水系で運用する笠置発電所の改良工事を2019年から行っている。1936年に運転開始し関西圏の電力需要を支えてきた笠置発電所。下流での新ダム建設に伴い、河川の水位が6.5m上昇することによる有効落差減少や、洪水時には笠置発電所の水没などの影響が出ることが改良工事のきっかけだ。新ダム建設による有効落差の減少により出力も低下するが、最大使用水量を増加させ、水車・発電機の取り替えを行うことで機能回復を図る。加えて、笠置発電所の水没を防ぐための防水壁設置にも着手している。
「水力発電は開発が進んでおり、現状では、さらなる大規模な開発は容易ではない。改良工事により笠置発電所の最大出力は27,500kW増加する。水資源をエネルギーへ有効活用することはGXにも貢献する」と、電気工事責任者の大嶋慶一は改良工事の意義を強調する。
改良工事は発電機を更新する電気工事と、発電機を支えるコンクリート基礎や防水壁を構築する土木工事を並行して行う。3機の発電機のうち、2機を運転しながら1機の更新を進めるため、既存の設備に影響を与えないよう日々変わる現場の状況に合わせた対応が必要だ。敷地が狭いため重量物の取り扱いや安全対策にも気が抜けない。
「狭い敷地で電気・土木の工事を並行して実施する苦労はあるが、互いに密なコミュニケーションをとり一体感をもってプロジェクトを推進できている」と話すのは、土木工事責任者の別所 謙。
「改良工事は数十年に一度。この工事を通して経験豊富なベテランから技術をしっかり受け継ぐとともに、次は自分が後進に技術を伝える存在になりたい」と別所。
2021年に1号機、2023年に2号機が改良工事を終え、運転を開始。2026年3月に現在工事中の3号機が完成すれば発電所の最大出力は69,200kWになる。「先人が創り上げてきた水力発電を未来の世代へ繫ぎ、進化させていくことが我々の役割」と大嶋は力を込めた。