現場取材|電力レジリエンス
かんでん Update
2023.8.31

現場取材|電力レジリエンス

海上保安庁と連携して停電復旧資機材の輸送訓練

関西電力送配電

山本恭平 関西電力送配電 新宮配電営業所

山本恭平 関西電力送配電 新宮配電営業所

2023年6月8日、関西電力送配電と海上保安庁との合同訓練が行われると聞き、和歌山に向かった。

主に近畿圏(日本海側を除く)を管轄する第五管区海上保安本部と関西電力、関西電力送配電は、2021年に離島や沿岸部での災害時における連携文書を取り交わした。以降、年に1回以上、関西各地で災害を想定した停電復旧資機材運搬の訓練を行っている。

午前9時、和歌山県南端に位置する串本漁港の岸壁で串本海上保安署と新宮配電営業所の合同訓練が始まった。串本魚港から1.7㎞離れた紀伊大島で変圧器の不具合で停電が発生。大雨による土砂崩れで島へ渡る橋が寸断されたため、停電復旧に必要な資機材と作業員を海上輸送するという想定だ。復旧に必要な電線や工具、電柱に取り付ける新しい変圧器や電動台車などを積み込み、約20分かけて大島港へ向かい、積み下ろしを行う。

新宮配電営業所からの参加は5人。作業責任者である山本恭平は準備段階から串本海上保安署との交渉を担ってきた。「機器の海上運搬の経験はあるが、巡視船を使った大がかりな運搬は初めて。訓練を通して関係を構築し、いざという時スムーズに連携できるようにしたい」

訓練のようす

迅速で安全な復旧作業に向けた定期訓練も

串本海上保安署長の訓練説明が終わり、積み込み作業が始まった。資機材を岸壁に運び、串本海上保安署と新宮配電営業所の作業員が共同で船へ積み込んでいく。声かけ1つにも本番さながらの緊張感がみなぎるなか、作業を安全かつ迅速に遂行するよう指揮を執る山本の姿があった。

入社14年目を迎える山本は新人の頃から何度も災害復旧に携わってきた。現場に配属されてすぐ復旧に関わった11年の台風12号では、道路が土砂で塞がり現場へ行くのも大変だったと振り返り、「早期復旧には、自衛隊や海保、自治体などとの連携が不可欠」と話す。

復旧資材を積み込み大島へ向かう

復旧資材を積み込み大島へ向かう

作業長として現場を取り仕切る今、一番に心がけているのは作業員にケガをさせないことだ。「復旧を急がなければと焦って作業をすれば危険が増す。急ぐところとブレーキをかけるところのメリハリをつけるのも作業長の役割」と冷静な面持ちで語る。

新宮配電営業所のある新宮市は山本の地元でもある。太平洋に面し、台風などの自然災害も多く、南海トラフ地震に向けた備えも必要。職場では定期的に災害復旧訓練を行っている。「災害は起こらないことが一番だが、突発的な事象が発生した際にも落ち着いて、安全・迅速に復旧作業ができるよう技術向上に努めたい」

< 123 >
YOU'S TOPへ戻る