対談 【藤井 聡×平野未来】防災・減災─「レジリエントな日本」を考える
対談
2023.8.31

対談 【藤井 聡×平野未来】防災・減災─「レジリエントな日本」を考える

藤井 聡×平野未来

気候変動に伴い大型台風や豪雨など自然災害が頻発。地震も相次ぎ、南海トラフ地震や首都直下型地震への懸念が高まっている。自然災害から命を守り、経済活動を停滞させないためには電力をはじめとするライフラインへの対策が急務。9月で関東大震災から100年を経るなか、「防災・減災」について考えた──

日本は地形的に自然災害のデパート。
加えて文明進化が脆弱化を助長する

藤井 きょうのテーマは防災・減災ですが、平野さんは今、政府のレジリエンス関連の研究会の座長も務めておられるとか。

平野 はい。私はこの2年ほど、気候変動に伴い自然災害が頻発していることにようやく気づき、対策の必要性を痛感しているところです。災害リスクは世界全体で高まっていますが、日本は地震という大きな災害リスクを抱えています。

藤井 確かに日本は極端に災害リスクが高いですね。世界の0.3%の国土なのに活火山の1割が集中し、マグニチュード6以上の地震の6%、台風の26%が日本を襲い、かつ川も細くて急峻だから洪水が起きやすい。まさに自然災害のデパートです。
加えて近代文明は脆弱化を促進しているとも言えます。昔の黒電話は電話線から給電しており、停電しても使えたが、今は外部電源がないと使えません。自動車も電池で動かすようになると、電気がないと始まらない。建物も、江戸時代は平屋建てだったのが、今やどんどん高層化。当時も地震・洪水など災害の繰り返しでしたが、大した被害ではなかった。しかし、システム高度化は脆弱化にも向かう宿命を持っており、一部の被害が全体に及びます。日本はもともと自然災害リスクが高いのに、文明化により脆弱性が拡大しています。

災害大国・日本

経済産業省の資料をもとに作成

致命傷を負わないBCPとして
冗長性と関係性が黄金律だが……

平野 レジリエンスの形が今後変わっていくと考えています。これだけ電気が社会の隅々にまで入ってくると、あらかじめ電気がダメになったときの対策を別途考えておく必要があります。建物も、これまでは耐震性を重視していましたが、これからは壊れても、例えば 3Dプリンターを使って1日で家が建つような発想の転換──防災だけでなく起きた後の対策も重要です。なかでも最もレバレッジがかかる対策はイノベーションの領域と、中小企業のBCPではないでしょうか。

藤井桂太 写真

藤井 強靱化とは、BCPなどあらかじめ起きたときの対策を考えておくこと。そこが防災との根本的な違いです。
強靱化にはリダンダンシー(冗長性)が大事です。つまり、致命傷を負わないよう、交通ネットワークやライフライン施設などいろんなものを多重化・分散化させておく。それと緊急時に互いに協力し合えるコネクションを社会資本としてつくっておく。大阪人みたいに、とにかく友達をつくるとか(笑)。その2つが黄金律ですが、現状はまだまだです。

BCP(Business Continuity Plan)
事業継続計画。

< 123 >