三大名作と見どころ

それでは、文楽の見どころを知ってみよう。実は、文楽って現代に通じるところがたくさんあるんだよ!

■文楽の演目と三大名作

文楽で演じられる物語は、江戸時代やそれ以前の時代をあつかったものが多いんだ。実際におこった事件やニュースをタイムリーに物語に取り入れたものを「世話物」、奈良(なら)時代から戦国(せんごく)時代にかけての物語を扱ったものを「時代物」と呼(よ)ぶんだ。世話物にはサスペンスや恋愛(れんあい)をテーマにしたものが多く、時代物には合戦をテーマにしたお話が多いから、現代の映画が好きな人なら楽しめるよ。

世話物

撮影 森口ミツル

2012年「曾根崎心中」天満屋の段:吉田 簑助、桐竹 勘十郎
【協力:人形浄瑠璃文楽座】

時代物

撮影 森口ミツル

2017年「本朝廿四孝」奥庭狐火の段:桐竹 勘十郎
【協力:人形浄瑠璃文楽座】

数々のお話の中でも、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」という3つは三大名作と言われていて、昔から今にいたるまでとても高い人気があるんだよ。

<菅原伝授手習鑑>

学問の神様といわれる菅原道真(すがわらのみちざね)が、対立する藤原時平(ふじわらのときひら)の悪だくみによって京都から九州に追いやられてしまった事件をテーマにした作品だよ。家族の愛やはなればなれになる悲しみなどがえがかれていて、時代を超(こ)えて語りつがれる名作なんだ。

<義経千本桜>

平安時代に起こった源氏(げんじ)と平氏(へいし)の戦いをテーマにした物語だよ。のちに鎌倉幕府(かまくらばくふ)を開く源頼朝(みなもとのよりとも)の弟である源義経(みなもとのよしつね)や、義経と対立していた平知盛(たいらのとももり)、平維盛(たいらのこれもり)など、当時を生きた人々の愛や悲しみをえがいた美しい作品と言われているよ。

<仮名手本忠臣蔵>

1700年代初頭、現在の兵庫県西部に当たる赤穂藩(あこうはん)のお殿様(とのさま)が切腹させられ、それにおこった47人の部下たちが敵討(かたきう)ちを果たした赤穂事件(あこうじけん)という事件があったんだ。仮名手本忠臣蔵はこの赤穂事件をモデルにしたお話なんだけど、当時の江戸幕府はこうした事件をそのまま演劇にすることは禁じていたので、その舞台は鎌倉時代になっているんだ。赤穂事件は映画(えいが)やテレビドラマでも取り上げられることが多いので、見たことがある人もいるかもしれないね。

■文楽の人気を高めた「近松門左衛門」

文楽を語る上で欠かせないのが近松門左衛門(ちかまつ もんざえもん)という人だよ。近松は100以上もの物語を作り出した人で、その作品は社会現象になるほど人気があったんだ。

代表的な作品として、中国人と日本人の間に生まれたこどもの活躍(かつやく)をえがいた「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」や、男女の愛と悲劇をテーマにした「曽根崎心中(そねざきしんじゅう)」などがあるよ。最近になっても近松の作品をもとにした舞台(ぶたい)なども生まれているんだ。

1500年代後半から1600年代にかけて活躍し、現在の演劇にも大きな影響(えいきょう)をあたえているウィリアム・シェークスピアという人がいるのだけど、近松は「日本のシェークスピア」とよばれているほど、現代に大きな影響をあたえているんだ。

■人形はどうやって動かしているの?

文楽で注目されるものの1つは人形だよね。ふつうの人形劇だと1人で1つの人形を動かすことが多いけど、文楽の場合は3人で1つの人形を動かすんだよ。大きなもので130cm〜150cmほど、重さにして10kgもある人形を3人で動かすことで、時にははく力がある動きを、時にはとてもせん細な動きを表現できるんだ。

人形を動かす人は、人形の頭部と右手を動かす主遣い(おもづかい)、人形の左手を動かし、小道具を出し入れする左遣い(ひだりづかい)、人形の両足を動かす足遣い(あしづかい)という3つの役わりに分かれているよ。

■舞台のしくみ

文楽が演じられる舞台には、たくさんの仕かけがあるんだ。例えば人形を動かす人たちの足をかくして、人形にとっての地面になる手すりがあったり、床(ゆか)を低くしてお客さんと人形の高さをなるべく同じようにするなど、お客さんが見やすくなるような工夫がされているんだ。
手すりは地面だけでなく、藍(あい)色の布をかぶせると川、白い色の布で雪など背景に合わせて早変わりするよ。

もう一つの見どころは文楽廻し(ぶんらくまわし)というものだよ。

これは、太夫と三味線をひく人がすわっているところで、劇がスタートする際、ゆかがクルリと回って2人が登場するんだ。これも、見ている人をもり上げるための仕かけだよ。
実際に文楽を見る機会があれば、舞台にも注目してみてね!

(2018年3月時点の内容です)

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