
空飛ぶクルマという開発途上の技術に伴走しながら開発を進める難しさも経験した。機体開発と並行して充電設備を開発するため、機体の仕様変更があれば充電設備が対応できるか検討しなければならない。「飛行試験場での接続試験に急遽立ち合うこともあり、走りながら開発を進めてきた」と話す村井玲央は2024年夏にキャリア採用で入社し、事業開発・営業を担当する。最初は空飛ぶクルマの発想に仰天したが、実際に機体を目の当たりにすると実感が湧いてきた。大きな関心を集めるプロジェクトにやりがいを感じている。「ぜひ充電設備にも目を向けていただき、空飛ぶクルマの運航を支える関西電力の取り組みを知ってほしい。万博での飛行をきっかけに社会実装が大きく進むことも期待したい」
大阪・関西万博ではSkyDriveを含めて4社の空飛ぶクルマがデモ飛行を行う。関西電力では将来の社会実装に向けて複数メーカーの空飛ぶクルマに適応できる汎用性のある充電設備の開発も進めていく。「空のモビリティ電化推進を担う先駆者としてゼロカーボン社会の実現に貢献していきたい」と2人は空を見上げた。
街なかの電柱が照明、センサー、AIカメラ、電子掲示板などさまざまな機能を持った多機能ポールになる。「スマートポール」と呼ばれるこの未来の電柱が、万博会場の西端にある未来社会ショーケース「未来の都市」パビリオンに出現する。パビリオン前に設置したスマートポールは3本。「スマートポールに薄くて軽いペロブスカイト太陽電池を巻いて発電し、AIカメラによる人流解析や迷子捜索デモ、サイネージによる情報掲出、スマホのワイヤレス充電などの実証実験を行う」と説明するのは関西電力送配電 新規事業計画グループの大江麻依子。電柱を活用した事業開発に携わった経験を生かし、パビリオンの敷地内に設置されたスマートポールの展示を担当している。
パビリオン内部ではスマートポールで得られる体験をAR(拡張現実)で表現する。来場者の顔写真を撮ってアバターをつくり、アドベンチャー、モビリティ、テーマパークの3つの島で未来の暮らしを体験するプログラムだ。アドベンチャーの島では停電時のスマホ充電や避難誘導など災害が発生した際のスマートポールの役割を紹介。モビリティの島では、自動運転やドローン配送が実現した未来社会を体感できる。特に一般道での自動運転の実用化には、死角から飛び出してくるかもしれない歩行者や自転車の存在を自動車に通知する必要があり、スマートポールに取り付けたセンサーが重要な役割を果たす。テーマパークの島では観光情報掲出や混雑緩和などにスマートポールが活躍する。島を巡ったあとは入館時に作成したオリジナルアバターを記念に持ち帰れるのもうれしい。