現場取材│電気のある「あたりまえ」を守りGXを実現する
かんでん Update
2025.7.31

現場取材│電気のある「あたりまえ」を守りGXを実現する

GXを支える原子力発電所の再稼動

次に、原子力事業の取り組みを聞くため福井県美浜町の原子力事業本部を訪ねた。

執行役常務 原子力事業本部長代理 高畠勇人執行役常務 原子力事業本部長代理 高畠勇人

「原子力発電はS+3E(安全性+安定供給・経済効率性・環境適合)のバランスに優れ、1基で100万kW級の発電が可能な大規模電源。確立された脱炭素電源として、再生可能エネルギーとともに脱炭素社会を支える役割を担う」。原子力事業本部長代理を務める高畠勇人は原子力発電の位置づけをこう説明する。

2011年の福島第一原子力発電所事故以降、国内の原子力発電所はすべて停止。その後、事故の教訓を踏まえた新規制基準に基づいて耐震強化、津波対策、電源多重化などの安全対策を強化。新規制基準への適合が認められた原子力発電所の再稼動を進めてきた。

関西電力では2023年9月に7基の原子力プラントが再稼動した。第7次エネルギー基本計画に明記された原子力の最大限活用に向けて、安全確保を大前提に既設プラントの運転年数延長や定期検査の効率的な実施などに取り組んでいる。既に美浜3号機、高浜発電所の4基が40年超運転に入っており、長期的な信頼性を確保するため、高浜3・4号機については2026年度の定期検査時に蒸気発生器の入れ替えを予定。

また、給水ポンプ調達先を国内メーカーに変更するなど、サプライチェーンを維持し、エネルギー安全保障の確保にも努めている。

美浜発電所(福井県)美浜発電所(福井県)

安全・安定運転を重ね立地地域との共生に汗をかく

高畠は入社以来、原子力分野の業務に携わり、高浜発電所で延べ約10年、美浜発電所長時代には美浜3号機の再稼動にも携わった。現場での経験と実感をもとに「安全なくして原子力利用はない。美浜発電所3号機事故のことを片時も忘れずに安全・安定運転の実績を一つ一つ積み重ねるとともに、原子力の重要性や安全性について広く理解いただく活動に全力を尽くしていく」と力を込める。

関西電力は地域共生の考えのもと、コミュニケーション活動を行っている。地域産業活性化の支援、文化・スポーツイベントの実施・支援に加え、原子力への理解を深めてもらうために発電所見学会や出前教室、メディアを通じた情報発信、立地地域の人々との対話に力を注いでいる。

エネルギー基本計画にリプレースの具体化という文言が盛り込まれるなか、革新軽水炉SRZ-1200の共同開発、SMRや高温ガス炉等の新型炉の技術知見収集にも取り組んでいる。

課題は人財育成と技術伝承をいかに進めるか。「現場・現物・現実の三現主義を基本に、他部門や他電力と協力して人財育成に取り組んでいる。やりがいと誇りの持てる魅力ある職場をつくり、人財の確保と技術力の維持向上を図っていきたい」

最新技術を取り入れ信頼性を高める

最新技術を取り入れ信頼性を高める

24時間体制でプラントの状態を監視(美浜発電所3号機の新制御盤)

24時間体制でプラントの状態を監視
(美浜発電所3号機の新制御盤)

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