現場取材|安全確保を最優先に―原子力発電のいま
かんでん Update
2022.12.21

現場取材|安全確保を最優先に―原子力発電のいま

原子力7基体制の実現によるゼロカーボン化推進と安定供給体制強化に取り組む関西電力。一途にひたむきに安全を追求する現場の姿を追った──

安全最優先で安定運転を積み重ねる

厳しさを増す気候変動で、世界各国がゼロカーボン社会実現に向けた目標を掲げるなか、確立された脱炭素技術である原子力への期待が高まっている。

水田 仁 執行役常務 写真

水田 仁 執行役常務

日本が目標として掲げる「2050年カーボンニュートラル」を実現するため、ゼロカーボン電源である原子力は重要な役割を担っている。また、エネルギー資源の乏しい日本では「S+3E」の観点から、バランスの取れた電源構成が求められる――そう口火を切ったのは関西電力執行役常務の水田仁。「出力の安定性に優れ、エネルギー密度が高く、発電時にCO2を出さない原子力はベースを支える主要な電源。燃料となるウランの産出国は地域的に偏っておらず、昨今の需給逼迫やエネルギーセキュリティという観点からも、原子力の果たす役割は大きい」と強調する。

政府のグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議でも、原子力を将来不可欠な脱炭素電源と位置づけ、安全の確保を大前提に原子力を最大限活用することや、新増設・リプレースなどについて議論が始まっている。

東京電力福島第一原子力発電所事故を教訓として、国は地震・津波・竜巻・火災といった自然現象や、シビアアクシデントやテロ等から発電所を守るため、規制基準を制定した。関西電力はこのような事故を二度と起こさないという固い決意のもと、規制の枠組みにとらわれない自主的な取組みも含めて安全性向上対策工事を推進。審査に合格し、安全性が確認されたものから再稼動を進めており、現在、40年以降運転の認可を得た美浜3号機を含む5基の原子力発電所が稼動している。

*調整運転中のプラントを含む

新規性基準

将来に備えることもパイオニアとしての責務

「稼動中の発電所で安全・安定運転を積み重ねていくとともに、23年度に計画している高浜1・2号機の再稼動を安全最優先で実現し、7基全てのプラントで安全・安定運転できるよう緊張感をもって取り組んでいく。安定的にゼロカーボン電気をお届けしていくことが、地域や社会の皆さまからの信頼獲得につながる」

さらに運用の高度化を目指し、安全性を確保したうえで、定期検査の効率的な実施方法を検討するとともに、最長13カ月の運転サイクルを15カ月に延ばすことを想定し、原子力エネルギー協議会(ATENA)と連携して原子力規制委員会との対話を重ねている。

一方で、日本が将来にわたって一定規模の原子力発電を確保し、技術を維持し続けるには、新増設・リプレースが自ずと必要になる。関西電力では、プラントメーカー等と協力し、次世代後続機の技術検討を実施。これまでの運転・保守経験から得られた知見を提供し、より安全性・経済性を向上させた次世代軽水炉について検討。今年9月に発表された、三菱重工業と関西電力を含めた電力4社共同で行う革新軽水炉開発もその1つだ。さらに、高温ガス炉やSMR等新型炉についても技術的な知見の収集と検討を進めている。「将来にわたり原子力発電を安全・安定的に活用し続けることは、原子力のパイオニアである関西電力の使命。原子力の安全性をたゆまず向上させていくという強い意志と覚悟のもと、安全最優先で取り組んでいく」。水田は熱く話を結んだ。

主な安全対策
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