現場取材|電気事業の新しいカタチ「E-Flow」
かんでん Update
2023.5.31

現場取材|電気事業の新しいカタチ「E-Flow」

関西電力は2023年4月分散型エネルギーリソースの市場運用を担う新会社「E-Flow」を設立。E-Flowではお客さまが所有する分散型電源の最適な市場取引を担う。従来の電気事業の枠を超えた新たな価値を提供する現場を追った──

エネルギーの転換期にビジネスチャンス

E-Flow合同会社 社長 川口公一 写真

E-Flow合同会社 社長 川口公一

2011年の東日本大震災以降、10年余りの間にエネルギー事業を取り巻く環境は大きく変わった。「大規模電源で発電し、お客さまに電気をお届けする一方向の流れから、お客さまが持つ多様な設備も活用しつつ、電力需給を安定させる方向に進んでいる」。23年4月に設立した分散型エネルギーリソースの市場運用を担う「E-Flow(イーフロー)合同会社」社長の川口公一はこう概括する。

背景には、東日本大震災直後の計画停電や需給逼迫を受け、電気の消費者にも協力を仰ぐ機運の高まりがある。お客さまの保有する設備を負荷抑制(DR:デマンドレスポンス)することで、需給逼迫解消に貢献する。また、12年の固定価格買取制度(FIT)の導入により、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの導入が急速に拡大。太陽光発電は天候による発電量の変動が大きいため、これまで以上に電力需給のバランスを保つために必要な調整力が求められるようになった。一方、再エネの増加とともに、電力需給調整を担う火力電源は休廃止が相次いでいる。また、取引市場の整備も進んでいる。16年の調整力公募に始まり、20年からは将来の安定供給に必要な供給力を取引する容量市場の入札が開始、21年からは電力需給に必要な調整力の取引を行う需給調整市場が創設された。

関西電力はこうした変化に対応し、18年にリソースアグリゲーション事業を行う組織を発足。企業・自治体などが保有する設備を活用して発電所のように機能させるVPP(Virtual Power Plant)事業を開始した。

「電気事業は、制度変更が多い。例えば、FIP制度の導入により、再エネ電源は固定買取から市場取引に移行。蓄電所は22年の電気事業法改正により、発電事業に位置付けられた。一方で、電力取引市場の整備により各リソースの特性を見極め、効果的に電気価値を取引できるようになる。分散型エネルギーリソースをうまく組み合わせることでビジネスチャンスが広がると考え、新会社を設立した」

E-Flow 事業の狙い

つながる、めぐる、とどける新事業に挑戦

E-Flowは、従来のVPP事業に加え、お客さまの保有する太陽光発電設備や蓄電所などの運用業務を代行することで対価を得る。「お客さまの設備の価値を最大化し、Win-Winの関係を構築するビジネス」と川口は力を込める。

E-Flow事業概要

事業内容は、VPP事業に加え、系統用蓄電池の運用受託事業、太陽光や風力など再エネ電源の市場取引などを代行する再エネアグリ事業の3本柱だ。VPP事業はお客さまが保有する分散型リソースを束ね市場取引による収益化を、蓄電池事業はAIを活用した効果的な取引を、再エネアグリ事業は発電計画の確度を高め、予測誤差を最小化することで収益最大化を、それぞれ目指す。

「E-Flowのコンセプトは、分散している様々なエネルギーリソースをつなぎ、めぐらせて、必要とする場所にお届けすること。3つの事業をうまく組み合わせ、カーボンニュートラルや安定供給に貢献できる。将来は、EVや蓄電池など家庭用リソースも含め、地域全体のエネルギー運用を一体的に行うサービスも提供していきたい」

2030年までに250万kWの運用リソース獲得と300億円の売上を目標に掲げるE-Flow。「分散型電源の運用に特化した事業は国内初。エネルギーを取り巻く環境が大きく変化するなかで、未知の領域のビジネスにチャレンジし、パイオニアとしての役割を果たしたい」

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