現場取材|電力レジリエンス
かんでん Update
2023.8.31

現場取材|電力レジリエンス

暮らしを支える電気を安定してお届けするため、関西電力グループでは総力をあげ、災害対策に取り組んでいる。自然災害が頻発し、南海トラフ地震への懸念も高まるなか、安定供給を守る関西電力グループの取り組みを追った。

電力の安定供給に向けて防災対策を強化

長田晃一・関西電力執行役員 総務室長 写真

長田晃一・関西電力執行役員 総務室長

近年、気候変動により大型台風や豪雨などの自然災害が増加している。「今後も自然災害の頻発化、激甚化が続く恐れがあり、電力・ガスの安全・安定供給の責務を果たすため対策を強化していく」と話すのは、関西電力グループの防災を統括する総務室長の長田晃一だ。

地震、台風をはじめとする大規模災害発生時においては、関西電力と関西電力送配電が一体的に、電力・ガスの安定供給の責務を果たす。対策の基本は、「早期復旧に向けた体制確立」と「災害に強い設備づくり」だ。

早期復旧体制の確立では、最新技術の導入を図っている。例えば、ドローンを活用して設備の被害状況を把握するほか、架線の復旧工事にも導入するなど、復旧の迅速化に向けた取り組みを推進している。

地震や津波に対応した発電設備や送配電設備の防災・減災対策も行っている。水力発電所では設備の耐震補強工事を実施。火力発電所では燃料タンクからの油流出を防ぐため、緊急遮断弁を遠隔操作できるように改修。また、津波を想定した送電ルートの見直しや浸水が想定される変電所設備のかさ上げなどの対策も進めている。

災害時には関西電力グループの総力を結集させ復旧にあたる(写真:関西電力送配電)

災害時には関西電力グループの総力を結集させ復旧にあたる
(写真:関西電力送配電)

南海トラフ地震に備えた外部連携訓練も

全社防災訓練

全社防災訓練

ハード面と併せて災害発生時の対応体制も強化。大きな災害が発生した場合、関西電力社長をトップとする非常災害対策総本部を直ちに設置することとしており、想定した全社防災訓練を毎年行っている。発災時には速やかな対応ができるよう、初動対応者の指定や初動対応を統括する者が宿直を行う体制を整え、訓練も年に複数回行う。

「当社は阪神・淡路大震災を経験しているが、28年が経過し、震災を知らない社員も増えてきた。過去の災害を教訓に、発災時にとるべき行動や平時からの備えを示す等、南海トラフ地震に対しても綿密な防災対策を進めている。現場での防災訓練だけでなく、災害時の対応に関する研修など全社員向け教育にも力を入れている」

ドローンでの架線

ドローンでの架線

自治体や自衛隊、海上保安庁など外部連携も推進。平時から災害対応の課題を共有し、相互の役割分担を確認、円滑な相互連携が図れるよう訓練を重ねている。

「防災はハード面が強調されがちだが、ハードとソフトが組み合わさって成立するもの。訓練等を通じて継続的に改善を図ることが重要だ」と長田室長は強調する。

電力インフラのレジリエンス向上に向けた防災対策の強化に終わりはない。「南海トラフ地震への懸念も高まるなか、大規模災害が発生した際に、可能な限り停電を減らし、停電した場合でも一刻も早く復旧することが私たちの使命。これらを円滑に進めるため、災害対応能力を高める努力を続けたい」

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