巻頭社長インタビュー 【森 望×松本真由美】「あたりまえ」を守り、創る
対談
2022.9.30

巻頭社長インタビュー 【森 望×松本真由美】「あたりまえ」を守り、創る

森 望×松本真由美

2022年6月28日、関西電力 取締役代表執行役社長に就任した森 望。不透明感が増す事業環境のなか、どう舵取りを進めようとしているのか。エネルギー・環境問題に詳しい松本真由美さんが訊いた──

恩返しが天命と引き受け、
厳しい事業環境下、経営課題解決に着手

松本 今年6月、社長に就任されましたが、打診されたときのお気持ちは?

 全く想定外でしたので絶句しました。企業トップとしての責任を担う力が自分にあるのかと自問しました。

松本 責任を痛感されたわけですね。関西電力グループの従業員を先導する重責、また電力の安定供給を担う重責がおありでしょうから。

 グループ全体3万人の従業員、その後ろにはご家族もおられます。責任の重さを感じ、本当に私でよいのかと。しかし、これまで関西電力で育ててもらってきたことに対し、ここで恩返しをすることが私に与えられた天命だろうと思い、お受けしました。

松本 現在、関西電力グループを取り巻く環境は厳しいものがあると思います。ロシアのウクライナ侵攻による化石燃料価格の高騰に加え、電力の需給逼迫という難問も。経営課題をどう捉えていらっしゃいますか。

森 望 関西電力取締役代表執行役社長

 電力需給については、社会の皆さまに節電にご協力いただいていることに加え、想定以上の需要増加もないため、現時点では安定供給を維持できていますが、予断を許さない状況です。ウクライナ情勢、コロナ禍等のエネルギー事業への影響を見極め、グループの総力をあげて発電所の安定運転に万全を期し、電力の安全・安定供給という責務を全うしたい。
また、中長期的には脱炭素化やデジタル化に向けて経営の舵を切り、持続的成長を実現する必要があります。私自らが先頭に立ち、中期経営計画で掲げた、①EX:ゼロカーボンへの挑戦、②VX:サービス・プロバイダーへの転換、③BX:強靱な企業体質への改革、という3本柱の取組みを力強く推し進めていきます。

需給逼迫対応へリスク回避の手を打ち続ける

松本真由美 東京大学客員准教授

松本 冬の見通しは多少改善するようですが、今冬も含めて需給逼迫には今後、具体的にどう取り組みますか。

 供給側では、原子力や火力など、あらゆる電源の安全・安定運転を続け、供給力を最大限確保するのが基本です。加えて、節電実績に応じてご家庭向けにポイントを進呈するプロジェクトや、法人のお客さま向けにも電気料金を割り引くメニューのご提案などを通じて、必要に応じて節電をお願いし、需給両面の対応で乗り切りたいと考えています。

松本 日本は資源小国でエネルギーの大部分を輸入に頼っており、国際情勢に左右されることも懸念材料です。

 日本のエネルギー自給率は約11%(2020年度)しかありません。再生可能エネルギーを拡大するとともに、準国産エネルギーである原子力の安全・安定運転が重要です。そして火力発電を活用する前提となるのが燃料の安定調達。私たちはさまざまなリスクを踏まえながら調達先を多様化しており、リスク回避の手を打ち続けることが大事だと考えています。

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