高浜発電所 第一発電室 定検支援係長 瀬野 司
11~12年ぶりの再稼動を控える高浜1・2号機では再稼動前の点検が進む。
「安全にプラントを動かせるよう万全を期した状態で、定検係から当直員へバトンタッチすることが今の私たちの使命」。そう話すのは、第一発電室の瀬野司。96年に入社以来、高浜発電所一筋。3交替勤務の運転員を務めたのち、当直主任を経験。現在は定検支援係長として、再稼動前点検を行う定検係を統括している。
第一発電室では、40年以降運転となる1・2号機の再稼動前点検業務にあたる特別チーム「定検グループ」を設置。瀬野たちは定検対象機器の点検を行う保修部門へ引き渡すため、各系統の停止作業や、点検完了後の各系統の復旧作業を行う。
高浜1・2号機の再稼動前点検へ
「停止中も必要なメンテナンスを行ってきたが、長く止まっていた発電所を動かす際は、どのような不具合が隠れているかわからない。自分の担当範囲に限らず、気がかりな事項に対処し、トラブルの未然防止に努めていく」
高浜発電所では、部署横断でリスクとなりうる事項を抽出し先手を打つ『高浜1・2号機再稼動に向けた先手管理会議』も行い、発電所全体で再稼動に向け取り組んでいる。
瀬野が所属する第一発電室は総勢約110人の運転員で構成。ひと口に運転員と言っても、運転操作、発電設備の巡視や定期検査の対応と多岐にわたり、定期検査を担当する定検支援係、3交替勤務で運転業務を担う当直班、教育・予算・プラント運転の手順書などを管理する運営係の3グループに分かれる。
非常時を想定したシミュレーター訓練
「運転現場で経験を積むことにより、機器の微妙な異常を判断できるようになるが、プラントが止まっていた10年余り、若手運転員の育成は難しかった」と瀬野。この点は、原子力部門全体の課題であり、関西電力では、稼動中の高浜3・4号機や美浜3号機に若手を常駐させ、運転経験を積ませている。
その上で、当直班に対してはシミュレーターを使った訓練を年8日実施し、運転員、監督者などポジションごとの訓練も年10日実施。有事の場合でも常に冷静な行動ができるよう、徹底的な訓練を重ねる。
日々、再稼動前点検に邁進する瀬野だが、再稼動後の目標は、運転業務を担う当直班を率いて理想のチームを作ることだという。
「以前、発電所見学会で『発電所の運転員に安全を託している』という言葉をもらった。その信頼を裏切らないためにも、一人ひとりが自ら考え、主体的に『考動』し、どのような事案も自分事として考えられるメンバーが揃うチームを作りたい」。穏やかな雰囲気で話す瀬野から、安全への熱い想いと仕事への厳しさを感じた。