現場取材|いまどき電力パーソンの鍛え方
かんでん Update
2022.4.28

現場取材|いまどき電力パーソンの鍛え方

講師といえども勉強の日々

原子力研修センター 原子力研修センター

シミュレーターの調整を行う松若暢浩 原子力研修センター シミュレーターの調整を行う松若暢浩
原子力研修センター

福井県高浜町。関西電力高浜発電所と大飯発電所にほど近い海辺に立つ原子力研修センターは、1983年に開設された原子力発電所保修員の教育実習施設だ。実機さながらのシミュレート設備や研修室、宿泊施設を備え、新人向けの基礎研修をはじめ、設備機器ごとの専門研修、協力会社や福井県内の原子力関連企業の研修サポートなどを行っている。

センターで2年前から研修講師を務める松若暢浩は、82年の入社以来、計装設備(発電所を安全な状態に維持するための監視や調整を行う計器や制御盤)の保修や設計に携わってきたスペシャリスト。現在はキャリアを活かし、計装設備保修員向けの研修や後輩講師の育成を担当している。

「発電所設備を常に安全・安定的に運転できるよう維持するのが保修員の役割。そのためには各設備の構造・原理から法令要求、点検方法、不具合発生時の処置方法など、多くの知識を身につけ、協力会社に適切な指示を出す必要がある。特に計装設備の保修員は、発電所運転中でも点検や調整を行ったり、緊急的に社員が自ら対応するケースもあり、他の設備以上に研修の重要度は高い」

11年の東京電力福島第一原子力発電所事故を機に新規制基準が制定され、安全対策設備などの導入も進んだため、身につけるべき知識はさらに増えている。
「30年間計装保修に携わってきても設備の進化は目覚ましく、講師といえども勉強は欠かせない」

「失敗」体験から学ぶ

設備機器ごとの専門研修は、研修室での講義と実習設備での実技を組み合わせたカリキュラム。通常5~6人という少人数制を活かし、講義では質疑応答や受講者相互の議論を重視する。実習においても、単に定められた手順で作業を行うだけでなく、安全上問題ない範囲の失敗も積極的に許容しているという。
「私自身これまで幾度かヒヤリとする経験をしたし、成功体験より失敗体験のほうがよく覚えている。原子力発電所はミスの許されない現場だが、ここは研修施設。失敗を経験し、そこから学びを得てほしい」

専門研修は3~4日間の集中コースで実施される。効率よくスキルを修得してもらうため、研修内容の充実のみならず、講師自らeラーニングで伝え方を学んだり、講師間で評価しあったり、切磋琢磨の日々だ。
関西電力がかつて経験した事故やトラブルも重要な教訓であり、センター内には過去の事故・トラブル事例が展示されている。松若は、それをどう継承するかも課題だという。
「実際に経験していない人に、自分事と感じてもらうにはどうすればいいか、試行錯誤を続けている。知識と技術、安全・安定供給への使命感を備えた保修員育成に全力を尽くし、現場に報いたい」。いくら設備機器が進化しても、エラーを防ぐ最後の砦はやはり「人」。松若の経験とプライドが技術継承の要だ。

< 123 >
YOU'S TOPへ戻る